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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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その後動き始めたシロさんに関しては、何と言うか。
「……これはもう、えぇと……さ。マジかよ」
アバターのステータスを弄っていたのはスコープ越しに確認した。
この状況で? とは思ってしまったが。
けど、今度はどんな数字に振ったのか分からない。
でも、何となく予想出来るって言うか。
俺にとっての“答え”が、目の前にある様に思えた。
だって。
「凄過ぎでしょ……」
まるで囮になるみたいに姿を見せながら、ハンドガンを構えたシロさんが突っ込んだ結果。
今度はそっちかよ! という方向から飛び込んで来たtimelimit:10のコピーNPC。
間違い無く狩られた、そう思えるタイミングだったのにも関わらず。
彼女は、対応して見せたのだ。
ナイフで襲い掛かって来た敵の腕を、自らの左腕で絡め取る様にしながら、その隙にハンドガンを相手に近付ける。
数発の発砲と同時に自らの位置取りを変え、本当に“即興”とも言える状態で盤面を自分のフィールドへと変えていく。
この光景を、俺は何度目にした事だろうか。
PVや生放送で、画面の向こうで。
このキャラを使って、VRの世界でアバターの瞳を通して。
基本に忠実な動きであり、これ等の組み合わせで不思議な程強い存在。
そして数々の技術を平行して、全て自分にとって有利に進める頭の良さ。
即断即決の代表格とも言える、台本で“決められていた動き”なんじゃないのかと見間違える程迷いの無さ。
短く構えるハンドガンを巧みに使い、超がつく程の至近距離で相手を制圧する。
例えそれが、“彼”以上に近接特化とされている10番目の賞金首相手でさえも。
今のシロさんの姿はもはや……6keyそのものと言う他なかった。
『“こっち”の援護だったら、得意だもんね!』
それに合わせるかのように、戦場を駆けまわるナナさん。
これまで本気を出していなかったのか? なんて思ってしまう程、アクロバティックな上に正確な射撃。
こちらもまた、別の人物と既視感を覚えてしまいそうだが……しかし、二人共決めきれない。
体格差や歩幅、そして絶対的なステータスな違いがあるとハッキリ分かる敵だからこそ。
どうにかこの場を対処しているだけであり、確かな一手に踏み込めないでいる様子だ。
だからこそ、状況を動かすのは俺の仕事だ。
分かってる、分かってるんだ。
それがパーティにおいてのスナイパーという存在、絶対的な“場面転換”の役目。
理解している筈なのに……目の前の光景に圧倒されると同時に。
急に答えが提示されたみたいな衝撃で、全然心が落ち着かない。
呼吸は荒いし、指先が震えているのが自分でも分かる。
苦しい息を吐きながらスコープを覗き込むが、照準は合わずにユラユラと忙しく揺れ動く。
やはり、白川さんが6key。
この答えが正解だった場合、相手は物凄く高みに居る事になるのだ。
俺なんかが隣に居て良い存在じゃない、こんな風に遊んでもらうのだっておこがましいのかもしれない。
様々な思考が交差し、全然集中出来ない事態に陥っていると。
『クロさん!』
「っ!」
無線から、彼女の声が響いた。
そして。
『信じてます!』
近距離でハンドガン対ナイフの戦闘を繰り広げていた白川さんが、その言葉と同時にバッと一歩引いた。
相手がコレを見逃すはずも無く、忙しく繰り広げられていた戦闘のバランスが、急に傾いたのが分かった。
ナイフを持ったNPCが、妙なタイミングで引いた彼女に対して飛び掛かり。
白川さんに関しては、どう見ても対処が間に合っていない。
戦闘の均衡が崩れた瞬間。
このまま行けば、間違いなく白川さんにあの銀色の刃が突き刺さるだろう。
しかし同時に……相手が“決め”に掛かった“隙”でもあるのだ。
「任された!」
例え答えがどうであろうと、相手がどんなに凄い人で、俺なんかとは比べ物にならないくらいヤバイ存在だったとしても。
俺の中にある、最初に決めた答えは変わらないから。
“彼女が傷付く所を、見たくない”。
だから守るって、そう願ったんだろうが。
あの子の隣に並びたいから、必死こいて頑張ったんだろうが。
だったら白川さんが作ってくれたチャンスを逃す様な真似は……滅茶苦茶格好悪いってもんだろう!
「……当たれっ!」
感情を全て置き去りにしたまま全神経を集中させ、トリガーを引き絞った。
放たれた銃弾、コレが彼女を救う一手になると信じて。
あれこれ考えるのは、リアルでも出来る。
けど“こっち側”の今は、この瞬間しかない。
だったら……今だけは。
全力で格好付けながら、隣に並んでいるんだって胸を張るしかないっしょ。
俺にはそれしか、君に対して存在証明出来る方法が思いつかないから。
◆
「ぐ、ぬっ!」
攻め込んで来る相手の手首に左腕をぶつけて、目の前に迫る刃をどうにか止めたけど。
や……ばいっ! 全然筋力パラメーターが足りてない!
