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#ROBLOX
ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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それは本当に些細なバグだった。
いつものように通話しながら作業していた夜。
脆弱性の調査だとか、新しいコードの実験だとか、内容はもう二人とも覚えていない。
覚えているのは。
その夜の静けさだけだった。
⸻
『じゃあ後で』
「ん」
『終わったら送る』
「了解」
通話が切れる。
はずだった。
少なくとも二人ともそう思っていた。
だが実際には切れていなかった。
通信ツールの不具合。
小さなバグ。
それだけの話だった。
そして。
二人とも気付かなかった。
⸻
十分後。
セブンは黙々とコードを書いていた。
部屋は静かだった。
モニターの光。
ファンの回転音。
キーボードを叩く音。
それだけ。
ふと。
イヤホンの向こうから似た音が聞こえた。
カタカタ。
カタカタ。
規則的な打鍵音。
一瞬だけ眉をひそめる。
それから思い出した。
「あ」
通話。
まだ繋がってる。
切り忘れたらしい。
セブンはウィンドウを確認する。
確かにNoliの名前が表示されていた。
切ろうと思った。
思ったのだが。
その時。
向こうから小さな舌打ちが聞こえた。
『……違うな』
独り言だった。
誰かに聞かせるつもりのない声。
そしてまた。
カタカタ。
カタカタ。
作業が再開される。
セブンは何となく通話を切らなかった。
⸻
三十分後。
まだ誰も喋っていない。
普通なら気まずくなる。
沈黙を埋めたくなる。
だが不思議とそうならなかった。
聞こえるのは。
キーボードの音。
マウスのクリック音。
時折漏れる小さな独り言。
それだけ。
なのに。
妙に落ち着く。
セブンはコードを書きながら気付く。
今Noliが何をしているか。
なんとなく分かる。
「ああ」
思わず呟く。
そのタイミングで。
向こうの打鍵音が急に速くなった。
まるで。
同じ結論に辿り着いたみたいに。
セブンは少し笑う。
⸻
さらに二十分後。
Noliも異変に気付いていた。
通話が繋がったままだと。
だが切らなかった。
理由はよく分からない。
ただ。
心地良かった。
セブンのキーボードの音。
考え込んだ時の沈黙。
何か閃いた時に少しだけ速くなる打鍵。
全部聞き慣れていた。
まるで同じ部屋で作業しているみたいだった。
『……はは』
小さく笑う。
返事はない。
だが。
少し後に聞こえたセブンの打鍵音が微妙にリズムを変えた。
それだけで伝わる。
何となく。
意味もなく。
伝わってしまう。
⸻
一時間後。
ようやくNoliが口を開いた。
『なあ』
静かな声だった。
セブンも手を止めない。
「なんだ」
『まだ繋がってるぞ』
「知ってる」
数秒。
沈黙。
そして。
『知ってたのかよ』
「お前もだろ」
『まあね』
二人とも少し笑った。
大笑いではない。
本当に小さく。
夜を壊さない程度に。
Noliは椅子にもたれた。
天井を見る。
モニターの光が部屋を照らしている。
『変だな』
「何が」
『一時間以上喋ってない』
「そうだな」
『普通つまらなくない?』
セブンは少し考えた。
そして。
「別に」
と答える。
また静寂。
だが今度は少し違う。
心地良い静寂だった。
Noliは目を閉じる。
そして笑う。
『たぶんさ』
「ん?」
『お前が何考えてるか、だいたい分かるからだろうな』
セブンは何も言わなかった。
否定もしない。
肯定もしない。
その沈黙自体が答えだった。
Noliはさらに笑う。
満足そうに。
嬉しそうに。
『気持ち悪いくらいだ』
「同感だな」
『だろ?』
二人はまた作業に戻る。
キーボードの音だけが響く。
カタカタ。
カタカタ。
まるで会話みたいに。
言葉はない。
必要もない。
コードを書いて。
バグを追って。
思考を組み上げていく。
そのリズムが自然と重なっていく。
まるで一つのプログラムを二人で動かしているみたいに。
後になって。
大規模な事件も。
派手なハッキングも。
世界中を騒がせたショーも。
二人は数え切れないほど経験することになる。
けれど。
Noliが時々思い出すのは。
案外そんな日ではなかった。
ただ通話が切れなくて。
一時間以上無言で。
キーボードの音だけを聞いていた夜。
世界でたった一人だけ。
自分と同じ速度で思考できる人間がいるのだと実感した。
あの奇妙で静かな夜のことを。
Noliは密かに、
誰にも言わず、
少しだけ特別な思い出として覚えていた。
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