___耳につく蝉の鳴き声が少しずつ収まってきた頃。
僕はネット世界から姿を消した。
動画投稿も休止し、他のSNSの更新も全てストップ。
理由はいくつかある。
私生活の部分で多忙になり、毎日動画投稿していくのが苦しくなったこと。
あまり代わり映えのしない反応に少し疲れてしまったこと。
今は身体も心も休ませようと思っている。さながら冬眠のように。
夏なのに冬眠なんておかしいなと笑っていたら、インターホンが鳴った。
宅配なんて頼んでいたかな、ドアを開けると、
「栖跊くん!」
なんだか久しぶりに声を聞く、明るい友人の姿があった。
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来てくれた友人の凪炉くんに、飲み物を差し出して2人でソファーに掛けた。
凪炉くんが嬉しそうにサイダーを口に含み、飲み込んだタイミングを見計らって切り出した。
「凪炉くん、今日はどうしたの?」
「んー、栖跊くん元気にしてるかなって思ったら会いたくなっちゃって!」
凪炉くんが少し恥ずかしそうに笑う姿に可愛いな、と思った。
さすが癒し系担当。リアルでもレベルが違う。
「そっか、えっへへえ、嬉しいなあ…」
「栖跊くんが元気そうで良かったけど、まだ疲れは残ったりしてない?」
いきなり図星を突かれて、うっ、と呻き声を上げてしまった。
正直、まだ疲れはある。用事が片付いた訳でもないし。
「…うん、疲れることもあるし、あんまり眠れないこともあるかな」
「ほんと?じゃあ今日来てよかった」
「え?」
「あのさ、栖跊くん、」
「僕と一緒に旅行行かない?」
コメント
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こはちゃんのお久しぶりの小説最高過ぎる!!✨