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その後も、五十嵐は口を割ろうとしなかった。
このままじゃ私が決勝に出なければならなくなる。
それだけは嫌だ。
それに、五十嵐に嘘をつかれていることも腹が立つ。
途中で物事を放り出すような、そんな男じゃないはずだ。
絶対に何か隠してる。
そう思った雪乃はエーフィと共に、昼休みにショッピの元を訪れていた。
「…よくここが分かったな、ゆっきー」
ショッピは少し驚きの表情を見せた。
ここは、ほぼ使われていない資料室。
少し埃っぽい狭い部屋に、ショッピはいた。
ショッピが座る薄暗い机の上を、ヒトモシが照らしている。
「チーノに聞いた」
「…あいつ」
視線を逸らし、眉間に皺を寄せるショッピ。
チーノはきっと後で怒られるだろう。
「で、俺になんか用なん?」
「…ちょっと頼みたいことがあって」
言い辛そうに雪乃が目線を逸らす。
「…とりあえず聞きましょか」
ショッピは何か感じとったのか、腕を組む。
「えーと、防犯カメラの情報を見たくて…」
「昨日見せたやん」
「えっと、昨日のとはまた違うやつなんだけど…」
「というと?」
雪乃はショッピの鋭い視線に耐え切れず、口を開く。
「昨日の放課後、何処かで何かがあったかもしれなくて…」
酷く抽象的な発言。
ショッピは「は?」と雪乃を凝視した。
「えー、つまり、昨日の放課後の時間帯の防犯カメラ全ての映像を漁って、何か事件とか起きてないか確認してほしい…のですが」
恐る恐るショッピを見る。
真顔でこちらを見ていた。
感情が読めない。
呆れてるかも、と雪乃は慌てる。
「ほ、報酬は弾みます!欲しいもの何でも用意します!何でも言う事聞きます!お願いしますショッピ様〜!」
手を合わせ頭を下げる。
「…何でも?」
「へ?」
ショッピがゆっくりと口を開いた。
「何でもって、言うたな」
「あ、はい。言いました…」
にやりと、ショッピが口の端で笑った気がした。
「ええよ、別に。正直面倒いけど、友人の頼みやし特別に」
「ありがとうございやすショッピ様〜!」
頭が上がらない雪乃。
ショッピは早速机の上にあるノートパソコンを触り始めた。
「まぁ防犯カメラのハッキングなんて朝飯前や。けどちょっと数が多いから、少し待っててもらえます?」
「あ、はい。いくらでも待ちます」
雪乃はショッピの傍らでしゃがみながら、購買で買ってきたパンを頬張る。
ついでに昼食を済ませよう。
エーフィも雪乃のそばで床に伏せる。
「モシモシ〜」
数分後、ヒトモシが鳴いた。
「あったで、ゆっきー」
ショッピの言葉に、雪乃は立ち上がる。
「何か映ってた!?」
「ハッキリとじゃ無いけど、端っこの方に映ってたわ」
見せられた映像は、校舎の一部を映す映像。
校舎の影の方にほんの一瞬、それは映っていた。
雪乃はその映像を静かに見つめていた。
「…お望みのものやった?」
ショッピが雪乃の顔を覗く。
「うん。ばっちり。ありがとうショッピくん」
「それは良かった。じゃあ報酬の件、忘れんといてな」
もちろん、と返事をし、雪乃は部屋を出ようとする。
後ろからヒトモシが「モシ〜」と手を振った。
「じゃあね」と返し、雪乃はエーフィと共に部屋を後にした。