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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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うわあ、第133話、めちゃくちゃ良いところで終わりましたね…! 弟くんの「プロになりたい」という真っ直ぐな決意と、兄貴のリアルな警告の間にある温度差が、すごくリアルで胸に刺さりました。そして夢月ちゃん(6key)も、シロレザー経由でついに10番目と直接話す機会が! お互いがお互いの「プロ」や「技術」に憧れて近づいていく構図が、本当に尊くて、続きが気になって仕方ないです!
「兄貴、ちょっと良い?」
ガンサバをログアウトした後、真っすぐ兄の部屋へと向かった。
「おーう、今度はどうしたー?」
いつも通り、気の抜けた様な声を返して来る相手を見つめながら。
スッと、頭を下げる。
そしてそのまま。
「どうしたら、“プロ”になれますか」
「……どした、急に」
「どうしたら、俺も“賞金首”になれますか」
本日の戦闘を経て、ありありと感じた。
もしも本当に白川さんが6keyだったとして、それが判明したところで。
今の俺に、何が出来る?
今の俺に、隣に並べる資格があるのか?
あっちもこっちも色々足りなくて、ただのゲーマーでしかない俺が。
同い年で“プロ”として戦場に立つ彼女の隣に、どうやったら立てると言うのか。
その答えが、というか願望にも近い“道”を……思い付いたのだ。
俺自身が、“賞金首”になれば良い。
でもこういうのは、ただただゲームが上手いだけでは駄目だ。
もちろんソレも絶対条件だけど、“仕事”として進むのなら、絶対に正しい道筋が必要となる。
だからこそ、既にその道に居る兄に教えて欲しかった。
どうしたら、その高みに登れるのかを。
「…………」
兄貴は黙ったまま此方に近付き、俺の肩を掴んで顔を上げさせてきた。
そして。
「ハッキリ言うと、“止めておけ”としか言いようがない。全然安定しない仕事だし、長続きする保障なんかどこにも無い。普通に学校行って、普通に卒業して、普通に就職する。多分それが一番幸せで、ゲームなんて“娯楽”に収めておく方がずっと“楽”だぞ?」
この言葉を放つ時の兄は、これまでに見た事無い程色の無い瞳を此方に向けていた。
きっとこれまで、色んな事があったのだろう。
俺には見せてくれなかったけど、凄く大変な事だって数多くあったのだろう。
こっちだって、ナメて掛かっている訳では無い……とは、思うんだけど。
実際の所、アルバイトくらいしかした事の無い学生なのだ。
いくら俺が語ったところで、相手からすれば鼻で笑ってしまう様な覚悟だというのは理解している。
それくらいに“大人”っていうのは全然違うんだって、兄貴を見ていると理解出来る。
自分で稼いで、そのお金で人生を歩む。
言葉にすれば簡単そうに聞こえるけど、全てを自分でやるって考えたらとんでもない苦労なのだろう。
今の環境だと、実家に居るから、家族がやってくれるから。
バイトで何かやらかしても、自然と“次がある”なんて考えてしまうくらい自分が“子供”だって分かってる。
これ等全てを自分でやって、自分の尻拭いなんて自分でやるのが当たり前。
むしろ常に“失敗が許されない”覚悟で挑まなきゃいけない。
恐らくそれが……本当の“仕事”なんだって、今だったら想像出来る。
だって兄貴や6keyの戦っている姿を見れば、俺等とは全然違うのだ。
何処まで行っても、“本気”。
ゲームだとしても、遊んでいる様な雰囲気は皆無。
いつだって“その世界で本当に生きている”かの様な諦めの悪さを発揮して、例え他の人に笑われようと絶対に“生き残る”。
コレを、仕事では“成果”と言うのだろう。
結果が全て、更にはこの行動によりユーザーにどんな反響を与えるか。
そう言ったモノ全てを、“賞金首”はその身一つで物語っているのだ。
そして、本日見た白川さんの姿。
あの小さい身体で果敢に攻めて、強大過ぎる相手と互角に戦ってみせた。
負けても仕方ないって思える状況で、彼女だけは盤面を覆したのだ。
アレがきっと、本気の“闘争心”。
アマチュアとプロの間にある、絶対的な壁なんだと思えた気がした。
だからこそ俺は……もう一歩前に、踏み出したい。
あの子の隣に並ぶ為にも、認めてもらう為にも。
白川さんが見ている世界に、飛び込みたいって思ってしまったのだ。
「お願い、します。少しでも良いので……俺に“プロ”の世界を、教えてください」
それだけ言って、もう一度頭を下げてみると。
兄貴は大きなため息を零してから。
「ったく……今度は何があったのやら。そういうイベントは俺の見てる前で、楽しめる状態でやれってんだ。ほんっと、お前は俺と似ないで真っすぐ育ってんな」
なんて事を言いながら、無言のまま何かの資料を差し出して来た。
これを受け取ってみれば……え? あれ?
