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「ん…」
勇斗の部屋のベッドで目を覚ます。
隣に眠ってる裸の勇斗の方に寝返りを打つ。
相変わらず寝相が綺麗だなあ…。
すっぴんの目元には少しだけクマがあって、唇は少し乾燥している。
自分の腕を枕にしてるみたいな格好でスヤスヤとまだ深い眠りについている。
「……雨…降ってるのか」
静かな室内に微かに聞こえる雨の音。
勇斗を起こさないようにそーっとベッドから降りて窓に近づいた。
「……どうりで」
起きた時、頭が重く感じたのはこの雨のせいだったのか。
後ろでゴソゴソと衣擦れの音がした。
「……仁人?」
「あ…おはよう」
「ん……いつ起きた?」
「今だよ」
寝室を振り返ってそう言った。
「…どした?」
「…雨だねー」
「あー。まじか」
「うん」
「…こっち、きて」
「…はいはい」
タンクトップの肌着とパンツ1枚の姿で立っていた俺を勇斗がベッドから呼ぶ。
「…ん。風邪ひいちゃうよ」
「…そうね」
近付くと手を取られベッドに引き戻された。
温かい勇斗の身体に潜り込むように身体を寄せた。
「仁ちゃん冷たっ」
「勇斗は…あったかい」
「そうでしょ」
「…うん」
俺が雨が嫌いな事を勇斗は知っている。
頭痛がする事も、気分がなんとなく沈む事も。
「…もう痛いのとか出てる?」
「…うん。少し」
「…じゃあ今日はどこにも出ないで良くない?」
「飯とかどうすんの?」
「うーん…ここから頼む」
「…たまにはそれでもいいかあ」
「うん」
「…頭いてえ」
「薬飲む?」
「うーん……なんか、食べてから」
「…布団、出たくないけど出るかあ」
「勇斗は寝てていいよ」
「ううん。俺も起きる」
「…そう?」
体に回された腕が言葉とは反対の動きをしてて笑う。
「じゃあはい、起きるよ」
「…はぁい」
抱き寄せてくる勇斗の腕を剥がして今度こそベッドから出る。
暖かい部屋着に着替えを済ませて俺はキッチンへと向かった。
…………
「これ使っていいやつ?」
「あー、いいよ」
「…うわ、賞味期限切れてんじゃん」
「まじ?あーまたやった」
「もー…冷凍庫は?」
冷蔵庫の中には僅かな食料しかないし、そのひとつは既に賞味期限が切れている。
こいつんちの冷蔵庫怖いな…。
昨日のうちにスーパー寄ってくれば良かった…。
「ねーやっぱなんか頼も」
「うん…」
「なるべく早いとこにするから!ね?」
「…わかった」
そう言うやいなや勇斗はスマホのアプリを起動した。
出前が届くまでの間、温かい飲み物を飲んでいた。
会話は少なめ。
隣の勇斗の身体に半身をくっつけてソファにもたれる。
「…」
「…大丈夫?」
「…うん」
どんよりした天気にどんどん頭痛が酷くなる。
あー……もう鎮痛剤飲んでしまおうかな。
でも胃が荒れるし……。
雨音が強くなっている気がする。
雷でも落ちそうな外の轟音と部屋の暗さに気持ちまで沈んでくる。
「…マッサージしようか?」
「うーん……お願い」
「おっけ」
その言葉に甘えて背中を向けると、首の付け根に勇斗の温かい指が触れてゆっくりと押される。
「んーーー……」
「痛い?」
「…ううん」
「…」
少し窪んだそこを親指と中指でぐうっと上に押し上げる。
「あー……きもちい」
「そ?よかった」
「うんー……」
「…」
そのままマッサージが続けられて…少し頭痛から気が逸れて体がリラックスしてきた。
「はあ……」
「…」
──ピンポーン
「あ」
「ご飯きたね」
「ん…」
「いいよ、俺取ってくる」
……頭は変わらず痛いのに、触れられた首筋が熱い。
玄関に向かった勇斗を眺めながら身体の中に少しだけ熱いものを感じていた…。
…………
「ご馳走さまでした」
「ごっつぁんでした」
「さて…薬飲も」
「うん、遅くなっちゃったね」
俺の頭を撫でる手をそのままに鎮痛剤をフィルムから出して、飲んだ。
「ふう…」
「これで良くなるといいけど」
「うん…」
少し心配そうな覗き込む顔にまたドキドキが蘇る。
……昨日も甘く濃厚な夜を過ごした。
恋人になってからの俺たちはあの日からそういう行為も当然のように、頻繁にしている。
確かに自分の身体が変わっていくのを毎夜感じる。
戻れなくて怖い、なんて事はもう思わない。
勇斗の望むものになってきているのだろうか、と思うだけでこの身体の変化も嬉しく思うのだから本当に…俺はこの男が心底好きなんだろう。
「少し寝る?」
「あー…うん、横になりたい」
「牛になるね」
「…いいんじゃない?」
「なりたかったもんね」
「…お前もな」
冗談を交わしながらベッドへ向かう。
「仁ちゃん、モーって言ってよ」
「いやだ」
「モー、より俺はー…にゃあの方が…」
「絶対言わねえ」
「ワンは言うでしょ?」
「言うけど、だからお前もな?」
「ふふ」
布団に滑り込んでぬくぬくとしながら軽口が止まらない。
少し薄暗い部屋のベッドは何故だかとても落ち着く。
さっきまでは薄暗い部屋と中途半端に、覚醒しなければと無理をしていたことに気付かされる。
昼間の布団、最高じゃん……。
「…眠い?」
「ううん…落ち着いたら起きる」
「予定もないし、今日はゆっくりしよう」
「うん……」
目を閉じると外の雨音と勇斗の気配だけがある。
静かな息遣いを感じて、ふっと意識が沈みそうになる。
「…っ」
額に少しぬるい手のひらが当てられる。
…寝落ちしそうだった。
その手は髪をかきあげるように移動して頭を撫で始める。
「よくなーれ」
「…」
少し掠れた低い声と幼い言葉遣いがミスマッチで愛しさが込み上がる。
薄らと目を開けて横目で勇斗を見た。
「……お前のことすき」
「…え」
「…めっちゃすき」
「…」
頭を撫でる手が止まる。
少し笑ったようで少し驚いた顔。
「…俺もすき」
目線が少し泳いだ後にまた俺に戻って、そう言った。
また目を閉じると少し躊躇った手がまた、頭を撫で始めた。
…………
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