どうにか一瞬押し留められたとしても、見て分かる程にグイグイと押し込まれている。
力比べじゃ、ハッキリ言ってお話にならない。
この状況をどうにかしようと、右手に持ったハンドガンを相手のお腹に押し付けたけど。
悲しい事に、トリガーを引こうと何の感触も返って来なかった。
視界の端に収まったソレを確認してみると……思いっ切りホールドオープン。
馬鹿っ! お馬鹿っ!
普段6keyで使っているハンドガンは、基本的にロングマガジンが採用されている。
これに比べて、クロさんに貰った銃は標準というか。
元々小さい銃をカスタムパーツで大きくしているだけなので、総弾数は普通のソレと変わらない。
つまり、弾丸管理の初歩的なミス。
コレだからいつまで経っても成長しないんだよ私!
などと自分を叱咤しながらハンドガンを投げ捨て、迫りくる相手の腕を両手で押さえようとした所で。
「シロちゃん! これ使って!」
「っ!」
此方の視界にギリギリ映る所まで走り込んだナナさんが、随分と低い姿勢で此方にハンドガンそのものを投げて来た。
そちらに手を伸ばし、確かに受け取ってから。
「クロさんっ!」
叫びつつ、思い切りバックステップ。
絶対今距離を取ったら不味いタイミングで、あえて相手に“好機”を与える。
これに対し、向こうはすぐさま反応して攻め込んできており。
このままでは、確実に負ける。
だからこそ……彼を“頼った”。
いくらクロさんは狙撃が上手いからって、こんなに敵と近い状態で援護を頼むとかあり得ないでしょって話なんだけど。
「信じてます!」
思い切り無責任な言葉を叫んでから、迫りくる刃を無視してハンドガンを構える事に集中した。
結果。
『任された!』
頼もしい声が聞こえたと同時に、相手の脇腹から足に抜ける形で対物ライフルの弾が貫通。
流石にこの攻撃は予想外だったらしいNPCは、見事に取り返しのつかない程のダメージを負いながら、その場で倒れ込みそうになるが。
相手の顎に、ナナさんから渡されたハンドガンの銃口を押し付けた。
そして。
「私“達”の勝ちだ」
容赦なく、トリガーを引き絞った。
パンッ! と乾いた音を同時に銃弾は脳天に向かって突き抜け。
至近距離に迫る相手を、確かに“殺した”という実感を覚える。
勝った、それだけは確かだ。
だが相手の勢いが止まらず、その場に押し倒されてしまったけど。
しかしNPCはそれ以上動く事は無く、私の視界には“WIN”の文字が表示された。
「勝っ……た」
ポツリと呟いている間に私の防弾ベストを引っ張って、ナナさんが相手の下から引っ張り出してくれて。
そのまま、グワシッと抱き付かれた。
「ちょぉぉぉ……格好良かった! 何最後の連携! 最高かよ!? お前等早く結婚しろ!」
何やらおかしな事を叫ぶナナさんに、抱き付かれたままブンブンと振り回され。
此方としてはアワアワと変な声を上げてしまうけども。
『お疲れ様、二人共』
無線からは、いつも通りのクロさんの声が。
この声を聞いて、思わずニヘラッと変に力の抜けた微笑が零れ。
「勝ち、ましたぁ。ゃ、やったぁ……皆で、勝ちましたぁ……」
思いっ切り脱力しながら、ナナさんに対して完全に体重を預けてしまうのであった。
キャラの違い、環境の違いがあるからこそ、凄く苦戦したと言って良いだろう。
これもまた勉強になった、それは十二分に分かっているのだが。
それ以上に……嬉しいって、素直に思えた。
皆で掴み取った勝利なんだって思ったら、何かもう表情筋が緩み切っているんじゃないかと言う程ふにゃふにゃになるし。
意識していないと、ふへへっとか変な声を上げながら笑っちゃいそう。
やっぱり、パーティは楽しい。
すっごく、楽しい。
そしてそれ以上に、皆と一緒に掴み取った勝利は、凄く気持ちが良かった。
誰か一人でも欠けていたら、多分負けていた。
これまでの自分では考えられなかった様な、本当に“仲間”って感じの連携が出来た気がして。
物凄く疲れたし、物凄く大変だったけど。
でも、それ以上に。
“楽しかった”って、本気で思える一戦だった気がしたのだ。
コメント
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いやあ、今回の連携ヤバかったですね!クロさんの「任された!」からの狙撃、シロさんが信じてバックステップしたのを撃ち抜くタイミング、正直鳥肌立ちました。それに「私“達”の勝ちだ」って台詞、最高すぎる…。一人じゃなくて三人で掴んだ勝利って感じがガチで熱い。シロさんの成長と、クロさんの迷いを振り切る覚悟、全部刺さりました🔥