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白石杏 × 小豆沢こはね
死ネタ注意(こはねちゃんが病気だった世界線)
年齢操作注意(大学生)
貴方がいなくなって三度目の春。
今年もまた 、貴方の命日が近づいている。
桜はあの頃と変わらず咲いている。
貴方は毎年この季節になると 、カメラを手に取って写真を撮っていた。
上手く撮れた写真があると 、嬉しそうに笑っては見せてくれたね。
その時の姿が 、今でも目に焼き付いている。
入院し始めてからは 、病室の窓から同じように景色を撮影していた。
その頃からだろうか。
貴方は 大丈夫 が口癖になっていた。
大丈夫なんかじゃなかったはずなのに。
貴方は何故そんなにも無理をするの?
ふわりと風が吹き 、桜の花びらが宙を舞う。
三年前の今頃も 、こんなふうに風が吹いていた。
あの日 、私は貴方に会いに行こうとしていた。
やっと 、言おうって決めたから。
ずっと胸の奥で膨らんでいた言葉を 、閉じ込めていた気持ちを。
もう誤魔化さないって。
「__好き。」
たった二文字の言葉なのに 、喉の奥で何度も絡まって 、外に出てこなかった言葉。
スマホの画面には 、途中まで打ったメッセージが残っていた。
「今日 、話したいことがあって __」
送信ボタンは押せなかった。
明日でいいや 、って思った。
明日なら 、ちゃんと言える気がしたから。
でも 、その”明日”は来なかった。
突然の連絡。
病院の白い廊下。
信じられないまま見上げた天井。
貴方は 、静かに眠っていた。
やけに穏やかな表情で。
その時初めて 、私は知った。
貴方が 、ずっと前から余命を宣告をされていたこと。
どうして教えてくれなかったの。
どうして 、いつも通り笑っていたの。
どうして __
机の中に残っていた 、小さな封筒。
私の名前が 、貴方の字で書いてあった。
震える手で手紙を開く。
そこには 、こう書いてあった。
『ごめんね 、余命のこと言わなかった』
『きっと 、言ったら杏ちゃんは泣いちゃうから』
『私 、杏ちゃんの笑ってる顔が一番好きなんだ』
インクが少し滲んでいた。
『だから最後まで 、友達でいさせて』
最後 、という言葉がやけに強くて 、その意味を理解するのに少し時間がかかってしまった。
そして 、最後の一行。
『本当はね』
そこで文章は 、一度途切れていた。
何度も書き直したみたいに 、跡が重なっている。
その下に 、小さく。
『杏ちゃんのこと 、好きでした』
視界が滲んだ。
どうして。
どうして 、そんな優しさを選んだの。
私だって 、同じだったのに。
三年が経った今でも 、その手紙は引き出しの一番上にある。
忘れられないんじゃない。
忘れたくない。
貴方が隠した痛みも 、私が言えなかった想いも。
全部 、ちゃんと抱えていたい。
遅すぎたけど 、言わせてください。
「好きだよ」
青く 、高く広がる空に向かって 、やっと声に出す。
三年分の想いが 、胸の奥から溢れてくる。
「今も 、ずっと好き」
涙がこぼれて 、でも不思議と苦しいだけじゃなかった。
貴方が守ろうとした私の笑顔を 、今度は私が守りたいと思えたから。
「ありがとう」
風が吹く。
花びらが舞う。
まるで 、”知ってるよ”って笑うみたいに。
貴方の歌声も 、笑う顔も 、もう聞けないし見られないけれど。
それでも。貴方がいなくなっても。
貴方を忘れないまま 、生きていく。
三度目の春に 、やっと言えた。
ずっと 、この想いは消えなかった。
そしてきっと 、これからも。
この想いは 、このままでいい。