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リクエストいただいた、じんさの。
今回もおたのしみください。🤝🏻
最近、勇斗の様子がおかしい。
おかしいっていうか、うーん、
普段なら、朝は俺が起こさないと起きてくれないし、
普段なら、これ食いたい、あれ食いたい、これがしたい、あれがしたい、って、子供みたいに言ってくるのに
佐 ) 仁人、おはよう。今日も起きるの早いね。
佐 ) んー。なんでもいいよ。仁人が好きなので。
なんか、人が変わったみたいに大人しくて、落ち着いてる。
急にぱっとこうなったわけではなくて、じわじわ、じわじわ、気づいたら、こんな感じになっていた。
勿論、心当たりなんてないし、メンバーに勇斗がなにかあったかと聞いても、口を揃えて わからない と答える。
心做しか、俺と話すのも遠慮がちな気もしなくはない。
…いや、それは考えすぎか。
仁 ) 勇斗さ、なんかあった?
佐 ) え、なんで?
仁 ) いや…最近、やけに大人しいなって。
佐 ) っ、は、そんなこと?笑全然、大丈夫だけど。じゃあ、仕事行ってくるね
仁 ) ぁ…うん、行ってらっしゃい。
俺には、分かった。
あれは無理をして笑っている。僅かな言葉の詰まりも見逃さなかった。
というかこれで、本当に何も無い方がむしろおかしい。
自分から話すのを待つか、俺から探るか…
…あいつは、自分から話すことはあんまりしないと思う。で、探っても、結局分からないままになる気がする。
あー、どうしたらいいんだ、俺。
数日経っても、勇斗の様子は変わらないどころか、もっと酷くなってる。
朝は、起こしても起こしても起きてくれない。 起きたとて、隈が凄い。だからこれ、起こすのが少し苦痛だったりする。
同じ部屋で寝てるとはいえ、俺は眠くなったらすぐ寝てしまうから、勇斗がもしかしたら夜中に起きてる可能性だって有り得る。
それか、中々寝付けないか。
それから、魂が抜けたような顔、声、行動。
顔はさっきも言った通り隈が凄くて、なんだか血の気がなくて、すごく虚ろな瞳。
声は…なんて言えばいいんだろう。そもそも話すことが減った。無理して話してる感じしてるし。
そして行動。仕事以外では寝室に籠るようになった。飯もあんまり食わねーし。
でも絶対に、仕事を休むことはなかった。
よくこの状況で仕事に行こうってなれるし、これでちゃんと仕事はできるのか…?と思って、この前ドラマ撮影をバレないように覗いて見た
演技は変わらず、すごく上手くて、いつもの勇斗だ。
でも、カットがかかった瞬間、病んでいるような、鬱っぽい勇斗になる。
…そして、ドラマの撮影現場は、少しピリピリとした雰囲気だった。
そしてまた、朝が来る。
つらそうな勇斗を起こすのは、とても心苦しい。
仁 ) …勇斗、朝だよ。
佐 ) ……
仁 ) 勇斗、
佐 ) …ん、ん、、
仁 ) おはよ。ご飯、食べる?
佐 ) ぃらない、…
仁 ) そっか、今日は、仕事?
佐 ) うん…、今日はちょっと、帰るの、遅れるかも、
仁 ) わかった、待ってるよ。
寝惚けながら話す勇斗の頭を優しく撫でれば、 頑張って、 なんて言うように微笑みかける。
今日の帰りは遅いらしい。俺の心配は、増えるばかり。
朝10時。今日は雨が降っていて、気分下がるなぁ。
何もすることないな、なんて考えつつ、この前買った本をパラパラと読む。
これ、結構面白い。
部屋の掃除をして、勇斗の服を畳んで。
そんなことをしていれば、時刻はもう17時を過ぎていた。
雨のせいで外はもう暗い。勇斗は遅いって言ってたし、俺腹減ったし飯食おうかな、なんて思っていれば
ドアの開く音がした。
…ん?勇斗は今日、遅いって言ってたぞ?
スマホを見ても、勇斗からの連絡はない。
少し早歩きで玄関に向かえば
傘もなにも持っていない、ずぶ濡れの勇斗がいた。
仁 ) え…勇斗、?
佐 ) …ごめん、
濡れていることなんか、気にしない。俺は真っ先に勇斗に抱きついた。
佐 ) じん、と…?
仁 ) なに、濡れてんだよ。馬鹿。
勇斗の目元を見れば、当たり前のことだが濡れている。でもこれは、涙なのか、雨で濡れたあとなのか。それはよくわからない。けど、勇斗は限界だったんだと思う。
勇斗の携帯が鳴りっぱなしで見てみれば、監督さんからだった。…もしかして、現場抜け出してきた?
勇斗が出ようとしないから、俺が出た。
仁 ) あっ、すみません、佐野ではないのですが。…ぁ、同じM!LKのメンバーの吉田でして…はい、はい、ちょっと今日調子が悪いみたいで。…
とっても申し訳なさそうな顔をする勇斗に 大丈夫 なんて口パクをすれば、頬を優しく撫でる。
一通り話し終え、電話を切れば、とりあえず勇斗に風邪は引いて欲しくないため、風呂に入らせる事にした。
仁 ) 一人で、大丈夫?
