テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「私も彼女の言ったことに同意です。津久野さんって、会社ではモテないんですか?」


「どう思います?」


意味深な視線を飛ばされたせいで、怯みそうになる。


「質問を質問で返さないでください」


「俺と食事してくれたら、そこのところもまじえて、詳しく教えてあげます。それじゃあ」


印象的に映る瞳を嬉しげに細めて去っていく後ろ姿に、思わずアッカンベーをした。


「先輩、あの人相当のやり手ですよ。気をつけた方がいいです」


三浦さんは私から奪った名刺を返しながら、ウンザリした顔で話しかける。


「要注意人物ね。話しかけられたら、今のように対処しましょう」


こうしてふたりでタッグを組み、厄介なお客様に対応していたのだけれど。


「高田さん、こんにちは。よかったらこれ、休憩時間にふたりで食べて」


数日後、宣言通りに部下を連れた津久野さんが受付に顔を出し、小さな小箱をカウンターに置いて、さっさと会社の中に入って行く。その間、わずか数秒だったせいで、こちらから返事ができなかった。


「先輩見ました?」


「なにが?」


「津久野課長が連れてた部下ですよぉ。結構タイプかも」


三浦さんの話を聞きながら、カウンターに置かれた小箱を手に取る。それは誰もが知る、有名店のクッキーの詰め合わせだった。


「女子受けしそうなお菓子ですね、それ」


「うん。勝手に置いていったとはいえ、お礼を言わなきゃいけない」


相当なやり手である彼の手腕に、このときゲッソリした。だってお礼と称して、私から声をかけることになる。進んで接触したいと思える相手じゃないのに。


「先輩、出てきましたよ」


頼まれていた仕事をこなしていたら、三浦さんが打ち合わせから出てきた彼らを見つけてくれた。慌てて立ち上がり、津久野課長に声をかけようとしたら、彼はこちらを一瞥し、小さく頭を下げて去って行く。急いで帰社しなければならない事情があるのだろう。


「次に来たとき、挨拶しなきゃ……」


津久野課長がいつ会社に来るのかわからない以上、こちらから声をかけなければいけないことが、微妙に私のストレスになったのだった。

loading

この作品はいかがでしたか?

39

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