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「急用が入ったって言ってた。でも急用ってなんだろう?」
船橋は首を傾げていた。
「男じゃないの?」
「やっぱそうなのかな?」
女子は、直ぐこれだ…。
「紺野くんは、どう思う?」
船橋と増田の話を聞いていた、僕の右斜め前の席の仲村有紀が僕に問いかけてきた。
「わかる訳ないだろ」
仲村とは中学2、3年の時同じクラスで、S高校に入学してからも縁があるらしく同じクラスになった。
見た目は、痩せ型で肌は色白、目は細く顎にある小さなホクロが妙に色っぽかった。
初めて会った時の第一印象は“猫っぽくてかわいい”だった。
また、髪は肩まであり赤みをおびていた。
そんなんだから、仲村をよく知らない先生からは“髪を染めてるんじゃないか?”といつも疑われていた。
また何故か仲村は、中学の頃からいつも僕の身近にいて、事あるごとに僕に話しかけてきた。
そんな感じなので、周りからは仲村が僕の事を好きだという噂が広まった事もあった。
だけど…不思議と嫌な気はしなかった。
と言うより、まんざらでもなかった。
だけど僕は、中学の頃から仲村に対して冷たく素っ気ない態度をとってきた。
理由などない。
仲村を前にすると知らずにそういう態度になっていた。
「また、そんな言い方して…‥」
でも仲村は、いつもそんな僕の態度に怒る事なく笑顔で答えてくれた。
それにしても、葵さんのあの慌てようは何だったのだろう?
それに葵さんの様子をわかっていたような亜季さんの発言も気になる。
それから僕は、亜季さんと待ち合わせしていた下駄箱に向かった。
「お待たせしました」
亜季さんは、既に靴を履いて待っていてくれた。
「私も今来た所ですよ」
笑顔で答えてくれた。
そして僕も靴を履き、亜季さんと校舎から出ようと歩き出した。
「紺野くん…‥」
僕を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、部活に向かおうとしている仲村の姿があった。
「仲村…‥」
「佐藤さん…だよね?」
仲村は僕と亜季さんを交互に見ながらそう言った。
どうやら仲村は、葵さんに双子の妹がいるのを知らないらしく、勘違いしているようだった。
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