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人ってわからないものなんだね…ボーッとしながらも23年間見慣れた駅までは帰って来た。
アルコールのせいか喉の渇きを覚え、駅前のファーストフード店で、アイスキャラメルラテをいつもより大きなサイズで買った。
その時
「あっ」
財布の中に入れたまますっかり忘れていた宝くじを見つけた。
人生初購入した宝くじ10枚。
ずっと覚えていたのに、同窓会へ行くことになってすっかり忘れていた。
帰ったら確認しなきゃ。
購入した時は興味本意で買っただけだったけど、今になって当たって!と強く願う。
もう抽選も終わっているから今さらだけれども、人が信じられない今、お金があれば誰も知らない世界で一人きりで生きていけるじゃないか…そういう妄想をしながらいつもは自転車で通る道を歩く。
これから節約生活をして貯金を増やしていこう。本をよく読むせいか、現実逃避の癖なのか妄想は得意だ。
あれこれ妄想しながらシャッターの降りた佳ちゃんたちの店を通りすぎ、しばらく歩くと住宅街へ入って行く。
どこかの家から焼き肉の匂いがしてきて、長い間焼き肉って食べてないなぁと思う。
今度お兄ちゃんが帰ってきたら、焼き肉に連れて行ってもらおうかな。
同じような道の何本目かを迷わず曲がったとき
「リョウ」
颯ちゃんの声と足音が聞こえ、すぐに街灯の中に彼のシルエットが浮かんでぐんぐん近づいてくる。
ん?足音が多い?
多すぎる足音は颯ちゃんの後ろから現れた佳ちゃんのものだった。
「お前…はぁ」
颯ちゃんが私の頭に手を置き、ぐったり項垂れるものだから重い。
「ちょっと…縮む…」
そう言っても更に重くなる頭に
「佳ちゃん…颯ちゃんが重い」
と助けを求める。
すると佳ちゃんは颯ちゃんを押し退け、私をぎゅうっと抱きしめた。
「ちょ…っ……」
右肩のバッグはずり落ちたが、左手のアイスキャラメルラテを気にしなくてはならない。
「リョウコ…おかえり。連れて行って悪かった…ごめんな」
「佳ちゃん、それは違うと思う…佳ちゃんが謝るのはおかしいよね」
「そうだよ。佳佑、退け」
今度は颯ちゃんが佳ちゃんを乱暴に押し退けるのだが、佳ちゃんの腕がすぐに離れず私がぐらぐらする。
「キャラメルラテが…」
その言葉に腕の力が緩んだ佳ちゃんを押し退け、颯ちゃんが乱暴さは微塵も見えない優しいハグをしてくれる。
「俺たちあの女とは縁を切ったから」
「あの女って…恵麻ちゃん?」
「名前を言うのも聞くのも蕁麻疹が出る。お前ももうあいつとは、幼なじみでも同級生でも顔馴染みでも知り合いでもないからなっ!」
優しいハグとは真逆の颯ちゃんの声が耳に直接届いて、思わず首をすくめた。