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はるか
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『愛なんて、』 第3話
「よっしー、こっちだよ」
目的の駅に着いて、カフェを目指してふたり並んで歩く。割と駅近のようで歩いて10分ほどのところだった。
さっきの電車内の出来事がまだ全然忘れることなんてできなくて、今柔太朗がスマホを持っているその手が、さっきまで自分の腰の辺りに触れていたと思うと恥ずかしくなってくる。当の本人が特になにも思ってないようだったが。意識しているのは自分だけなのだろうか。
無事お店を見つけたのはいいが、さすが人気のお店で休日もあり行列ができている。
「ちょっと待つかな…並ぶか」
「実はね、予約してあるんだ」
「え?予約制だったっけ」
「ん〜…俺も無名ってわけじゃないからちょっと顔を使ってね…内緒だよ?」
ぱちん、なんてかっこよくウインク。
それすら様になるから本当顔がかっこいいのってずるいと思う。
列に並ぶ前に柔太朗はスマホで電話を掛けた。数秒だけ会話して電話を切って店の裏側に向かう。裏口のようなところから店員が顔を出した。
「お待ちしてました、山中さま」
対応してくれてる店員さんが柔太朗を見るなり、手元を口に添えて照れている様子だった。店の奥の方にいる若い女性の複数の店員さんたちも黄色い声を上げたりチラチラとこちらの方へ視線を向けている。
街中で芸能人を見かけたときのような反応。
こちらの席です、と案内させたのは半個室のような席。カフェにこんな席があるなんて…
「柔太朗って人気者なんだね」
「んー…ありがたいことにね、でもよっしーが疎いだけなんじゃないかな?」
「雑誌と見ないから…」
「俺ももう少し頑張らなきゃなぁ、もっとよっしーの目に入るように」
「……は、はやく注文しよ!」
「ふふッ」
だいたいはなにを注文するかは決めていたが改めてメニュー表を見ると色々なデザートが出てきてう〜んと悩んでると柔太朗がくすくす笑う。
「甘いものが好きなんだね、可愛いね」
「……うるさい」
結局アイスコーヒーと桃のパフェと梨のタルト、追加で葡萄のジェラートにした。
注文したものが来るまでの間、柔太朗からは色々質問された。将来の夢である自分のお店をなんで持ちたいのか、どんなお店にしたいとか、どこでお店を開きたいとか…答えてる時、柔太朗の顔は真剣だった。
勇斗とは、しばらくはこういう話してなかったな…
初めて勇斗に夢を話したのは大学を卒業して、同棲を始めたばかりの時。お金もまだお互いあまりなくて今住んでるマンションよりも小さなアパート。狭いベッドにふたり寄り添って寝たりしてたあの頃。
事後でまだ体の熱が冷めない中、抱き合っていた時ぽつりと溢した将来のこと。
『勇斗、俺ね…初めて言うんだけどいつかお店を開きたいんだ』
『店?』
『そう、時間は掛かっちゃうかもしれないけど…ひっそり佇んでいる喫茶店みたいな、地元に愛されるようなそんなお店…勇斗は、応援してくれるかな…?」
『いいじゃんそれ!する!絶対応援する!仁人にぴったりだよそういうお店!』
目を見開いて興奮気味でそう答えてくれる勇斗の熱量にとても嬉しくて勇斗の胸に顔を埋めるようにして抱きつく。
『嬉しい…』
『俺が仁人のお店の1番最初のお客さんになる』
『うん、約束する』
『俺も仁人の夢のために仕事頑張るよ』
『ありがとう勇斗……大好き』
『仁人がデレた…!』
『うっさい』
「よっしー?」
「…ぁ、ごめん、ちょっと考え事…」
昔のことを思い出していた。
勇斗とまだ今みたいな少し冷めた関係ではなかった時。あの熱量は若さのせいでもあったのだろうか。
「お待たせしました」
注文したものが全部届く。
写真の通り、可愛くて美味しそうなデザートたちに頬が緩む。
「柔太朗、写真撮っていい?」
「いいよ」
カシャ…っと記念に写真を撮る。
数枚撮ってると柔太朗が手を伸ばしてきた。
「…?」
「よっしーの写真も撮ってあげるよ」
「え、いいよ、恥ずかしいし…」
「いいから、たまには自分の写真とかあってもいいんじゃない」
「そっかな…」
「ほら、貸して?」
半ば強引にスマホを持っていかれ、レンズがこちらを向く。撮るよーっという声掛けを合図に顔の横にピースをしてみたり、ちょっとしたポーズをしたりして…恥ずかしくなったけど、ちょっと楽しかったり。
「俺と一緒に撮ろ」
「…え!?」
向かい側に座っていた柔太朗が隣に座り込んでくる。肩に手を回してきて、グッとふたりの間の距離が近くなる。またふわっとあの甘い香水が鼻を掠めた。
「ほら、よっしー笑ってよ」
「だって、ツーショットなんて緊張する…」
「なんでよ。はい、撮るよー」
3、2、1……カシャ…
「うん、上手く撮れた」
「…ありがと、なんか嬉しい」
「あとで撮った写真ちょーだい」
「いいよ、ちょっとトイレ行ってくるね」
そう言って仁人がトイレに向かう。
警戒心が無いのかスマホをそのままテーブルに置いて行ってしまう。
それにしてもデザートでここまで喜んでくれるなんて、今日は誘って良かったと思ってご機嫌になる。するとピコンと仁人の携帯が鳴った。恐らくメッセージであろうその画面が気になってしまう。人の携帯を勝手に見るなんて、最低なことだとわかってもいるが、仁人がまだ戻ってこないだろうとスマホに手を伸ばして、画面を見る。
『仁人、今どこにいるの』
送り主は “勇斗“
勇斗…誰だ、友達…いや、この一文でわかる。友達ではないこの感じ。これは、
「……恋人…か?」
胸の奥の方でなにかどす黒いものが渦巻く。わかる、これは嫉妬だ。
仁人には恋人がいるんだ。
「……ごめんよっしー」
画面をタップすればメッセージの画面になった。パスワードもかけてないだなんてどんだけ無防備なのかと心配になる。
その勇斗という奴に送ってやった。
なにも文章は送らずに、写真を1枚。
さっき撮ったツーショットを。
それはすぐ既読がついた。
さて、こいつはなんて返信するのだろう。
口角が上がるのを柔太朗は抑えられなかった。
続
悪いjyuさんも好きです🤍
コメント
9件
ひょー!!!!優しいのに大胆で、ちょっと悪い🤍さん最高です…!! これからどんな展開になっていくのか、ますます楽しみです🥹💗
うぇええええあああ!! これはっ、!これはこれは!! 続きが楽しみで楽しみで仕方ないです!! 🩷さんどうする!!悪い🤍さんにトキメキ止まらないです💕💕💕💕
初めましてのコメントでこんな事言うのもアレなんですが興奮しました!!! やばいこんなことされたら🤍ルートも見てみたい…です…ッ( ᷄ᾥ ᷅ )