#妄想まとめ
ぽちぽちと、一つ一つ文字を打つ。
「ごめんなさい」
メールを、送信しスマホをロックする。
もう、開くことはないだろう。電車に乗り、都会から離れる。
目を閉じて、再び開けた時には電車はもう止まって辺りは暗く染まっていた。
知らない土地、静かな空気。綺麗な酸素。もう、僕を知っている人はこの土地にはいないだろう。電灯も少なく、畑ばかりだった。
プルルルと、携帯に電話がかかる。どうしたのか、とスマホを手に取る。
画面には、「加賀美ハヤト」と出ていた。
「はい、剣持です」
「……すみません、撮影すっぽかしてしまって。」
「……え?今からですか?実はーーそのぉ……」
「……はぃ、すみません。言い訳はダメですよね。」
「……今どこにいるかって……外ですけど…」
「………一言、伝えておいてほしいことがあるんですけど」
「…僕のことは、もう忘れてください。もうそちらに戻ることもありませんし、こっちから戻る気もありません。」
「…うわ、うるさ。では」
道なりを進んでいく。沈みかけていた太陽が沈みきり、辺りは真っ暗になった。
懐中電灯でもないと、前が見えない。一寸先は闇ってやつ。
明かりにしようと、スマホを取るとタイミングよく電話が鳴った。
画面には、『不破湊』と出ていた。
「……どうしました?」
「……用がないなら切りますけど」
「…ふふwそんな慌てなくてもw」
「え?なんと?」
「……せめて日本語喋ってくれません?w」
「……不破くんからそんなこと言われると思ってませんでした。ありがとうございます。」
「けど、戻る気はありません。不破くんも、早く僕のこと忘れてくださいね。」
「……?周りの写真を撮って欲しい…?」
「…わかりましたよ、それでいいのなら」
「……!すみません、電話切りますね」
なんてこった。まさかの写真を送っただけで場所を特定されるとは。早く、早く行かなきゃ。
地面を蹴って前へ前へと進む。
また、電話が鳴る。
「はい」
「…甲斐田君でしたか…はぁ、ハァッ…」
「……え?そりゃあ走ったら息が上がるじゃないですか。」
「田舎の道は広い上に長いですからね。歩きなんですよこちとら。」
「……何処に向かってるって……僕も知りませんよ」
「……は?今から?え、社長のジェット!?!?」
「……へー僕を置いてジェット機乗るんですね。あーもう帰りたくなくなった」
「じゃあ切りますね。そろそろwi-fiも繋がらないところだし。」
「では、」
社長の財産であるジェット機に乗ってこちらに来るらしい。それまでにこの山を登り切らないといけない。多分、後1時間…。
山を進む。一応、整備されてる山でよかった。コンクリの道をひたすらに歩いていく。
「……つい、た…」
30分もせずに、目的地についた。辺りは暗く、少し下に駐車場があった。ここに来る人いないから意味ないだろ、と思ったけど。
来た場所は、自殺の名所。ここで、ガードレールを超え身を投げ出す人が後を絶たないらしい。
「最終配信でもするかぁー」
スマホを取り出し、YouTubeにて配信を開始する。
「あー、あー、マイクテストマイクテスト」
「え?今日音質悪い?まぁ、外ですからね」
「それに風もよく吹く。雑音したらすみませんね。」
「さーてと、まぁ30分だけなんですが。何しましょうかね」
「……そりゃあなんも決まってないし、突発でやってるから。」
「……あ、Twitterで呟いてないわ。忘れてた」
「…よし、OK。……どうしました?コメント欄ざわついてるけど。まぁそれはそうか」
「……”最終配信ってどういうこと?”そのままの意味ですよ」
「…”ごめん”?何に対してですか?」
「別に、アンチとかそういうのじゃないですよ。ただ……そう、虚空に帰りたくなっただけです!」
「…”嘘だろ?”……あ”ー、まぁ理由は嘘ですけど。最終配信は嘘じゃないですよ」
「……”死なないで”…か。ただ皆虚空に帰るだけですよ。死ぬのが怖いのは、信仰心が足りないってこと。虚空を愛しなさい、虚空はいつでもあなたたちを見ていますよ」
「……はは、冗談はダメですね。すみません。でもみなさんにもあるでしょう?」
