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一方、その頃の朱雀像のある反省室(※正式名称は彫魂神殿…ちょうこんしんでん)に入れられながら、まったく反省してない。
…否、懲りていないといった感じの影人は何をしていたのかと言うと……
…………………。
…………?
……囲まれていた。
怪しい黒装束の戦闘員三名に。
すっかり囲まれていた。
身動き一つ取れずに。
情けないくらい容易く囲まれていたのだった…
その戦闘員の中の一人が額に霊札を貼られ…ム~ム~ッと言葉を漏らし、顔に血管を浮かばせて真っ赤に力みながら必死で動こうとしている影人の特別に気色悪い光景を目の当たりにし……
気色悪さから…一歩、後退りして恐る恐る構えたライフルの銃口の先っちょで、もしも~し、何してんスか?……ぐらいの感じで影人の背中を数回ほど軽くツンツンと突いてみると。
………………………!!!?
「バカヤロー!!
お…俺はッ、ウ○コなんかじゃねぇ~~~ッ!!」
鼓膜が破れるかと思うくらいの大声で影人が叫ぶのであった!
「…チッ、うるさいガキめッ
おい…ターゲットか、どうかを先に確認しろ。」
一瞬…たじろいだ戦闘員達だが顔を歪めながら憎々しげに、こちらを睨み付けている。
「ハハハ…なんだか、よく知らんが身動き出来ない様子だと見える。
その小生意気な口以外はなッ!!」
そう言うと戦闘員の一人が影人の着ている学生服を脱がし始めるのだった。
効率的には…おそらくナイフ等で衣服を大雑把に破るのが一番早いのだろうが万が一にも四神の入れ墨に傷をつけたとすれば…
親愛なる我等が女王カグヤ様に迷惑をかける事となるのは…もちろんの事。
第一、下手をしてカグヤ様の怒りを買えば…自分の命にまでも係わる事態になりえないのであるからして多少、面倒な作業だがチマチマと男の衣服とは言えども脱がすしか無い戦闘員であった。
「うわぁ…こ、コイツ、何しやがるッ!!
変態か、変態なのか~ッ
あっ、どこ触ってやがるんだ
俺に…そんな趣味は無ぇぇ~ッ
さっき、じいちゃんにも脱がされたばっかりなんだぞ
…やめろよ
アハハ…脇はやめて、アハハ、止めてっば~ッ。
あ~ん、感じちゃうッ!」
何か…とてつもなく勘違いされそうな台詞で激しく一生懸命に抵抗しようとする影人なのであった。
「チィッ…気色悪いわッ…クソが!!
しかしお前もバカだよなぁッ
あんな騒ぎなど起こさなければ…もう少し長生き出来たのにな…
お前と同類の活きの良い友達とやらも大バカものの大マヌケだったしなッ!」
ふいに軽口を叩いた戦闘員の言葉に怒りを隠せない影人は思わず叫んだ。
「今…何て言った、答えろォォ!!
鮫島達に何をしたァァ!
テメェら、アイツら殺したのかよォォォッ!」
もし、今日の昼休みに自分が不用意に能力を使った為に起こした事故のせいで鮫島達や学校の皆に迷惑をかけたのだとしたら……
軽率に力を使った事を今更ながらに悔やむ影人であった。
そんな怒り狂った影人の声を無視し続けながら…戦闘員はただただ黙々と学生服の上着を脱がしたのである。
さて、次はシャツを捲くし上げようかとしていた時である。
影人が覚悟を決めた…正にその時であった。
「影人お坊っちゃま~!!」
竹りんがズバッと襖戸を蹴破ったのである。
グルンと回転し…器用に受け身を取りながら部屋の中へ勢いよく飛び込むのだった。
竹りんは…この離れへと向かう途中で、万が一の事態に備えて壁に飾り付けてある鑑賞用の木刀を脇に差していたのであった。
その用意しておいた木刀を握りしめ…キリリと態勢を整え、見事に着地すると目にも止まらぬ剣速で見る間に戦闘員達を薙ぎ倒していくのであった。
それは剣筋さえ見えない程に素早く打ち付けられていた。
甲高く鼓膜を揺らす…風を斬る音だけが、無常に響いていた。
竹りんの見事な攻撃に感嘆する影人。
「凄ぇ~…流石だなッ、竹りん
やっぱり剣道の世界チャンピオンだったってのは伊達じゃないな
風を斬る剣士の異名にも納得だよ」
竹りんの攻撃で戦闘員は意識を失い、泡を吹いて倒れている。
その中で辛うじて意識を保っていた戦闘員も力尽きるのも時間の問題といったところだ。
憎らしげに、こちらを睨み付けるのが…やっとだ。
オレンジタイフーン
50
「…大丈夫でしたか?
