テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第100話 〚理由は、顔に出る〛
― 海翔視点 ―
澪が、
先生に呼ばれて教室を出ていった。
それだけなら、
特別なことじゃない。
でも――
戻ってきた澪の顔を見て、
全部分かった。
(……聞かれたな)
泣いてはいない。
取り乱してもいない。
なのに、
何かを全部話してきた人の顔だった。
肩の力は抜けているのに、
目だけが少し遠い。
これは、
軽い話じゃない。
「帰ろ」
俺は理由を聞かずに言った。
澪は一瞬だけ驚いて、
でも何も言わずにうなずいた。
帰り道。
ほとんど会話はなかった。
ただ、
澪の歩幅が
いつもより少しだけ遅い。
それだけで、
胸の奥が重くなる。
澪の家の前。
「……ありがとう」
小さな声。
その一言で、
確信した。
(もう、俺一人じゃ足りない)
ドアが閉まるのを見届けてから、
俺は学校へ戻った。
⸻
放課後の教室。
集まったのは――
俺。
玲央。
湊。
えま、しおり、みさと、りあ。
それから、
俺の友達三人。
・やたら鏡を見るナルシスト
・どこにでもいそうな普通のやつ
・軽そうに見えて空気を読むチャラいやつ
湊は、
壁際の席に座っていた。
いつものボケは一切なく、
完全に静かなモード。
でも、
目だけは鋭かった。
「単刀直入に言う」
俺は立ったまま言った。
「澪を守る人が、
もっと必要だ」
一瞬、
教室が静まる。
真っ先に口を開いたのは、
えまだった。
「……やっぱり、
一人で抱えすぎだよ」
玲央も、
腕を組んでうなずく。
「前から思ってた。
お前、限界だったろ」
俺は否定しなかった。
そこで――
湊が、ゆっくり口を開いた。
「……澪は、
気づかれない方が楽なタイプだ」
全員が、
湊を見る。
「守られてるって
実感すると、
逆に苦しくなる」
その言葉に、
りあが小さくうなずいた。
「だから、
前に立つ人じゃなくて、
“近くに居る人”が必要」
ナルシストが、
珍しく真面目な声で言う。
「目立たずに、
逃げ道を作る感じ?」
チャラいやつが、
軽い口調のまま続ける。
「人数いた方が、
変な行動しづらくなるしな」
普通のやつが、
短くまとめた。
「囲むんじゃなくて、
“居る”だな」
――それだ。
俺は、
湊を見る。
湊は、
少しだけ目を伏せてから、
小さくうなずいた。
「……俺も、
近くに居る」
その一言は、
派手じゃない。
でも、
一番信頼できる言葉だった。
「……頼む」
俺がそう言うと、
誰も笑わなかった。
全員、
同じ方向を見ていた。
守るって、
前に立つことじゃない。
選べる道を、
減らさないこと。
一人にしないこと。
この教室にいる全員が、
同じ側に立った。
それだけで、
少しだけ――
息がしやすくなった。