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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ノアは現在、きらびやかなお城のとある一室で、人生の岐路に立っている。


絶滅危惧種となったはずの魔法使いが絶賛活躍しているハニスフレグ国の王妃になるか、ならないか──という選択を前にして。


ここハニスフレグ国は、独自の魔法文化のおかげで技術水準ならびに生活水準が非常に高く、他国と比べると経済発展が大きく進んだ国である。


そんな魔法大国の唯一無二の花になれる……かもしれない。


運よく王妃になれば、国中の女性から羨望と嫉妬と憧憬の眼差しを一挙に浴びることになる。そうなったら玉の輿どころではない。勝ち組確定。贅沢三昧の左団扇の生活が待っている。


しかしノアは、そんなものは望んでいない。控えめに言って、ナシよりのナシだ。


そして次期ハニスフレグ国を統治する王太子も、同じ気持ちのようだった。


「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」


この世でもっとも汚いものを見るような目付きでそう言い捨てたのは、ハニスフレグ国の王太子であるローガンだった。


(だよねー)


ノアは思わず頷いてしまった。まったくもって同意である。


こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ。


それに、ノアは醜女とは程遠い容姿である。


神秘的なブルーグレーのつぶらな瞳に、花びらのような唇。陶器のような滑らかで透き通った肌に、頬紅を必要としない薔薇色の頬。


強いていうならクセの強い錆色の髪だけはからかわれることが多いが、それでもレディッシュブラウンだと言い張れば、個性の一つとして受け入れられる。つまり、可愛いのだ。


現在、やむを得ない事情でボロボロの状態ではあるが、手入れをきちんとすれば、誰もが認める美少女なのである。


対して、ローガンはどうかというと、ノア基準からすれば十人並みの容姿だ。


成人してもなお残るそばかすと、無駄に太い眉は、彼の底意地の悪さを表している。


短く刈り上げた赤髪も、ゴツいローガンの体型に似合ってはいるが、相手を威嚇するライオンみたいで好きじゃない。銅色のぎょろ目も爬虫類みたいで、嫌悪感を持ってしまう。


(古今東西、王子様つーのは美形なのがお約束だと思っていたけれど、例外もあるんだな)


世界に誇る魔法大国であっても、王太子の容姿を美形に変えることは不可能らしい。とても残念だ。


もしかしたら、当の本人は魔法など必要ないと思っているのかもしれないが。


それならまさに裸の王さまだ。客観的に自分を見れない男が統治者になるなら、この国の未来は明るくない。


なぁーんてことを、ノアが頭の中でつらつらと考えていても、ローガンはまったく気づかず、思い付くまま罵詈雑言を吐いている。


それらを全身に受けながら、ノアは、なんでこんなことになっちゃったのかなぁと、溜め息を落とす。


そして、わめき散らすローガンから目を逸らし、こうなってしまった経緯を思い出してみた。





ノアには、両親はいない。いわゆる孤児だ。


王都から少し離れた小さな村の、これまた小さな孤児院で、乳飲み子の時代からお世話になっている。


孤児院の責任者であるロキは、聖母というよりは、聖母をイビる姑のような鬼ババア寄りの存在ではあったが、それでも人並み以上の愛情を注いでくれた。


そのお陰でノアは、読み書きを覚え、大病することも大ケガもすることなく育ち、16歳を迎えた。


このまま孤児院を卒業して、村で働き、恩を返していくものだと思っていた。しかし、つい昨日のこと、夕飯のおかずを確保するために森に入った途端に、人さらいにあったのだ。


山賊でもなければ、奴隷商人の三下でもない。真っ青なマントをはためかせた、王宮騎士団に。


他の国の事情は存じ上げないが、ハニスフレグ国において王宮騎士は、なかなかの高給取りである。なりたい職業ランキング(青少年部門)なら、常に二位をキープしている花形職業だ。


ちなみにダントツ一位は魔術師である。ただ、近々魔術師は殿堂入りする予定なので、そうなると繰り上げで王宮騎士は一位となる。


そんなエリート街道を突っ走っている騎士が、貧乏孤児院の娘を売って、小銭を稼ぐわけはない。


ノアをさらったのは、王命だったからである。

盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

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