おいたわしや、今すぐに剥がします!!」
そう言うと竹りんは素早い手付きで影人の額に貼られていた霊札を剥がすのだった。
「う~~~~~んッッ!!」
まず影人は石みたいにカッチコッチに凝り固まった身体をほぐす為に…う~んと大袈裟なくらいの大きな伸びをするのであった。
「……ハッ、そうだった!
お前…鮫島達や学校の皆に何をしたんだ…
オイ!!答えろよッ!!」
突然、影人は何かを思い出した様に軽口を叩いた戦闘員の一人に駆け足で近付くのであった。
バッと胸ぐらを粗雑に掴み上げると大声を上げて力強く激しく揺さ振りながら詰問した。
「………ぬ…グッ…
フフフフ…安心しろよ、殺してなんかいないさ…
殺す事にそれほど関心は無い…手段の一つさ、我々にとってはな…
我らが御慕いする偉大な指導者カグヤ様は慈悲深いのだ…
無益な殺生が『大』がつく程にお嫌いでな…それはそれは、お優しい御方であるのだからな…
カグヤ様に感謝せねばなるまいて…」
最後の力を振り絞るようにボソボソと蚊細く聞き取りにくい低い声で話すと戦闘員は…再び意識を失ってしまった。
白目をむいて泡を吹いているのにも関わらず、どこか威圧的であった。
「あはは…ふぅ~ッ、良かった、良かった…あいつら生きてるのか~
…ハッ!
な、何で俺があんな奴らの心配なんかしなくちゃならないだよ、ケッ…」
いつもは毛嫌いしている不良達をこともあろうに本気で心配している自分に気恥ずかしさを隠せない影人であった。
影人は自分なりの照れ隠しなのか、そんな空気を打ち消す為に話題を変えようとしてか竹りんに忠告する。
「あのさ、前にも言ったけど……さ…
竹りん…頼むから、そのお坊っちゃまって言うのいい加減やめてくれよな…あはは…
ちょっとどころじゃなく、めちゃくちゃ恥ずかしいんだよ…
楓さんに笑われるんだよ…」
……………………………………………………
「ハイ…大変申し訳ございません…
以後、気をつけます…
それにしても…お坊っちゃまは御怪我などはございませんか?」
やはり口癖と言うか身体に染み付いている言葉ってのは簡単にはなおらないみたいなようで。
今日は…それ以上は、もう言わない事にしようと思う影人であった。
今はこんな風に一生懸命助けに来てくれた竹りんに対する感謝の念で一杯で…
それと…何か、とてつもない事が起こっていると言う焦燥感からなのか…自然と肌は総毛立ち、全身にピリピリとした刺すような研ぎ澄まされた殺気を感じているのであった。
「ああ、大丈夫だよ…
なぁ…それよりも一体、何が起こっているんだ…
向こうの屋敷の方から大きな爆発音みたいのが聞こえたけれど…」
影人は現在の状況を確認しようと竹りんに声を掛ける。
「おそらくは現在も尚、本邸では会長が謎の大男と戦っておられます
しかし…私も初見でしたが会長の不可思議な炎の力
あれは…お坊っちゃまも前に一度、裏庭で起きたぼや騒ぎの時に使った奇妙な力に似ていたような気がしますね…」
竹りんは状況説明と自分が抱いてる疑問を素直に吐露した。
なんていう事だ!!