佐 ) うん…大丈夫、
大丈夫、なんて勇斗は言うが、勿論心配のため、風呂場の前で待機。あ、勇斗にはバレないように。ね。
普通に入れたようで、そこは安心。で…話をどう聞こうか。とりあえずソファに座らせる。
仁 ) なーんか、違うんだよな…
隣同士で座るのは、なんか違う。もう少し空気を柔らかくしたい。
仁 ) …ぁ、お前の上、座ってもいい?
佐 ) え、?別に、いいけど、
俺より身体のデカイ勇斗に、俺の上に座らせるのはムズい。だから、俺が乗ってやろう、と思って、勇斗の上に乗れば向かい合わせになる。
よし、話を聞こう。なんて思えば、勇斗が俺にぎゅ、と抱きついてきた。
仁 ) ん…、なあに、そろそろ話してくれても、いいじゃない?
佐 ) ごめん、…
仁 ) だーいじょうぶだから。ね。もう、俺らしかいないから。大丈夫。
優しく声をかけつつ、背中を撫でてやると、ピクピクと体が動いた。別にこれに対して、何か言うわけではない。泣きたいならいくらでも泣けばいい。
久々に、勇斗が感情を出してくれて、嬉しい。
佐 ) ひっ…ごめ、っ…ごめ、ん…
仁 ) だあから、謝んなくていいの。なんもしてないでしょ?
佐 ) で、も…っ、おれ、なんも、言わないで、…
仁 ) しょーがない。しょーがない。しんどかったんだもんね。大丈夫。
佐 ) ひっ、…ぅ、…
頑張って泣き止もうとしているの、凄く伝わる。俺に心配かけたくないんだな、って、痛いほどわかる。だってこいつは、そういう奴だもん。ウザイほど一緒にいるから、そんぐらいわかる。
仁 ) 泣いても迷惑じゃねーし、いくらでも泣いていいんだよ。
佐 ) っ、…じ、んと…、
仁 ) ん?
佐 ) おれ、っ…わかんな、い、…なんか、つらい、…こわく、て、…でも、…わかんなく、て…
仁 ) そっか、そっか。言ってくれてありがとうね。つらかったね。
なんとなく、分かった。今ある何かに不満、不安、恐怖があるのではなくて、何かわからないものに不安を抱いている。それがきっと大きかったんだろう。例えば、撮影でここを間違えたら怒られるだろう、とか。そういうのが、多かったんだと思う。
仁 ) いーんだよ、そういうのは言ってくれて。いつでも話聞くし、ここまでしんどいってなってる勇斗、もう見たくない。
佐 ) う、ん、…ごめ、
仁 ) はい、謝んない。ごめんより、ありがとうが欲しい。
佐 ) …ぁりが、と、
仁 ) うん、俺も、ありがとう。
そう言って顔を合わせれば、未だ泣き止まない勇斗を慰めるように口付けをする。…俺からキスとか、あんまりないからちょっと照れくさいな。
泣き止むまで、ぎゅうっと抱きしめて、最近話せていなかったから、最近あったこと、YouTube撮影でのことかを勇斗に話してみて。段々と、いつもの勇斗の笑顔になってきた。
仁 ) で、太智がさ、まーた興味無い顔してカメラ見詰めてんの。
佐 ) んーだそれ、太智ってほんと変わんねえな笑
仁 ) 笑、元気、出た?
佐 ) お陰様で。さっきまでの俺、どっか行ったよ。
仁 ) …ほんとに?
佐 ) …ちょっと、嘘です。もっかい、抱きしめて。
仁 ) はぁ、すーぐそうやって嘘つくんだから。
佐 ) ほら…心配かけたくない、じゃん?
仁 ) 心配かけてこそが、恋人ね。
佐 ) 言い返せねぇ…
仁 ) 言い返さなくていーんだよ。笑
そうやってまた、優しく抱きしめる。ふと時計を見てみれば、時刻は22時を回りそうだ。
仁 ) …なぁ、腹減らね?
佐 ) 俺も思った。今何時?
仁 ) 22時っすよ。おにーサン。
佐 ) うっそ、もうそんな時間?
作るのめんどくさいから、って、今日はデリバリーにした。来るのをまってる間も勇斗は俺から離れようとしなくて、ずーっと、くっついてる。嫌じゃないし、むしろ嬉しいぐらい。
飯食って、歯磨いて、寝るってなったらもう0時を過ぎそうで。明日はお互いオフだから、夜更かしでもする?ってなったんだけど、最近勇斗あんまり寝れてないから、
仁 ) んーやっぱ、俺眠いかも。寝よ。
佐 ) うん、寝る。俺も眠い。
仁 ) はい、決まり。
今日は向かい合わせになって寝てみることにした。なんか少し、照れくさいな、これ。
佐 ) ね、俺…最近、寝れてないから、さ、
仁 ) いいよ。ぎゅーってして、寝たいんでしょ?
佐 ) さすが、仁人。よーくわかってんね。
仁 ) そりゃね。ほら、おいで。
佐 ) はー…、落ち着く、あったかい。
仁 ) 寝れそう?
佐 ) めーっちゃ、寝れそう。
仁 ) 良かった。おやすみ。
佐 ) おやすみ、
頭を撫でつつ、勇斗の様子を見ると、5分もしない間に眠った。そんだけ疲れてて、寝れてなかったんだな、とか思いつつ、頭の中で勇斗にメッセージを伝えてみた。
拝啓、親愛なる貴方へ。
ずっと俺の傍にいて、大切にされててください。
頑張りました。どうでしたかね。個人的に結構自信作。
リクエストありがとうございました♥️
気に入ってくれたら幸いです🤲🏻