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忍術学園の昼休み。生徒たちがそれぞれの委員会活動に勤しむ中、よもぎは保健委員会で仕事をしていた。いつものように薬草を整理していると、ふと廊下から小さな咳が聞こえた。
よもぎ:「……三郎次くん?」
振り返ると、少し顔色の悪い池田三郎次が、壁にもたれて休憩していた。
三郎次:「……なんだよ、見るな。大したことねえよ。」 (そっぽを向きながら、少し咳込む)
よもぎ:「無理しないで、保健委員会室に行こう。ちょうど摘みたてのキキョウがあるの。」
抵抗する間もなく、よもぎは三郎次を優しく連れて行き、机に座らせる。手際よく薬を作り、温かいお茶と一緒に差し出した。
よもぎ:「これを食後に1回、1週間飲み続けてね。」
三郎次は薬草の匂いを少し気にしながらも、言われた通り飲み干した。
三郎次:「……なんだか、見ないうちに母さんみたいになったな。」 (照れくさそうに言いながら、少し口元が緩む)
よもぎもフフフッと笑って三郎次くんも見ないうちに少したくましくなった。と言ってそれを見ていた乱太郎は伊作になんであんなに仲がいいんですかと不思議そうに聞く。伊作はいつもと変わらず優しく微笑みながらよもぎと三郎次くんは幼馴染なんだよ。といった。伊作の言葉に乱太郎は「へぇ〜幼馴染かぁ」としみじみとした顔をしていた。そんな様子を見て、よもぎは微笑み、三郎次は少し気まずそうに視線をそらす。
乱太郎:「それにしても、よもぎさんってすごく優しいよね!」 (感心したように言いながら、三郎次をちらりと見る)
三郎次:「なっ…当たり前だろ、昔からそうだったんだよ。」 (腕を組みながら、照れ隠し気味に言う)
よもぎ:「ふふっ…そんなことないよ。でも、三郎次くんが元気になればいいなって思ったから。」 (柔らかい笑顔で答える)
三郎次:「……ま、まあ……ありがとな。」 (少しぼそっと言いながら、キキョウの薬を見つめる)
そんなやりとりを見ながら、伊作は静かに微笑んでいた。
伊作:「あの二人は、幼馴染だからこそ、言葉にしなくても分かり合えるところがあるんだよ。」
乱太郎:「へぇ~!なんかいいなぁ、幼馴染って!」 (目を輝かせながら納得した様子)
そんな会話の中で、三郎次は無意識によもぎの方を見つめていた。そしてふと、よもぎもそれに気づき、目が合う——。
三郎次とよもぎが見つめ合ったまま、しばし沈黙が流れる。
三郎次:「……お前、本当に変わったよな。」 (ぽつりと呟くように言いながら、キキョウの薬を見つめる)
よもぎ:「そうかな?」 (小さく微笑みながら問い返す)
三郎次:「昔はもっと……なんていうか、大人しくて、俺が引っ張ってばっかりだったのに。」 (少し照れながら、昔の記憶を辿る)
よもぎ:「ふふっ。三郎次くんも、前よりたくましくなったと思うよ。」 (くすっと笑いながら、彼をじっと見る)
三郎次はその言葉に一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにそっぽを向いてしまう。
三郎次:「そ、そりゃ…まあ、俺だって鍛えてるからな。」 (顔を赤らめながら言い訳のように答える)
よもぎはそんな三郎次の反応に、どこか懐かしさを感じていた。
三郎次が立ち上がり、屋根から降りようとした瞬間——
よもぎは静かに手を動かし、指文字で何かを伝え始めた。
よもぎ(指文字):「夜に部屋の屋根の上に来てね。」
三郎次は驚いたように足を止め、よもぎの動きをじっと見つめる。
三郎次:「……なんだよ、それ。」 (少し戸惑いながらも、目を細める)
よもぎは特に何も言わず、ただ小さく微笑んだ。
三郎次:「……分かったよ。」 (低い声で答えながら、そっと視線をそらす)
そして、静かにその場を後にする。
夜の再会——それがどんな意味を持つのか、三郎次は考えながら歩いていた。
夜が訪れ、忍術学園の屋根の上には静寂が広がっていた。月の光が柔らかく差し込み、風が心地よく吹いている。
三郎次は少し遅れながらも、慎重に屋根に登り、そこに座っているよもぎを見つけた。
三郎次:「おい、ちゃんと来たぞ……何の話だ?」 (少し照れながらも真剣な顔)
よもぎ:「……三郎次くんに、ずっと聞きたかったことがあるの。」 (静かに夜空を見上げながら)
三郎次はよもぎの言葉に少し緊張しながら、その隣に腰を下ろした。
三郎次:「……俺に?」
よもぎ:「うん……。昔、私が9歳の時に、急にいなくなったよね。」 (少し寂しげな声で言いながら、膝を抱える)
三郎次はよもぎの言葉に驚きつつも、視線を夜空へと移した。
三郎次:「……ああ。でも、ずっとお前のことは気にしてたんだ。」 (低い声で呟くように言う)
よもぎはゆっくり三郎次の方を見つめる。
よもぎ:「それなら……どうして何も言ってくれなかったの?」
三郎次はしばらく黙り込んだ。風が静かに二人の間を吹き抜ける——。
三郎次はしばらく沈黙したまま、夜空を見上げていた。星が静かに瞬いている。
三郎次:「……俺さ、お前が9歳の時にいなくなったのは……俺の勝手だったんだ。」 (少し低い声で呟くように言いながら、拳を握る)
よもぎ:「勝手に……?」 (眉をひそめながら、三郎次の横顔をじっと見つめる)
三郎次:「……俺は、お前の隣にいる資格がないって、あの頃は思ってた。」 (苦笑しながら、少し寂しげな目をする)
よもぎは驚いた表情を浮かべた。三郎次がそんなことを考えていたとは思ってもいなかった。
よもぎ:「そんなこと……どうして思うの?」
三郎次:「……お前は優しくて、賢くて、みんなに慕われる。俺はただのガキだったし、忍として強くなれる保証もなかった。でも、お前にはもっといい仲間ができるだろうって……。」 (自嘲するような笑みを浮かべる)
よもぎ:「……三郎次くん。」
三郎次の言葉に、よもぎは胸が締め付けられるような気持ちになる。彼はそんな風に思いながら、ずっと距離を置いていたのか——。
よもぎ:「いつでも話しかけてもいいよ、三郎次くん。」 (優しく微笑みながら、夜風に揺れる髪を押さえる)
三郎次はその言葉に一瞬驚き、じっとよもぎを見つめた。
三郎次:「……本当に?」 (戸惑いながら、けれどどこか嬉しそうに問い返す)
よもぎ:「うん。私たち、幼馴染だから。」 (柔らかく微笑みながら、三郎次の目をまっすぐ見る)
三郎次はしばらく黙り込んだ後、そっと視線を外しながら、小さく息をついた。
三郎次:「……バカだな、お前は。」 (照れ隠しのように言いながらも、どこか安心した顔)
よもぎの言葉は、三郎次の心に静かに響いていた——。
つづく