何故、こんな事になってしまったのだろうか。
そう思い過去を遡ってみると、私の呟きからこの行為は始まった。
「良いよな、お前は母親の胎内で温もりを感じて産まれてきたのだから」
こう思った原因は解らない。
ただ、人のぬくもりを知らない私にとっては、其れは何よりも羨ましく尊い物だった
「、、、、、じゃあ、味わってみる?私の体温」
挑発するように徐ろにシャツを乱雑に脱ぎ捨てるゴーゴリの上半身が顕わになる
私は吸い込まれる様に彼の純白を覆い隠す
ほんのりと柔いミルクの香りが香る彼の身体は心地良くて、
もっと、もっと、と私は彼を求めた。
くすりと赤ん坊を見るように微笑んだゴーゴリは男の癖にまるで母親にでもなったみたいで黙って私を受け入れた
__________私が取り出したナイフで切り付けられても
使う事も無いが何となく護身用に持っていた
ミリタリーナイフ。
其れによって初雪の様な白が切り裂かれ、真っ赤な花が流れ落ちる
彼の血液が、臓物が私を温めて。
剥き出しになった其処へと喰らいつく様に私は抱き着いた。
痛みに顔を歪めるゴーゴリはよしよしと私の頭を撫で下ろす
五月蝿い位に高鳴りぐちゃぐちゃに混ざり合う心音が、
苦し紛れに、でも心配させまいと無理矢理微笑む唇が、
愛おしくって、狂おしくって。
信じられない位に昂る感情と口角の儘、彼に宣告をした
「戴きます。」
其れは彼にとっては即ち”死”を表していた
生暖かく生温い其れに濡れた身体中で膨らむ腹を、彼を撫でた
人間はゴムの様な味がすると言うが彼はそんな事無く癖が無くすんなり喉を通った。
噫、此れが、、、、、、この愛おしさが”愛情”なのか
彼が私の血肉となり、永久に共に生きられる。其れが最も喜ばしくて
もう逢えない事だけが只、心苦しくて、、、
私はもう持ち主を失くし遺されたアイパッチを手に取り、
自身の片眼に身に着けてみた。興味本位だった。
今もまだ遺された残り滓が私をまるで宥める様に、
ふわりとほんのり全身を包み込んで、その甘ったるい香りに呑み込まれてゆく、
酷く暖かくて先程とは全く違うこの愛おしさは、
ふと笑い出してしまいそうなほどの頬笑ましさは、何なのだろう。
ずっと其れだけを考えて、やっと、、
「嗚呼、今になってやっと気付けた
そうか。此れが、”恋心”だったのか。」
腹の奥底に睡る君が、ほんの少し微笑んでいる気がした。