テラーノベル
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『春の終わりに、君を』
ー
気づいたときには、
僕はもうこの世にはいなかった。
車の音、割れたガラス、誰かの叫び声。
世界がぐしゃぐしゃになっていく中で、
最後に見えたのは、翔太の泣きそうな顔だった。
「……嘘…やだっ、りょう、へ…」
「……亮平”っ、!!」
触れたいのに、声が出ない。
翔太が泣き叫ぶのを、ただ遠くから見ることしかできなかった。
その瞬間、僕は_
死んだんだと知った。
ー
あれから一年。
僕は“ここ”に留まり続けていた。
死んだはずのこの魂が、なぜまだこの場所にあるのかなんて、分からない。
でも、ただ一つ、確信していることがある。
_翔太が、僕を忘れられずに居る事。
部屋の隅。
翔太はうずくまっていた。
痩せて、目の下には深いクマ。
声も出さず、静かに泣いている日もある。
誰かが励ましに来ても、うなずくだけ。
笑っているふりをしても、目が笑っていない。
「亮平が居ないなら、生きてる意味無いよ」
_違う。
違うんだよ、翔太。
生きててほしい。
僕の分まで、ちゃんと。
でも、声は届かない。
触れることもできない。
目の前で、ゆっくりと壊れていく君を、
僕は、ただ見ていることしかできなかった。
ー
そして、あの日が来た。
夜の街。
翔太は、ビルの屋上に立っていた。
寒いはずなのに、上着も着ていない。
風が彼の髪を揺らす。
手には、僕とお揃いだったペンダント。
「……亮平」
その声に、心が軋んだ。
どうしても止めたかった。
行かないで、と叫びたかった。
でも、翔太は微笑んでいた。
涙を浮かべながら、それでも綺麗な顔で。
「ねぇ、亮平…頑張ったよ、俺。」
「だから…そっち、逝っても…良いよね?」
だめだ。
だめだよ、翔太。
生きて、
お願い、生きて。
僕の心は、張り裂けそうだった。
どうしても、間に合ってほしかった。
でも_
翔太は、ゆっくりと、一歩足を踏み出した。
ー
「馬鹿だな、翔太……」
目を閉じる彼の顔は、穏やかだった。
僕の隣に帰ってきた翔太を、
抱きしめられないこの腕で、
せめて心だけでも、そっと抱いた。
ー
もう、翔太は泣かない。
苦しまない。
ただ静かに、
僕のそばで、
春の匂いを感じている。
でもね、
翔太、
本当は。
本当は、君には生きて欲しかった。
僕の死を越えて、
君だけは、
笑っていてほしかったな。
ー
コメント
8件
え、泣きたいんだけど、いいですか?!泣きます!.˚‧º·(´ฅдฅ`)‧º·˚.悲しいってぇ、
はちが天才と証明されたぞここで((モウショウメイサレテマスワヨ …ちょっと感動系が過ぎて泣きそうだ、泣いていいか?
最高すぎる!!! めちゃくちゃ感動!!!! はち感動系作れて面白い系もできてほんとに尊敬よ!!最高かよ!!!