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「おい、待てよ。店くらい俺に案内させろって」
流星が早足で追いついて、私の横を並んで歩きながら話しかけてくる。
「どんな店がいいのか、リクエストとかあんのか?」
「どんなのでもいいから」
素っ気無く答える私に、流星がわざとらしくハァとため息を吐く。
「そういうなんでも顔に出るところって、銀河に似てるよな。おまえらって、お似合いだよ…ホント」
そう皮肉っぽく口にした流星が、
「どこでもいいのなら、そこの店にしようぜ」
歩道の先に見えるバーのネオンを指差して、
相変わらず気乗りのしない思いを抱えたままで、「うん…」とだけ応えた……。
地下に通じる階段を降りて、オレンジ色のダウンライトが照らすバーのカウンターに、流星と並んで腰を下ろした。
流星はジンをロックで頼んで、私はジンライムをオーダーした。
目の前に置かれたジンを一口流し込むと、「さて……」と、流星が切り出した。
「あいつの話が、聞きたいんだろ?」
言われて、思わずごくりと息を呑む。
「……あいつは、あんま自分からは過去のことを話したがらないんで、店に来た他の女たちにも、過去の話なんてしてんの聞いたことねぇし。唯一話したのが、おまえくらいなんじゃん?」
握り締めたグラスからお酒をぐっと飲む。いざとなってもまだ、果たして本人が話したがらないような過去のことなんかを、別の人から聞いてしまってもいいんだろうかと感じていた……。
「…………。……銀河は、昔……すごく好きな女がいたんだよ」
ふいにそう告げられて、思わず飲んだお酒にむせそうになる。
「大丈夫か? まぁ、いきなりで驚いただろうけど…」
と、流星がタバコを一本取り出して、ライターでふっと火を灯した──。