第一章 止めて、止めて、止め続けて。
もう、随分の人に声をかけ、随分の人を追い返した。
でも、私の悩みを聞いてくれる人はいなかった・・・いや、自分が話さなかった。
私の悩みを話したところで、理解してくれる人などいないのだ。
「・・・今日も死ねなかったな」
静かに帰路につく。
昇降口についた、そのときだった。
??「あっれ〜?雪禰じゃん、なにしてんの〜?w」
「み・・・実希夏さん」
実希夏「ん〜?」
実希夏「誰が下の名前で呼んでいいと言ったの?」**
「・・・・・ッ! ご、ごめんな 」
私は実希夏に腹パンをされ、床に這いつくばった。
実希夏「ま、いいや。」
実希夏「単刀直入に言うんだけどお金ちょうだい」
「持ってない、です」
実希夏「嘘でしょ〜」
実希夏は私のカバンを奪い取ると、中を覗き込んだ。
実希夏「あらま、本当にないじゃん・・・」
実希夏「じゃ、いいや。待たね」
実希夏「 」
「・・・・・ッ」
実希夏は私の耳元でそうささやくと、私のカバンをゴミ箱に放り込み、去っていった。
母親「あぁ、帰ってきたんだ」
「・・・・・ッ ただいま帰りました・・・」
母親「あんたなんか、帰ってこなくてよかったのに」
「・・・・ッ 申し訳ございません・・・」
母親「まあいい。荷物をおいたら『下』に来い」
「・・・・・はい」
母親「来たわね。じゃ、ワンセットいきましょうか」
「・・・・・ッ」
ボカッゲシッ ゲシッゲシッ ボカッボカッ
どれほど経っただろうか。
私は殴られ、蹴られ、無数に痣や傷を増やした。
母親「ふう。こんなところかしらね。じゃ、ご飯つくっといて」
「はい・・・・・」
その夜、私は夢を見た。
本当は思い出したくもない、過去を映した夢だ。
???「雪禰〜、早くおいでよ〜」
「待ってよ、雪亜姉ちゃん!」
私には、三歳上の兄がいた。
母は女子を望んでいた。
母に殴られないため、よく女装をしていた。
・・・その場しのぎにしかなっていなかったが。
ある日のことだった。
雪亜兄ちゃんはひき逃げにあって死んだ。
しかも、私を庇って。
その時から、母は本格的に狂ってしまった。
時間があれば私を罵り、暴行を加えるようになったのだ。
雪亜兄ちゃんは完璧な人だった。
出来損ないの私とは違って。
母は事あるごとにこう言うのだ。
〈雪亜が生きてればよかったのに〉
それについては、私も同感だった。
私は中学のとき、恋をした。
趣味も一緒で、虐待されている私にも優しい。
まさに運命の相手だと、そのときは思った。
ある空き教室でのこと。
その人と実希夏が話しているところを、私は聞いてしまった。
実希夏「ねぇ〜、なんであんなやつと仲良くすんの〜?」
甘ったるくて耳障りな高い声。
その人は言った。
彼「決まってるだろ、罰ゲームだよw」
罰ゲーム。
その人は私がいたことに気付いていたのかいないのか、言葉を続けた。
彼「あいつの背中の傷写真を撮ってこいっていうやつ!w」
騙された。
彼にとって私は、約束を守るための手駒にすぎなかったのだ。
それを知った私は、彼を突き放した。
反抗的な態度を見て、彼は豹変した。
まあ、当然のことだが。
その日から、私はいじめられるようになった。
・・・もう、私に・・・居場所などないのだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!