本編4,700字程度
※注意※
・白布×五色のお話です
・医パロ&死ネタです
・口調迷子の可能性有り
・一話完結です
※完全捏造なので、解釈違いや公式との設定違いがあるかもです
設定↓
・白布→医者
・五色→患者
・年齢はどちらも20代
・白布と五色は同じ高校出身じゃないです
・白布の働く病院は宮城です
それでも良ければどうぞ!
白布→「」
五色→『』
その他→[]
白五 / 私は明日死ぬだろう
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白布side.
少し、昔の話をしようと思う。
あれは、俺が医者になってすぐのことだった。
俺が働く病院で仲良くなった患者が1人いた。
その患者は重い病気で、殆ど外に出たことがなかったからか、友達と呼べる人は俺だけだったらしい。
そして、その患者の容態が悪化した日。
俺は医者なのに、友達なのに何もしてやることが出来ず、ただ患者の命が尽きる瞬間をその場で見守った。
…分かってる。
あれは俺の落ち度じゃない。
今の医療じゃ限界で、どう足掻いても助からない病気だったんだ。
でも、その時何となく気付いたんだ。
俺は、とてつもなく無力だと。
そこからだ。
患者と仲良くなるということは、後々自分が辛くなることだと考え、患者と自分との間に一線を引くようになったのは。
それから2年ほどたった冬の日。
俺は五色 工という白血病を患った患者を担当することになった。
すでに病気は末期まで進んでいて、春まで持つかも危うい。
きっとそれは、患者自身も分かっていることだろう。
初めて会った時は笑顔が眩しいやつだと思ったが、今じゃいつ消えてもおかしくない程に、弱々しい笑顔しか浮かべなくなってしまった。
綺麗だと思った艶やかな髪も、薬の影響で全て抜け落ちてしまった。
五色のする話は八割がバレー関連だ。
五色は俺より歳が一つ下で、俺と同じでバレー部だったらしい。そして、バレーのポジションは俺がセッターで、五色がウイングスパイカーだった。
二年生の頃からエースを任されていたとか全国に行ったとか言う昔の話から、あの高校は今でも鉄壁のままなんだとか言う今の話まで、親族が会いに来れない時間、俺は五色の話を聞き続けていた。
そんな日々を過ごしていくうちに、五色の親族は忘れたかの様に、全くもって五色の病室に顔を出さなくなった。
そして、親族が来なくなった五色に話し掛けてくる人は、食事を運んだり、身の回りの世話をする看護師たちだけになった。
でも、それらの人は世間話はするものの、必要以上に五色との会話をしない。
言ってしまえばその人たちはただ、自分の仕事をこなしているだけだからだ。
院内に五色と趣味の合うヤツなんてそうそういない。
いやでも、俺は合っちまったんだけどな…。
まぁ、結局俺はまたあの時と同じ過ちを犯している。
「五色〜、検査行くぞ〜」
『はい!』
ここで言う検査は、白血病が悪化してないかを診るためのものだ。
俺はいつも通り、五色の体に異変がないかを隅々まで調べた。
そして、その検査の結果が出るのは次の日。
俺は検査結果を朝イチで五色に伝えに行く。
「検査結果、良い感じだってよ」
『ありがとうございます!』
「何に対してだよ笑」
『…検査結果に対してです!!』
「はぁ…」
『白布さん!?』
「じゃあ、また開いてる時に来るな」
『えっ、はいっ!』
死んで欲しくない、と心から思う。
でもこれは、俺が医者でアイツが患者だから。
ずっとそう思ってきたんだ。
でも、最近になって気が付いた。
これは医者とか患者とか関係なく、ただ五色のことが好きなんだと。
果たして、医者が患者に対して恋愛感情を抱くことは許されるのだろうか。
それに、五色が助かる見込みは薄い。
もし俺が五色にこの感情をぶつけてしまったら、五色はどんなに苦しむだろうか。
最悪の場合、俺みたいなヤツに好かれるなら早く死んだ方がマシとか思われるかもな…。
まぁ、五色に限ってそんなことはないか。
でも、もしそうだとして、五色が自分から死を選んだら?
