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「好きです」
その言葉を、私はまた聞いてしまった。
夕方の教室。
窓からオレンジ色の光が差し込んでいる。
告白してきたのは、クラスメイトの佐藤くんだった。
「前から…ずっと好きでした」
真っ直ぐな目。
震えている声。
私は少しだけ、胸が痛くなる。
本当は__
私も、少しだけ佐藤くんのことが好きだったから。
でも。
「ごめんね」
私は笑って、そう言った。
「え…どうして?」
佐藤くんは困ったように聞いた。
普通なら、
「まだ恋愛とか考えてなくて」とか、
「友達のままでいたい」とか言うんだろう。
でも私は、言えない。
本当の理由なんて。
だって__
それを言ったら、
きっと誰も私に近づかなくなるから。
「理由、聞いてもいい?」
沈黙のあと、佐藤くんが言った。
私は少しだけ考えてから、静かに答えた。
「もし私が誰かを好きになったら」
「その人、死んじゃうの」
佐藤くんは一瞬、固まった。
そして、少し笑った。
「え?なにそれ、冗談?」
「……冗談だったらよかった」
私は窓の外を見る。
校庭の桜の木。
去年、あの下で告白された。
「一人目は、小学生のとき」
同じクラスの男の子。
両想いになって、三日後。
交通事故で死んだ。
「二人目は、中学生のとき」
付き合った次の日。
心臓発作で倒れた。
健康だったはずなのに。
「三人目は……去年」
告白を受けて、
“私も好き”って言った。
その一週間後。
階段から落ちて死んだ。
偶然だって、最初は思った。
でも__
三回も続いたら、
さすがに気づく。
これは、偶然じゃない。
呪いみたいなものだって。
私はゆっくり振り返った。
佐藤くんの顔は、さっきより青くなっていた。
「……怖いよね」
私は小さく笑う。
「だから、付き合えない」
「君を死なせたくないから」
教室に沈黙が落ちた。
数秒後、佐藤くんは言った。
「……でもさ」
「それ、証拠ないよね?」
「ただの偶然かもしれないじゃん」
そして、少し照れながら笑った。
「それでも俺、好きだよ」
胸がぎゅっと苦しくなる。
なんでそんなこと言うの。
「だからさ」
「試してみない?」
「もし本当にそうなら、その時は――」
その言葉を、私は最後まで聞かなかった。
だって。
もう、知っているから。
私は、ゆっくり口を開いた。
「もう遅いよ」
「え?」
「さっき」
私は少しだけ笑った。
「佐藤くんのこと、好きだなって思っちゃった」
その瞬間。
廊下の向こうで__
ドンッ、と
何かが落ちる大きな音がした。
先生たちの叫び声。
走る足音。
そして誰かの声。
「救急車!早く!!」
私は目を閉じる。
やっぱりだ。
だから__
私は恋をしちゃいけない。
コメント
3件
ほわ…✨️久しぶりだけどほんとに上手いよね…✨️ 久しぶりに見れて嬉しいです!