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「あの…私、佐藤葵の双子の妹で亜季と言います。以前、紺野さんの家の近くに住んでいた事があって、ちょっとした知り合いなんです。付き合ってるとかいう訳じゃありませんよ」
亜季さんはそう言うと、何か言いたげに僕を見た。
「まっ‥まぁ、そんな所だよ」
「そっか、そうなんだ」
すると仲村は嬉しそうな顔をした。
「わかったんなら、早く部活に行けよ!」
「うん、そうだね」
そして、バレーボール部の仲村は部活のある体育館に向け走り出した。
「何か気を使わせちゃったみたいで、すいません」
「そんなつもりじゃ…ただ紺野さんが、少しばかり気まずそうだったので…‥」
そんな顔してただろうか?
「はい」
「えっ…何が?」
「いえっ…別に何でもないです」
「はぁ…‥」
時々、亜季さんとの会話が噛み合っていないと感じる事がある。
それから僕と亜季さんは、とりあえず駅を目指して歩いた。
「亜季さんは部活は何かされないんですか?」
「部活ですか…たぶん何もしないと思います」
「どうしてですか? 亜季さんて元気いいし、運動神経良さそうだし、何かすればいいのに…」
「運動も好きだし、やりたいんですけど、習い事をいくつかしているので無理なんです」
亜季さんの暗い表情から、何か訳ありな感じがした。
ずっと何かを我慢してきたんだとわかった。
「実は僕も部活やってないんです」
「どうして?」
「亜季さんも僕と話してわかってきたと思いますけど、僕って愛想がないし、素っ気ないし、感情を表に出さないじゃないですか。人と話すのも好きじゃないし…だから団体行動とか無理なんです」
「まぁ、確かにそういう所もあるかもしれませんけど…。でも紺野さん本当は優しい人じゃないですか。私にはわかります。仲村さんも紺野さんの事わかっているから、ずっと惹かれ続けているんだと思いますよ」
僕が優しい?
自分ではそうは思ってはいないけど…。
正義感は強い方だし、困っている人がいたら助けてあげたいし、世界中で戦争がなくなり、みんなが笑顔でいられる世の中になる事を切に願っているし、その為に自分が出切る事があればさせてもらいたいと思ってはいるけど…。
この思いが優しい人だというのかは僕にはわからない。
「それって愛です。優しさですよ」
「はぁ?」
それと亜季さんの言葉で気になったのは、仲村が僕に惹かれているという言葉だった。
「仲村さんを見てればわかりますよ。気付いていないのは当の本人だけかもしれませんけど…‥」
仲村が僕のことを…そんな訳ない。亜季さんの思い違いに決まってる。