じいちゃんが極楽蝶の能力を使っているのか。
能力は寿命を縮めるって…………………
だとすれば…戦っている相手も、おそらくはソウルズの能力者では無いのだろうかと危惧し、逸る気持ちから本邸へと急ごうとする影人である。
「俺は…念神体すら視る事が出来ねぇくらいの中途半端な情けねぇ能力者だけど家族を…じいちゃんを…みすみす死なせる訳にはいかないからなッ…
急ぐぞ、竹りん!!」
本邸へと向かい駆け出そうとする影人の腕をヒシッと掴み竹りんは言う。
「…なりません
行ってはなりませんよ
どうやら連中の狙いは影人お坊っちゃまなのです…
あなたなのです…
それゆえに会長は命を懸けてまで必死にあなたをまもろうとなさっておいでなのです
その気持ちを…想いを…全てを無駄になさるおつもりなのですか…」
真摯な瞳でまっすぐに…こちらをみつめる竹りんである。
まるで駄々をこねる子供でも諭すような口調なのだ。
「竹りんの言いたい事はわかるけど…けど…さ…
後悔したくないから…さ…
だから………だからさ…
…………………………………決めた‼︎
…よし………そいつら、全部…
全員さ……まとめて…
俺がブッ倒してやるよ!!
俺はじいちゃんが……
めちゃくちゃ大嫌いなじいちゃんだけど死んじまうなんてイヤだッ!
絶対に……
父さんや母さんも俺をまもろうとして死んじまったんだろう……
家族がみんな、いなくなるなんて…
そんなの…
そんなの絶対にイヤなんだよォォォォッッ!!」
酷く感傷的な影人は葛藤からパニックに陥り…まるで稚拙なひとりごとのような…誰に投げ掛けているのかすら分からない心の騒音を赤裸々に漏らすのであった。
「大丈夫、大丈夫ですよ…落ち着いて下さいませ、影人お坊っちゃま」
痛い程に影人の無念な想いが感じられてしまう。
まだ幼い影人の…痛切なる涙を見ていたのだから……
だからこそ…だからこそである。
それ以上は何と言葉にして良いものかと考えあぐねる竹りんに影人は言う。
「あのさ…竹りん
はっきり言って、俺はじいちゃんの能力をみた事が無いんだ
説教の時に…ほんの少し話を聞いただけだしな
だけど…今、自分にしか出来無い事をやらないで逃げたくなんか無いんだ
そうやって逃げて…何も出来なかった時みたいに後悔したく無いんだ!!
…戦わせてくれよ、竹りん!!
この背中の入れ墨は戦う宿命を与えられた者の証だろう」
竹りんは影人の言葉を受け止めると…ゆっくりと頷くのであった。
「…でしたら、私にも手伝わせて下さいませ…
正直…あの奇妙で常人外れの能力に恐れを抱いておりました…
しかし覚悟を決められ、燦然と運命に立ち向かおうとする勇ましくもたくましいお坊っちゃまの凛々しい御姿に感銘を受けました…
微力ながら助太刀させて戴きます…
この命に懸けて戦いましょう‼︎」
ポカンとした呆れ顔で影人が言うのである。
「…ハハハ、俺と同じで止めたって無駄なんだろう
だったら…遠慮はいらないさ、一緒に戦おうぜ!
だけど、約束だ…死んじゃダメだ…
生きてこそ意味があるんだぜ、竹りん!!」
その言葉をきっかけにして二人が一斉に本邸へと向けて駆け出した。
地面を蹴り上げる力も一歩また一歩と踏みしめる度に強く、強くなっていくのである。
「間に合え、間に合えよ!
じいちゃんッ、絶対に…
絶対に死なせるもんかァァァッッ!!」
影人は知らず知らず、無意識の内に焦る気持ちが声になっていた。
そんな様子を真っ黒な虚空の深淵なる闇を真円の月が淡く…儚なく照らし出していた。
不気味な程に紅く紅く鮮血の色に染まる満月。
それが彼らの運命の歪みへ必然へと導いているように見えるのであった。
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