テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
208
269
ナギサノサナギ
2,526
147
年が明け、冷たい風の中にも少しずつ春の気配が混じり始めた頃。
「ライ〜……」
「どうした?」
ソファに座った緋八マナが、毛布にくるまりながらライを見上げる。
「なんか最近、すぐ眠くなる」
「いっぱい頑張ってるからだよ」
「陽向も元気やしなぁ」
ぽん、と優しくお腹を撫でるマナ。
健診のたびに「順調ですね」と言われることが、二人にとって何より嬉しかった。
「あと少しやな」
「うん」
「なんか緊張してきた」
「俺も」
「ちゃんと親になれるかなぁ」
「今さら?」
「今さら!」
二人は顔を見合わせて笑った。
その日の午後。
「お邪魔しまーす!」
今日は珍しく、みんながマナたちの家に集まっていた。
「うわ、イッテツんとこの子たち大きくなったなぁ」
「元気すぎるだろ!」
「お兄ちゃん、見て見てー!」
長男が元気いっぱいに絵本を見せてくる。
「すごいやん!」
リトが笑う。
「最近、赤ちゃんに会うの楽しみにしてるんだよ」
「優しいお兄ちゃんやなぁ」
ウェンとロウもお土産を持ってやってきた。
「これ、今ハマってるプリン!」
「食べたかったやつ!」
「無理せずゆっくりな」
「ありがとう!」
その隣では、ショウとカゲツがベビーベッドを組み立てていた。
「星導、そこ逆!」
「え!?」
「説明書見て!」
「助かった〜」
「二人ともありがとう!」
少しずつ、部屋の中も赤ちゃんを迎える準備が整っていく。
小さな服。
ぬいぐるみ。
ベビーベッド。
みんなからもらったプレゼント。
そのどれもに、たくさんの優しさが詰まっていた。
夕方。
みんなで夕飯を食べ終えた頃。
「マナ」
ウェンが笑顔で言う。
「次会う時には、陽向くんもおるんやろな」
「そうやなぁ」
「楽しみ!」
「いっぱい抱っこする!」
「順番な!」
ロウが笑いながらツッコむ。
「泣かれたらどうしよう」
ショウが少し不安そうに呟く。
「大丈夫やって!」
カゲツが笑う。
「きっとみんなのこと好きになるよ」
「そうだといいな」
帰り際。
「何かあったらすぐ連絡しろよ!」
イッテツが真剣な顔で言う。
「夜中でも行くから!」
「ありがとう」
「一人で抱え込まなくていいからね」
リトも優しく微笑んだ。
「みんながおる」
「うん」
八人で笑い合い、また会う約束をして別れる。
静かになったリビング。
ベビーベッドの横に並んで座る二人。
「なんか、いよいよって感じやな」
「うん」
ライは小さな服を手に取りながら笑った。
「陽向、幸せ者だね」
「ほんまや」
「こんなに楽しみにしてくれてる人がおる」
マナは優しくお腹を撫でる。
「もうすぐ会えるな」
「うん」
「楽しみやなぁ」
「楽しみ」
窓の外には、静かな星空。
二人で過ごした時間。
仲間たちと笑い合った日々。
たくさんの人の優しさに支えられて。
いよいよ、新しい家族との出会いが近づいていた。
そして数日後。
二人は、一生忘れることのない大切な日を迎える。
コメント
1件
ああ、もうすぐ会えるんですね……。ここまで丁寧に積み重ねてきた日常と、みんなの優しさがぎゅっと詰まったエピソードでした。ベビーベッドの組み立てでショウくんとカゲツくんが説明書を見ながら「そこ逆!」ってやりとり、ああいう何気ないシーンに仲の良さがにじんでいてほっこりしました。マナさんとライさんの「今さら!」って笑い合うところも、二人の関係性がよく出ていて好きです。陽向くん、たくさんの人に愛されて生まれてくるんだなあ。次の話が待ち遠しいです!