「あの……俺が見て良い情報、なの?」
「本来、駄目、絶対。だからお前は、絶対にこの事を公言するな。友達だろうと、白川妹だろうと駄目だ。思いっ切り規約違反だからな? ソレを理解した状態で……頭に叩き込め。多分それが、プロへの一番の“近道”だ」
とんでもない事を言っているのだが。
でも、渡された資料から目が離せなかった。
だって、そこに書かれていたのは。
「賞金首の“11番目”を選出する計画書……コレにおいては、現在ガンサバイブオンラインをプレイしているプレイヤーから選出し、今度育てていくと言う方針……」
「俺達とは契約形式はかなり変わるだろうがな。要はプレイヤー側により確かな、しかも金銭的なメリットもある“地位”を用意しようって企画な訳だ。これが実施されれば……間違い無く、腕に自信がある奴程これまで以上に“本気”になる。その中でも、“目立ち続ける”覚悟はあるか? ハッキリ言って、楽じゃねぇぞ?」
この時の兄貴の言葉には、いつもみたいな“甘さ”は微塵も無かった。
コレは本当に大変な事だし、普通だったら無理でしょって言いたくなる程高いハードルなんだって理解出来る。
でもその向こうに、賞金首達は居る。
ログイン一つでも、全プレイヤーから狙われる様な存在。
きっとそれは、想像を絶する様な苦労なのだろう。
だってこれはゲームだ。
ゲームって言うのは、“遊び”なのだ。
でも賞金首にとってのガンサバイブオンラインは……多分、全然違う。
コレを理解し、行動で示しているからこそ。
今居る10人を、プレイヤーは皆追いかける。
だってその背中が、凄く格好良いから。
まるで“娯楽の世界にしか存在しない”主人公みたいに見えるから。
きっとこの人達は、夢物語の世界にしか存在しないソレを体現しているのだろう。
そして手元にある資料によれば……“11番目”を、運営が求め始めたという事になるのだ。
「やる……やるよ、俺。コレに選ばれるくらい強くなって、目立ってやる」
「その分、周りから狙われるぞ?」
「それでも、やる。だって兄貴達と違って、“全プレイヤー”から狙われる訳じゃない。だったらこんなの、イージーモードだって思えるくらいじゃないと……賞金首なんて、やってられない」
「ま、その通りだな」
と言う事で、本日。
俺には、新しい目標が出来た。
賞金首の11番目。
その席が用意されたというのなら……この椅子を、意地でも掴み取るだけだ。
確かな道筋が見えたのなら、後は突っ走るだけ。
これまで以上に、これまでとは比べ物にならない程に。
あの世界と、本気で向き合う時が来たと思って良いのだろう。
◆
「ふんふんふ~ん」
自分でも分かる程に調子に乗っていると言うか、ここの所凄く機嫌が良い。
だってアレから、パーティ戦が楽しくて仕方ないのだから。
今度は俺達だって! と言って、グレーさんと出っ歯さんはムキになり。
私達もそれに合わせてワーワーとイベントに挑む。
皆揃って本気でやって、それでもダメな時は皆でウワー! って嘆く。
そんな事を、最近は繰り返しているのだ。
思った以上に、今回のコピーNPCのイベント……楽しい。
何度も何度も挑んで、狙っているドロップ品だって出た筈なのに「もっと行ける気がする!」みたいな感じで効率を上げて行くのだ。
