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短編集1話目の♥️さん視点
需要あるかわかりませんが書けたのでとりあえず置いておきます
深夜2時。
天井を見つめたまま、何度もりょうちゃんとのトーク画面に「来て」と打っては消していた。
りょうちゃんとは、俺から告白して3ヶ月ほど前から付き合い始めた。
彼は優しくて、いつだって俺のことを気にかけてくれる。
以前は闇に飲み込まれそうになると若井と2人で来てもらって、夜通しゲームをして気を紛らわせていた。
2人のおかげで何とか自分を保っていられたんだ。
でもある日、俺たちの関係を知った若井から、
「これからお前のことは、涼ちゃんに任せるからな」と言われて、それからは呼び出すのはりょうちゃんだけになった。
……でも、恋人だからって、さすがにこんな時間に呼び出すのは迷惑だろう。
わかってる。
彼に甘えすぎている自覚もある。
でも、もうどうしようもなかった。
虚無感と孤独に押し潰されそうで、ベッドにいても心臓がずっと早鐘のように鳴っていて呼吸が苦しい。
どれだけ仕事で結果を出しても、どれだけ褒められても、
それが「生きる意味」にはならなかった。
心が空っぽで、自分がどこにもいない気がした。
苦し紛れに、もう一度「来て」とだけ打って、思い切って送信ボタンを押した。
すぐに「わかった。すぐ行く」と返事が来たとき、自然と涙があふれた。
りょうちゃんは、俺の一番苦しい瞬間に、必ずそばにいてくれる。
しばらくして部屋のチャイムが鳴る。無言でオートロックを解除する。
エレベーターの音がして、再びインターホンが鳴った。
ドアを開けると、りょうちゃんが立っていた。
いつもの穏やかな笑顔――でも、その目には隠しきれない不安が浮かんでいた。
「ごめん、こんな時間に……」
自分の声が情けなく震えるのがわかる。
でも、りょうちゃんは何も言わずに俺を抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ。僕はここにいるから」
その一言が、壊れそうな心に温もりを染み渡らせてくれる。
りょうちゃんの手を引き、リビングへ移動してソファに座る。
そのまま彼の膝に頭を預け、ぎゅっと服の裾を掴む。
普段の俺なら、こんな甘え方なんて絶対にしない。
でも今日は、プライドなんて要らなかった。
闇に飲み込まれて、壊れてしまいそうだったから。
髪を撫でる彼の手が、ひどく優しい。
その温もりに、心が少しずつ緩んでいく。
「眠れないんだ……」
「うん、わかってる」
無理に理由を聞かない、その優しさが何より嬉しかった。
俺は胸の奥に押し込めていた言葉を、静かに吐き出す。
「俺さ、なんで生きてるんだろうって、たまにわからなくなるんだ。
仕事でどれだけ頑張っても、たくさんの人に評価されても、一人になると、どうしようもなく虚しくなる」
この言葉を誰かに言うのは、初めてだった。
だけど、りょうちゃんは静かに受け止めてくれた。
「元貴が頑張ってること、僕も若井もちゃんと知ってるよ。元貴がどんなにすごい人か、僕たちは誰よりもわかってる。だから、一人で頑張ろうとしなくていいんだ。辛いときは、もっと頼って。どんなときでも、僕たちは元貴の味方だから」
この人の言葉は、俺の痛みに真正面から触れてくる。
そこに嘘も飾りもないから、こんなにも沁みる。
「りょうちゃんの身体、ポカポカしてる。なんか、すごく安心する……」
その言葉を口にしたとき、不思議と胸の奥にあった重たいものが、少しだけ溶けていく気がした。
りょうちゃんの膝の上――この場所は、世界で一番安心できる場所。
誰にも見せられない弱さも、ここなら素直にさらけ出せる。
そばにいてくれるその存在があるだけで、人は救われる。
壊れそうな夜に誰かの温もりがあれば、朝はきっとやってくる。
眠れなかった夜が少しずつ遠ざかっていく。
俺は訪れた眠気に逆らわず、優しい温もりに包まれてそのまま目を閉じた。