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「どうして、お兄さんの事が好きだったのに、律と付き合ったりしたんですか? お兄さんに彼女が出来た時、律に優しくされたから?」
「そ……それは……」
「……私、律から話を聞いた時、貴方の事、すごい腹立たしく思った。思わせぶりな事して、律を傷付けて……結局お兄さんと結婚までしちゃうとか……律の事を何だと思ってんのかなって思いました」
私が責め立てるように言ったからか、鈴さんは唇を噛み締めたまま俯き何も言い返して来ない。
「律を苦しめて楽しい? 少しでも悪いと思ってるなら、律に会いに来ないで下さい。今は私が律の彼女だし、私が律を幸せにするから。だから、私たちの邪魔をしないで下さい」
言い返して来ないのが余計にムカついた私はこれでもかと彼女を責め続け、もう会いに来ないで欲しいと告げる。
正直、これは私が決める事ではないのは分かってる。
でも、もしかしたら心の奥では律も鈴さんに会いたいと思ってるかもしれない。そんな不安があるからなのか、これ以上姿を見せて律の心をかき乱さないで欲しかったの。
そんな私の気持ちが伝わったのか、
「……そうよね。ごめんなさい。貴方の言う通りよね。もう、来ないわ。さようなら」
申し訳無さそうな表情を浮かべた鈴さんはそれだけ言うと、私を残して走り去って行った。
(……これで、良かったんだよね……? でも、こんなにも不安になるのは、どうして?)
言いたい事は言えたし思い通りの展開になったはずなのに、私の心は何故だかザワついて不安が拭えずにいた。
公園を後にした私が律のアパートに向かうと、部屋には誰も居なかった。
「あれ? コンビニにでも行ったのかな?」
ベッドの上にスマホが置いてあるのを見つけた私はコンビニに煙草でも買いに行ったのだろうと思い、ささっと部屋を片付けてから寛いで律の帰りを待っていた。
「……律、遅いなぁ」
コンビニまでは徒歩で十分くらいだし、スーパーだとしても同じくらいの距離だからそんなに時間がかかることは無いはずなのだけど、私が来てから既に三十分が経っているから流石に遅いと思ってしまう。
その時、私の頭にあることが過ぎった。
(……もしかして、鈴さんに、会った?)
どうしてもっと早くに気付かなかったんだろう。
彼女とはアパートからそれ程遠くない公園で私と話をして、私よりも先に公園を出て行った。
あの時、私の言葉に納得してくれたから大丈夫かと思っていたけど、帰り際、偶然コンビニかスーパーに行こうとしていた律と遭遇する事は充分考えられたのだ。
「……嫌だ、律……」
居ても立ってもいられなくなった私はスマホと鍵だけ握りしめると、すぐにアパートを出て律を探しに向かった。
外に出ると、雲が厚くて暗くなりつつあり、今にも雨が降り出しそうだった。
(早く行こう)
傘を持ってこようか一瞬迷ったけど、一刻も早く律に会いたかった私は引き返す事無く探しに出て行った。