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「寝んぞ」そう言いながらイザナさんは自分が寝転んでいるソファをトントンと手で叩く。ここに寝転べと言う意味だろうか。
『…一緒に寝るんですか?』
「他に場所ねェし。」
風呂といい眠るときといい、本当にこの人の羞恥心の無さには驚かされる。いや私が気にしすぎなのだろうか。
「…来ねぇの」
ホラ、と先ほどよりも荒々しくなった手つきでソファを叩くイザナさんに負け素直にソファのあいたすき間─彼の腕の中に体を埋める。
何故ソファなのだろう。この家にはベッドや布団はないのだろうか。
『…狭くないですか?私やっぱり床で……』
「大丈夫、ちょうどいい。だから」
どこにも行くな。
そう言うかのように息が止まるほど体をギュッと強く抱きしめられる。
「だいすき」
『……そうですか』
不思議と抵抗したいという気力は浮かんでこなくて流れの中にゆったりと身を任せる。
誘拐犯と被害者。文字にしてみれば普通なら怖がらなければいけない関係性なのだろう。
今頃ニュースにでもなっているころだろうか。…いや、あの人が心配して警察に相談するなんて思えないな。
私自身あまり家には帰らないタイプだったからきっと今まで通り心配のしの字もないのだろうな。
自らを嘲るような思考が止まらず私自身の胸を締め付け苦しめる。
今までずっと耐えていられた、この“孤独”を感じないように必死になって守ってきた。
「おやすみ」
『……おやすみなさい』
そんな環境に居た私がこんなに優しくされたら、そんな“孤独”を溶かされてしまったら。
もうこの人を怖いなんて思えない。何回目かの彼の温もりで再度そう思わされた。