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俺は家族の為なら、世界なんてどうだって良かったんだ
人類の領土や、巨人から受けた屈辱なんて
どうだっていい
歯向かってもまた失うものが増えるだけだ
良い加減気付け
永遠に続く安寧の為に戦うより
脅かされながら暮らす今の生活の方が
よっぽど幸せだった
だって
世界は残酷で
俺は愚かだったから
俺はミロアの耳を布で止血した後
瓦礫の下からジュニーを引き摺り出した
…良かった、まだ息がある
ジュニーなら
ジュニーだけならなんとか
俺はもう走れない
託すしかないんだ
ミロアに
「おい、おい!起きろ!」
『うっ…』
血が足りないのは分かってる
でもまだ意識があり
お前は走れる
充分だ。
「ミロア。ミロア良く聞けよ。今しかない。お前とジュニーはきっと生き残りのヘリスになる。俺達の分まで、お前達が翔べ」
突然の言葉にミロアの表情は固定される
だけどもう時間がない
俺は絶えず言葉を紡ぐ
「この瓦礫をジュニーと抜け出したら真っ直ぐ走れ。兵士に会うまでただ走るんだ。巨人と遭遇しても足を止めるなよ。俺はもう走れない。置いていけ。お前が行くんだ。」
『待っ、待ってよ、あたし…』
漸く状況と俺の言うことが分かったのか、戸惑いを隠せない様子だった
愚図っている余裕はとっくに無い
…最後の喧嘩だな
また、大声を出すべきだと思った
「ジュニー連れて逃げろっつってんだよ!!」
ミロアは俺の声に涙を拭った
そして踵を返して走り出す
そうだ、それでいい
生き残れ
どうか、何千年でも
「母さん、母さん?」
「……ノーラン」
瓦礫に埋もれた母に声を掛ける
予想通り、まだ生きていた
「大丈夫。ミロア達はちゃんと逃げたし、俺も一緒に母さんと死ぬよ。ごめんな、この瓦礫はどかせなかった」
「…どかせても走れやしない。それにもう、どうせ長くなかった」
「逃げろとか、言わねぇのか」
「ノーランだって、多分もう走れないんでしょ…私には分かるわよ。それとも言って欲しいの?」
「いいや。そういうんじゃなくて…」
「フフ…冗談よ」
迫る巨人の足音がした
嗚呼、死が近付いて来る
「ねぇ、ノーラン 」
「ありがとうね。」
「、」
俺もだよ 母さん
この時、やっと自分の気持ちが分かった
俺の夢なんてとうの昔に諦めたが
ただ幸せに家族と暮らしたかったんだ
神様
どうか、俺の家族を
ミロアを、護ってください