神城 蓮は、かつての相棒・霧島 修平のデスクに残された資料の束を手にしていた。
亡き相棒が追っていたのは、表向きには存在しない“国家規模の影の組織”。その名は、まだ公にされていない——裏ゼロ。
「修平……これが君の最後の手掛かりか」
神城の声は静かだが、胸の奥で燃えるものは消えていなかった。未然に防げなかった相棒の死の痛みが、彼を突き動かす。
資料には、膨大な暗号化ファイルと、上層部の極秘会議の議事録が含まれていた。読み解くには時間がかかる。しかし、氷室 悠真の存在は神城にとって心強い。
「神城、この暗号……国家警察内部でしか扱えない通信プロトコルだ。外部からでは解析不可能だ」
氷室は画面越しに解析作業を進めながら、冷静に言った。
神城は資料の一枚を指でなぞる。そこには、修平が不自然に残した手書きのメモがあった。
「裏ゼロ――信じるな。全てを見抜け」
神城の胸に、過去の相棒の言葉が蘇る。
「俺たちの敵は、警察そのものかもしれない……」
その瞬間、オフィスの電話が鳴った。
受話器を取ると、聞き慣れた声が低く告げる。
「神城……君の相棒の死の真相に近づくな。裏ゼロは、すぐそばにいる」
沈黙の後、神城は小さく息をついた。
「……逃げない。相棒のためにも、真実を暴く」
雨の夜明けが近づく東京の街。
神城の視線は、今もなお見えない敵、そして警察の裏側に向けられていた。
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