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壁の上に膝を曲げてしゃがみ、見下ろしてきたその少年は、私の横に降りてきて軽く束ねられた赤髪が落ちていく風で下からなびかせて、着地する。手を腰に乗せて、私を見つめた。瞳こそ薄い灰色ではあるが、それがまた美しかった。
「君って確か、騎士団に拾われた子だよね?」
さりげなく質問をしてくる。視線を地面に落として、ゆっくり頷く。少し彼に視線を向けると、両腕を上に伸ばして深く呼吸をしてから私の隣で座った。ただ、を曲げて腕で脚を包むように座り込む私。それに対して彼は、あぐらをかいて気楽に座っていた。
「ここの空気っていいよね。」
「………」
また静かに頷く。それでも彼はまだ話し続けた。
「そういえば名前言ってなかったね。俺、ブランデンブルク。君は?」
「……プロシア公領。」
拾われた時に名付けられた初めての名前を口に出す。正直、この名前に対して喜ばしさ生き物として生きてる感じがしなかった。汚れきってどこから現れて来たか分からないやつが、突然騎士団に拾われて助けられた。私の左隣にある1本の青紫色の矢車菊《ヤグルマギク》が壁の影で咲いているのがわかった。
「プロシア公領か……。あんまりにも堅苦しい名前だね。そうだな……プロシア公領改め、プロイセンはどう?」
「……プロイセン……?」
影で照らされた矢車菊が雲によって光を閉ざされた太陽が顔を出し、その花を一段と輝かせていた。私はその名を呼ばれたお陰か、彼の微笑んだその顔がとてつもなく輝かしく見えた。
「うーん。少しダサかったかな?あはは。」
「ううん、かっこいいよ……。プロイセンって名前。」
「お!やった!んじゃ、これからはプロイセンって呼ばせて!」
彼の輝かしい笑顔が太陽のように眩しかった。日差しが傾いているのもあるかもしれないが、私は彼自身が太陽そのものに見えた。
しばらくして私達は、あの壁を待ち合わせ場所としてよくそこへ行き、楽しく話していた。彼を機に、私の知らない本や世界がますます広がった。日に日に仲を深めていく中、彼の身体が段々弱々しく見えてきた「気がした」。
出会った当初は、壁さえ軽くよじ登っていたのに、今では壁を乗り越えることが出来なくなり、最近では城の庭にある木の下で会うことが多くなった。 心配で大丈夫なのか?と聞いてみても、彼は大丈夫だよと私の心配を打ち砕く。次の昼下がり、普段なら早く来るのにやけに遅かった。
「ごめん……待ってた?」
夕暮れ時、彼の掠れた声が聞こえた。
「遅かったじゃないか……ブランデンブル……ク?」
続く……