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「ねえ、みんなってどんな仕事してたの?」
花火が終わって帰る途中、ジェシーが尋ねた。前から気になっていたらしい。
「ちなみに俺は、肩書きで言ったら歌手の卵、かな」
すごい、とみんな反応する。
「いやいや、ちょっと歌が上手いってだけでうぬぼれてたから、全然上手くいかなかったし」
「…俺も一緒の感じだったな」
とつぶやいたのは、大我だった。
「前、バンド組んでたんだ。ロックバンドのボーカル。こないだ北斗くんに話したら名前知っててくれて、嬉しかった」
「そう、まさかよく聴いてた人でびっくりしちゃって」
「活動がだんだん軌道にのりはじめたところで、俺のがんのせいで解散することになって。なんか申し訳なかったな…」
「そんなことないよ」
と樹が止めた。
「絶対そんなことない。俺は、ラップをするヒップホップユニットやってて、大我と同じように途中で病気が見つかった。でも相方はずっと見舞いに来てくれたし、大切にしてくれてた。ここに来るときは、『もう大丈夫』って断ったけど。だから、大我のバンドメンバーもきっと心配してたはずだよ」
そうかな、と答えた大我はほっとしたように笑った。
「俺は誰かとやってたわけじゃないけど、作詞家として一応勤めてて」
静かに北斗が切り出した。
「まあちょっとだけ曲を任されたりして、それなりに…。でも今思えば、あのときはがむしゃらで逆に楽しかったなって」
「俺も楽しかった」
同調するように笑顔で言ったのは、慎太郎だ。
「ダンスグループに所属してたんだよね、俺。自慢じゃないけど、スカウトされて。がんが見つかったときは、もっとみんなと踊っていたかったのに、なんで俺なんだって思ってた。だけど、一瞬だったけどすごい楽しい仕事だった」
うんうんとうなずきながら、優吾も話し出す。
「俺…ちょっとだけ言うの恥ずかしいんだけど、前はジャニーズ事務所にいて」
「え⁉」
驚いたように、みんな目を見張る。
「あんまぽくないでしょ」
と笑う。
「入る前まではそんな存在も知らなかったのに、ひょんなことから入れちゃって。だけど…特に何も成しえることがないまま胃がんになった。悔しかった。すごい悔しかったのに、まあいっか、ってそのときの俺は諦めちゃった」
でも、と続ける。
「社長さんが、『ユーはいるだけでいいんだよ』って言ってくれたんだ。まあずっと事務所にいるわけにもいかないから辞めたんだけど、俺はあれでも良かったんだって思えたね」
優しい笑みを見せる。
もうすっかり空は暗い。小さな街灯を頼りに、6人は歩く。
「みんな大丈夫? 疲れてない?」
樹が後ろを振り返り、声を掛ける。
「大丈夫」
と、「そういえばさ!」とジェシーが声を上げた。
5人が振り向く。
「みんなの仕事、全部音楽関係じゃない?」
それに、あっと気づいた。
「確かに。歌手にバンド、ラッパー、作詞家、ダンサーで俺はジャニーズ。なんか一人アイドルだけど」
「それでも同じ業界だよ。すごいね」
大我はどこか嬉しそうに言う。
「すごい偶然だよね!」
慎太郎も明るく声を響かせる。
「もしかしたら運命だったのかもね、俺らが出会うのは」
と北斗。
「そうかもね」
樹と優吾はにこりと笑った。
みんなの笑顔につられてか、月がより一層明るみを増した。
遠くからさざ波の音が聞こえてくる。それはまるで音楽のように、彼らには聞こえた。
空には、6つばかり、きらきらと輝く一等星があった。
続く