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勢いに任せて言ってしまったことがよく分かる。
(店長は…見た目はおじさんだけど中身は少年なんだ。)
ふいに思ったことに、妙に納得してしまって思わず頬が緩む。
私は、その表情を隠すことなく、答えた。
「いえ、エビ…大好きですよ。いただきます。」
「よかった。あ、もし足りなかったら言って!!何でも奢るからさ。」
店長は、ほっとしたように目尻を下げて笑うと豪快に唐揚げにかぶり付いた。
それを見届けてから、私もフォークにパスタを絡めていく。
ソースとエビを程よくすくってから、同時に口の中に運ぶ。
ほどよい熱さだった。
「うん、やっぱり誰かと食べると美味しいなぁ。」
「…はい。そうですね。」
本心だった。不思議だった。今まで援交で、ホテルに行く前に男の人にご飯を奢ってもらったことはある。
みんな私に気に入られたいのか、高級なホテル料理やバイキングなど、優雅なものばかりだった。
それなのに、どの料理よりも…今、ここで食べてるご飯の方が美味しく感じた。
たかが、ファミレスなのに。
(…一緒に食べる人によるのかな…)
目の前で美味しそうに食べる店長を見る。腑抜けた表情。その裏には複雑な家庭が存在するなんて想像もつかない。
何故…私とこんなに違うのだろう。
その様子を見たら、何だか意地悪したくなり、口を開いた。
「…さっき、誰にでも職場で裏があるって言ってましたけど…店長にもあったりします?」
「っぐっ…な、何を…」
「あ、図星ですか?実は家庭では暴力的とか?だから奥さんに見放されたんだー。」
「そ、そんなことはしないよ!!…というか…俺は、不器用だから裏の顔なんて作れないさ。」
咳払いをしてから味噌汁をすする店長。
妙に、納得のいく答えに、込み上げてくるものを感じた。
「だと思いました。」
「はは…やっぱり…?」
顔を見合わせて小さく笑い合う。いつの間にか、穏やかな空間に包まれていた。
たまには、こういう気持ちになるのもいいかもしれない。
(たまには…ね。)