私は、中世の混乱期でもある時代にこの身をもって産まれた。混乱期なのもあり、命を狙われるのも当たり前。生まれたばかりの幼い命を平気で他の国は狙ってくる。そんな中、私を守ってくれたのはドイツ騎士団と名乗る者だった。白いマントに黒い十字架があり、その下は武装した姿をしていた。生まれて間も無い私を、大きな宮殿へと馬に乗って運ぶ。見知らぬ道、見知らぬ森を駆け抜けた先……そこには大きな宮殿があった。
「陛下。戦いの道中に、このような子供がいました……。どういたしましょうか。」
その騎士団が言う陛下は、真ん中に双頭の鷲があり大きな冠をしていた。足元はスカートのようなもので見えなかったが、歩み寄ったその様子は人が歩くような様子ではなかった……。滑らかにこちらに来て、足元からは黒い生物のようなものが現れて、私の顔に触れた。気持ち悪く、うねうねしたそれに抵抗しようとしたが他方からもそれがやってくる。
「ふむ……面白そうな子供だな。騎士団。それに、此奴の右目を見よ……白い部分が灰色となっているではないか。我のとは色が薄いが……似ている。」
黒いなにかはゆっくりと離れていき、足元へ帰るように戻った。
「よし。主を『プロシア公領』と名付け、我が一族としてここに住ませることを許そう。」
初めて名付けられたその名。私は、どことなく心の揺らぎのようなものを感じた。元から見えない右目から光が見えたような……そんな感覚だった。
私は、産まれてからずっと広い世界でうろうろと浮浪して生きてきたが、初めての宮殿生活は中々堅苦しかった。服装も暑苦しくて抜きたいのに脱げない。外に出ようにも、騎士団から「外は危険ですよ。プロシア公領」と言われて止められるばかり。あの自由で何も考えずに生きてた頃が何よりも楽しかった。何よりも気楽だった。なのに……なぜあいつは私なんかを拾って来たのだろう……。みすみす殺せば良かったのに。疑問を抱きつつ、宮殿生活に明け暮れていた。
ドイツ騎士団が戦いに出ていた隙に、私は庭にある壁を越え、その先にある広大な高原を見渡した。深く息を吸ってゆっくり息を吐く。青い空を数匹の鳥が横切る。
「ああ。鳥のようになって自由になりたいな……。」
そう嘆いていると、私の元に黒い鳥がやってきた。それも烏かと思ってみたら、カラスでもない。小さな鳥でもなく茶色や白色と言った色が全くない純黒な鳥……。まるで鷲か鷹のような姿をしたそれは私に近づき、頭を撫でてと言わんばかり頭を前に出す。どこから来たのだろうと思いつつ、その鳥の頭を優しく撫でる。
「あれ?俺の秘密の場所が見つかっちゃっ たね。」
座ってもたれかかった壁の上から、初めて聞く声を耳にした。見上げると……赤い髪と白が上赤が下の色をしていて、私と同じように眼帯を付けていた少年がいた。それも、その眼帯は同じ鷲とはいえ赤かったのを覚えた。さっきまでじゃれあっていた鳥は飛び去り、彼の隣りに赤い鳥がやってきた。
続く……
コメント
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今回書いた小説のできはどうでしたか?あんまり上手くかけた自信なかったし、知らない国が出てきたと思うので次回、出てくる国の解説をしてきますね