もしこの病院を抜け出して、行方を眩ませたら?
俺のせいでそうなったとしたら、俺は…俺はどうなってしまうんだろう。
そう考えると、どうしても伝えることを躊躇わずにはいられなかった。
医者は、患者の命を救う為に自分の命を賭けることはできない。
だから患者に対して、どことなく他人行儀になるのだろう。
患者を救うことができなくて初めて、俺たち医者は自分の無力さを痛感する。
だからこそ、医者は患者と本気で向き合うことができるんだと思う。
次は救ってみせる、守ってみせるって。
最近、五色の容態は確実に悪化している。
ここまで来るともう、俺には手を付けられない状況だ。
恐らく、あと一ヶ月も持たないだろう。
俺は、迷っている。
俺が抱いているこの恋愛感情を、五色に伝えるかどうかだ。
最後の日に言っても、五色を困らせるだけ。
でもどのタイミングで伝えたとしても、結局は俺の自己満でしかない。
だって、五色は優しいから。
たとえ俺たちが同じ気持ちだったとしても、これ以上生きることが許されない五色には、受け入れてもらえないだろう。
だったら、いっそのこと伝えない方がお互い楽なのではないか。
まぁ、今はただ五色といられるこの時間を大切にしたい。
それから三週間が経ったある日、バレーの話ばかりだった五色が花屋に行きたいと言った。
「なんで急に花屋?」
『いいじゃないですか!』
『綺麗ですし!』
「いやまぁ、ダメとは言ってねぇし綺麗だとは思うけど…」
『なら、一緒に行きましょうよ!』
五色はあと何日間生きられるのか分からない。
それだったら、今日くらい好きなことをさせてやっても良いんじゃないかと思った。
「はぁ…じゃあさっさと準備しろ」
『…!!』
『良いんですか!?』
「お前が行きたいって言ったんだろ」
『いや、そうですけど…!』
その後何やかんやあって、俺たちは病院から一番近い花屋へと歩き出した。
道中。
五色はいつもの眩しい笑顔じゃなくて、少し寂しそうな笑みを浮かべていた。
そんな五色に掛けてやれる言葉が俺には見当たらなくて、ただ黙って隣を歩いた。
暫くして、花の独特な良い匂いが鼻を掠めた。
『白布さん!俺ちょっと店員さんのとこに行ってきますね!』
「俺も着いてく」
『え!…いや、俺一人でも大丈夫です!!』
『何てったって元エースなので!』
「今エースとか関係ねぇだろ」
「急に倒れたりしたら大変だから、着いてくって言ってんだよ」
『どうしてもダメですか…?』
「…はぁ、じゃあさっさと行ってこいよ」
『…!!』
『はい!』
「あ、なんかあればすぐ叫べよー」
…何であんなに拒否されたんだ?
まぁ、誰にでも知られたくないことはあるか。
五色を待つ間、俺はキザったいなと思いつつも、五色に似合いそうな花を少し探してみることにした。
すると、一人の店員に声を掛けられた。
[何か、お探しですか?]
「…知り合いに花を送ろうと思いまして」
[そうでしたか!]
[…失礼ですけど、もしかして彼女さんとかだったりします?]
「あー、いえ、完全なる俺の片思いです」
[完全なる…]
「どうかしました?」
[…いっ、いえ!失礼でなければもう少しお話を伺ってもよろしいでしょうか!?]
「…まぁ、それでピッタリの花が見つかるのであれば」
[はい!絶対見つけてみせます!]
「じゃあ少しだけ」
そこで俺は医者をしていること、患者に片思いをしてしまったこと、そしてその患者はもうすぐ旅立ってしまうことを伝えた。
店員の人は俺の話を親身になって聞いてくれた。
思えば、俺が誰かにこの感情を話したのはこれが初めてだ。
少しして、店員の人がとある花の元へと案内してくれた。
[でしたら、押し花になってしまいますがこのスイートサルタンなんてどうでしょうか?]
「…花言葉か何かですか?」
[あ、もしかしてご存知ですか!?]
「いえ、少し知識があるくらいです」
[このお花の花言葉は、〈あなたは私を明るくする〉〈幸福〉〈感謝〉です!]
