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17号
⚠️syp×sha
⚠️オメガバース
⚠️モブ
⚠️r
⚠️ご本人様には関係ありません
《syp side》
スマホが震えたのは、タバコを買いにコンビニに行った帰りだった。画面に表示された名前を見て、少し驚く。
シャオさん。
普段用事がある時は業務連絡がほとんどで、個人的に連絡が来ることは少ない。
『ショッピくん、ちょっとええか』
短い文章。
何となく嫌な予感がした。
『シャオさん?なんですか?』
返信はすぐに来た。
抑制剤が切れてしまったこと。
発情期が来てしまったこと。
動けないこと。
スマホを持つ指先が、少し冷たくなった。
『分かりました』
それだけ打って、急いで反対方向の薬局へと向かった。
薬局の棚の前で立ち尽くす。
どれが正しいのか分からない。
処方薬じゃないと意味がないかもしれない。
でも、何も持たずに行くわけにはいかない。
箱を三つ掴む。
水。ゼリー。冷却シート。
カゴがやけに重い。
レジで財布を出す手が、ほんの少し震えていた。
ドアは開いていた。
「シャオさーん」
部屋に入った瞬間、室内の熱気に包まれる。
ほのかに感じる、甘い匂い。
ソファにぐったりしている姿を見た瞬間、胸の奥が締め付けられた。
黄色い前髪が汗でベッタリ張り付いている。
「大丈夫ですか」
返事は弱い。
軽い体。
熱い体温。
ソファに寝かせると、シャオさんの呼吸が少し落ち着いた。
袋からものを出しながら、自分でも驚くほど淡々と話している。
動揺しているのに、声は静かだった。
用事も済み、帰ろうとした時。
「まって」
シャオさんに引き止められる。
「不安やから……まだいて欲しい」
心臓が大きく跳ねる。
頼られている、それだけで十分なはずなのに。
「分かりました」
コートを畳む手が、妙にぎこちない。
安心したのか眠ってしまったシャオさんの寝顔は驚くほど無防備だった。
閉じられた瞼に生えるまつ毛が長い。
普段のシャオさんは軽口を叩いて距離感を保って、隙なんて見せないのに。
今は、ただの弱った人間だ。
触れたいと思ってしまう自分に驚く。
でも触れてはいけないとも思う。
だから布団を整えるだけにした。
このみだらな気持ちを誤魔化すためにも、キッチンを借りてお粥を作ることにした。
シャオさんが普段料理をしない事は知っていた。
俺も自炊はあまりしない。
が、今まで1度も使っていないのではないかと言うくらい何も無かった。
これでは何も作れないので、お粥の材料を近場のコンビニに買いに行くことにした。
そこで意外な出会いがあった。
「ショッピじゃん!」
「先輩」
大学の先輩がいた。
名前は忘れた。
グイグイ行く性格が苦手だったのだ。
それだけは覚えている。
で、どうしてここに大学の先輩がいるのだろうか。
彼は東北の方へ行くと言っていなかったか。
「仕事でさー、ちょっとこっち来たんだよね」
そうか仕事か。
「久しぶりに会えて嬉しいよ」
俺は嬉しくないです。
そんなこと面と向かって言ったらぶん殴られるに決まってるので、愛想笑いを返しておいた。
先輩が、俺の手に持つ品を見て言う。
「お粥?誰か風邪なの?彼女?」
ほんとデリカシーがないなこの人。
「まあ、ご想像にお任せします」
説明がめんどくさい。
「ふーん、じゃあね」
シャオさんが起きてしまうかもしれないし、早々に話を切り上げて帰ろうと思ったところ、先輩側から別れを告げてくれた。
ラッキー。
「お仕事頑張ってくださいね」
会計を済まし、小走りでシャオさんの元へ帰る。
お粥を作り終え、器に移し終わると、シャオさんが目を覚ましていた。
丸くて大きな琥珀色の瞳が少し潤んでいる。
「シャオさん、おはようございます」
声をかける。
「おはよ……それは?」
「お粥作ったんですけど……食べます?あ、キッチン借りました」
シャオさんが頷いたため、身体を起こしてもらい、膝の上にお盆を載せた。
「自分で食べれる?」
寝起きだし、発情期だし。
「いけるやろ」
シャオさんがスプーンを手に持つ。
お粥に埋める。
掬い上げる。
……?