昔はソロでやっていた作業を、他の人と一緒にっていうのは……やっぱり、全然感じ方も進め方も違う訳で。
これを皆一緒に頭を悩ませながら進んでいく毎日というのが、とても楽しい。
と言う事で、今日はゲームを終わりにしてから。
残業で大変らしいお兄ちゃんの夕飯を、ちょっと遅い時間に作っていたのだが。
『すまん夢月、こっちはもうちょっと掛かりそうなんだが……一つ、情報共有しておきたい事が』
何やら、気になるメッセージが兄から届いたので。
今度はどうしたんだろう? なんて思いながらも、現在作っている唐揚げの写真を送信。
すると兄からは、涎を垂らした様な絵文字が大量に送られて来たが。
まぁ、それは良いとして。
『イベント戦、運営側も結構監視しててな? お前達のチームを見ていたtimelimit:10のサポーターが……46leatherに興味を持った。んで、問題はそこからなんだけど』
うん、待って?
それ、私のサブキャラ。
ついでに言うと、私は6key。
すみません、余計な事してしまって。
見るのであれば、他のプレイヤーにして下さいって言っておいてもらおう……などと、返事を送ろうとしていると。
『お前の動きだけで、10番目本人にはシックスだとバレた上に……今まで以上に興味を持ったらしくてな。今度、オンラインで良いから面会の時間をくれって要望されたんだが……どうする?』
此方がメッセージを返す前に、立て続けに送られて来たソレ。
これを眺めつつ、暫くポカンとした後。
『是非! 私も10に色々聞きたい事があります!』
などと、慣れないスマホを扱いながら爆速でメッセージを返してしまうのであった。
初めて会う人だし、絶対いつもみたいにドモるし……とか、色々思う所はあるけど。
それでも。
私の戦い方に近い上に、更に言うのなら“その道のプロ”としか思えない動きの数々。
これを繰り出す本人とお話が出来るって、もの凄く貴重な機会じゃないか?
なにより、あの人の動きの“本物”が見てみたい。
そしてコレを6keyで出来る様になったら……。
結局のところは、ソコなのだ。
あの人の“技術”が、私は欲しい。
だからこそ、教えて欲しい。
気になる気になると言ってばかりで、何度も彼のNPCに挑んだけど。
結局疑いが深まるばかりでちゃんとした答えが出なかった。
そんなのを、本人から聞けるチャンスとなれば。
いつもの引っ込み思案はどこかへと吹っ飛び、このチャンスを逃すものかとばかりに食いついてしまった。
結果。
『であればまぁ……前向きに考えるって返答しておくぞ? 何度でも言うけど、お前は女の子だからな? その辺の警戒心はちゃんと持つ様に』
『あい!』
はい、って打とうとして思いっ切り入力ミスしたけど。
まぁいいか。
ということで、リアルとしてもゲームとしても。
そしてメインでもサブでも、楽しみになる事の連続。
やっぱりガンサバは凄い。
これまで一人で遊ぶ事しか知らなかった私を、こんなにも多くの人の前へと連れ出してくれたのだから。
というのと。
「やっぱり……調べても分かんない事って、ワクワクする」
多分私の癖というか、変な特徴なのだろうけど。
いくら調べても答えが出ない項目って、すごくモヤモヤするし、そればっかり気になってしまうけど。
調べている間は、すっごく楽しいと思うのだ。