「あなたは私を明るくする…?」
[はい!先ほどお話を聞いている時に、度々楽しそうな表情をされていたので!]
「…じゃあ、これにします」
そう言うと店員の人は押し花を使った栞を丁寧に包装して、俺に差し出してくれた。
「今日はありがとうございました」
[いえ!お役に立てなら良かったです!]
「また来ますね」
[はい!お待ちしております!]
そんなやり取りをしているうちに、五色が店の奥から花を持って出てきた。
『白布さーん!買えました!』
「おう、じゃあ戻るか」
『はい!あ、でもちょっとバレーとか…』
病院への道を歩きながらそう言う五色の頭を軽く叩き、少し申し訳ないなと思いつつも、俺は答える
「激しい運動はダメ」
『うぅ…』
「…あ、そーいやバレーやってる漫画見つけたんだけど、読むか?」
『え!読んでみたいです!!』
「じゃあ明日持ってくるわ」
『…明日、ですか?』
「…おう」
「あと、これやるよ」
『押し花の栞、ですか…?』
「まぁ、漫画にでも使って」
『…嬉しいです!』
『ありがとうございます!!』
『あ、白布さん!』
「…なんだよ」
『俺もこれ…その、良ければ!』
『アイレンっていう花なんですけど…』
「…なんと言うか、デカいな」
『う…でも、綺麗ですよ!!』
「まぁ、ありがとな」
「大事にするわ」
『…はい!!』
五色も俺も、明日も生きているなんて保証はない。
でも、医者である限り患者には生きることを諦めないで欲しい。
そんな思いとは裏腹にその日の夕方、五色の容態はベッドから動けなくなるほどまでに、悪化した。
次の日、俺は喋るだけで精一杯の五色の横でゆっくりと話していた。
『…あの』
「なんだ?」
『俺、本当はキスツス・アルビドゥスって言う花が欲しかったんですよ』
「…なかったのか?」
『はい、5月頃にならないと時期じゃないらしくて…』
「じゃあ、なんでアイレンにしたんだ?」
『店員さんと考えてたんですけど、これがぴったりかなと思いまして…』
「へぇー、俺アイレンについて調べてみたんだけど、あんま情報がないんだよな」
『え、じゃあ花言葉とかも知らないですか?』
「ん、出てこなかったしな」
『そうですか…』
少し悲しそうな表情で話す五色は、もう残火だけで生きている様なものだ。
…あと、数十分もすれば消えてしまう程の。
俺は、キスツス・アルビドゥスという花の名前を、走り書きでメモに残した。
数分後、五色は話すことすらままならなくなった。
俺は、そんな五色の手を握ることしかできない。
やっぱり俺は無力だと、心の底から感じる。
また少しして、五色の握る力が弱まってきた。
…もう、時間なのだろう。
『白布さん…』
「ん、どーした?」
『幸せになってください…私も、あなたが好きでした、今でも…あなたを愛しています…』
「…は?」
『アイレンの、花言葉…です』
「それって…」
『白布さん、俺、白布さんのこと好きでした…』
「なんで…今更ッ…』
『伝えなきゃ…って思っ、たんです…』
「俺も…」
「…俺も五色のこと好きだよ」
『…本当、?』
「勿論だ」
『じゃあ…両思い、ですね…』
「あぁ、そうだな…」
『最後に一つ…いいですか?』
「ん、何?」
『キス、してくださいよ…』
「…俺で良いのか?」
『…白布さん、がいいです』
「はぁ、後悔すんなよ」
そう言って俺は、五色と最初で最後の口付けを交わした。
そして、俺が握る手から力が抜け落ちた。
五色の死から一週間が過ぎた頃、仕事に区切りのついた俺は、キスツス・アルビドゥスの花言葉について調べてみることにした。
検索をかけて、一番上に出てきたWebサイトを開く。
出てきた言葉は、”私は明日死ぬだろう”。
俺は、この湧き出てくる感情をどこに向けたら良いか分からず、舌を鳴らした。
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次回は国及です( 国見ちゃんヤンデレ)
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