「……”疲れたから死にたい”とか。死ぬ勇気もない癖に」
「……本気で疲れて、もう生きる希望もなくなり生きてる意味もわからなくなった人にそれを言ってごらんなさいよ。多分その人死ぬぜ?」
「……ははw、こんな時にまで何言ってんだろ俺……あっ僕僕僕僕ゥ!!」
「マシュマロでも読みます?いや、機材なかったわ。」
「あー、そろそろ30分経ちますね。時間の経過は恐ろしいくらい早い」
「じゃあ剣持をここまで応援していただきありがとうございました!僕の時はここで止まりますが、みなさんは進みます!これからも生きてくださいね!」
「それでは、いい夜を〜」
「「もちさんっ!!!!」」
「……配信終わろうとしたのに。」
加賀美「まず、そこから離れてください。危ないです」
「重々承知しております」
不破「……もちさん、死んじゃダメだ。」
「…生きるのもダメなんです」
甲斐田「もちさん、あのッ、まだ、楽しいことありますし……それに、ろふまおはどうするんですか!?もちさんがいないと、僕らろふまおって言えないですよ!!」
「……それは、すみません」
「……もう、いいですよ。君たちに罪悪感を一生背負ってもらうつもりはございませんので」
不破「全然背負いますよ!!4人でわけたら四分の四っす!!」
社長「四分の一ですよ。不破さん」
不破「あぇ?」
「ははw」
甲斐田「…じゃーあ、甲斐田も死にます。」
不破「は?」
そう言った甲斐田くんは、ガードレールを超え僕の隣に立つ。その足はとても震えていた。
甲斐田「いやいや!先輩がそう決めたなら後輩としてついていくべきかなぁーと」
「いや、甲斐田君は不破君がいるじゃん」
甲斐田「いえ、兄貴はアニキであり剣持さんはもちさんです!」
「よくわかんないな」
社長「まぁ、剣持さんまだ子供ですしね」
「大人ならわかるの?」
不破「俺もわかんないんで、大丈夫っす」
社長「じゃあ、私も共に行きますかね」
不破「…俺も。みんなとなら怖くないし」
甲斐田「いっせーので行きます?」
なんで、この人たちはそう簡単に命を捨てるのだろう。話は勝手に進む。今日がろふまおの撮影日だから、3人も道連れになってしまう、ということか?3人は、死ぬ必要ないのに。スマホをちら、と見る。まだ配信は終わってなかったらしく、コメントが流れている。
[ろふまお解散…?]
[死ぬな]
[死ぬ必要ないじゃん]
「……3人が死ぬ必要はないですよ。」
甲斐田「え、」
「あなた達には、まだ人生があるでしょう?」
不破「いや、それはもちさんもやないすか」
「……僕、ですか」
社長「…そうですよ。」
「……何年も16歳だから変わり映えしないんですよ。何回も学年が上がる同級生を見ました。何回も、同じ勉強をしました。何回も、何回も、何回もッ!!」
「…もし、ここで死んだら3人の人生は終わりますよ。それでもいいんですか。まだ、やり残したこととかあるんじゃないですか」
甲斐田「そりゃあ、やり残したことはいっぱいありますよ」
不破「もちさんはどうなんすか?」
「……僕は、」
社長「まだ、ろふまおとしてやり残したこといっぱいありますよ?新曲とか、ライブとかもしたいですし、円満解散までは続けません?」
「……」
不破「剣持、」
甲斐田「剣持ッ」
社長「剣持さん」
「「なにかあったら、僕/俺/私を頼ってください」」
「……ふは、なんで、そこでハモってんの…wッ」
不破「おい!俺がカッコつけるとこやんけ今の!!」
甲斐田「いやでも、ここは後輩が言うのが筋っていうか!」
社長「そんな筋、取ってしまいなさい。ここは年長の私が言った方が…!!」
「……はぁ、」
「わかりましたよ、円満解散までは、ですね」
「帰りますよ。社長のジェット機乗ってみたいし」
社長「!」
不破「……」
甲斐田「ははwやっぱ乗りたかったんだw」
社長「帰りますかね〜、」
不破「マジ、ジェット機早いんだよな」
「え、本当ですか」
社長「まぁ、私がカスタムした世界に一つだけのーーー」
[よかった]
[こりゃあ解散できないな]
end
コメント
3件
あれ?おかしいな?地雷って思ってたけど、全然読めた。つか泣いたw神作品じゃぁないですか!