上がらない。
「掬えへん……」
「手の力弱ってるんかな」
シャオさんが右手をグーパーする。
「これじゃ食えへんやん……」
ここは意を決して。
「俺が食べさせましょか?」
「え!?」
スプーンを手に取り、お粥を掬う。熱を冷まし、シャオさんの口元まで持っていく。
少し眉間に皺を寄せ、ほんのり赤く染った頬で黙々と口に運ばれるお粥を食べる姿は、まるで小動物のようだった。
最後の一口。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
空になった器たちをキッチンへ運ぶ。
食器を水に浸し、食器用洗剤をスポンジに少し染み込ませ、洗う。
全て洗い終わり、冷たくなった手で、シャオさんの方へ戻る。
「うぅ……」
シャオさんが、丸くなりながら呻いていた。
体調が悪化してしまったのだろうか。
俺はすぐに心配して駆け寄る。
「シャオさん!?大丈夫なん!?」
「ショッピくん……」
シャオさんの手がおもむろに俺の手に被さる。
「ちょ、シャオさん?」
「薬、効かんかったみたいや……」
え?
「じゃ、じゃあ今シャオさんは……」
「……ヒートやな」
ヒート。
発情期。
思考が止まる。
「……なあショッピくん」
シャオさんが口を開く。
「はい?」
「1回抱いてくれへんか?」
「は?」
え?抱く?
「辛いんや……」
「……俺はベータですよ?」
「なんでも、ええから……」
確かに、ベータの精子は、オメガの子宮(厳密に言うと子宮ではないが)には機能しない。
つまり、妊娠には至らないということだ。
それでも、いいのか?
俺がシャオさんを抱くなんて……。
いや。
シャオさんが困っているんだ。
助ける以外選択肢はない。
そんな結論に行き着き、俺は早々と彼をベッドまで運んだ。
やっぱ軽い。
野球をやっていて筋肉が着いているはずなのに、俺でも軽々と持ち上げることができる。
「はぁ……ショッピくん……」
シャオさんが物欲しそうな目でこちらを見つめる。
「シャオさん……」
名前を呼ぶだけで喉が渇く。
助けを求めているのはわかる。
本能に押しつぶされそうになっていることも。
けれど。
これは一線を超える行為だ。
後戻りはできない。
「……ほんとにええの?」
確認せずにはいられない。
ヒート中の判断は正常じゃない。
「ああ……はよしてくれ……」
掠れた声。
その一言で、迷いが崩れた。
「……どうなっても知らんからね」
ベットに横たえるシャオさんの体は、熱を帯びている。
触れたい気持ちが、止める理性を越えていく。
「……失礼します」
軽く口付ける。
それだけでシャオさんの呼吸が乱れる。
「ん……」
か細い声。
指がシーツを掴む。
触れるだけで反応する身体が、どれだけ限界なのかを物語っていた。
背中を撫でる。
肩を撫でる。
「んんっ」
シャオさんが声を漏らす。
「触られるだけでも感じるんですね」
「やぁっ」
段々と手を滑らせる所を胸に集中させ、シャオさんの可愛いところを見つける。
「っ!」
腰が上がり、一瞬目を閉じる。
「……シャオさん、イった?」
「……い、イッてへんし!」
絶対達してたけど、ムキになるシャオさんも可愛いので、そういうことにしておく。
そして。
視線を足元に向ける。
「……これ、わざとなん?」
俺の脚に、シャオさんの屹立が押し付けられている。
ちょっといじわるして、ソコに体重を少しだけかけてみる。
グイ〜っと。
「んやぁ!」
少し触るだけでこんなに可愛くなってしまうのだから、俺の理性も吹き飛ぶ。
「好きですよ、シャオさん」
気づいたら口から漏れていた。
聞こえていないかもしれない。
……いや、それでいい。
聞かれていたら困る。
コトが終わり、少し気まずい空気が流れたあと。
「すみません」
何に対しての謝罪か自分でも分からない。
シャオさんは目を開け、やわらかく笑った。
頬肉が少し上がり、アイブラックが曲線を描く。
「ありがとな」
責める色はない。
後悔もない。
ただ安心した表情。
それが救いだった。