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数日後、蓮は一人でスカウトマンと会っていた。
奨には、何も言わずに。
「俺は、あなたの誘いを断ります」
蓮は、まっすぐにスカウトマンの瞳を見つめた。
スカウトマンは、驚いたような顔をした。
「どうして?君は、もっと上の世界に行ける。それが、君の夢なんじゃないのか?」
「確かに、俺はもっと上に行きたい。上の景色を見てみたい。でも…」
「俺の夢は…JO1なんです」
蓮は、力強く言い放った。
「俺は、奨くんの夢を守るために、ここにいる。そして、奨くんも、俺の夢を守ろうと未来から来てくれた。俺たちの夢は、一人じゃ叶えられない。奨くんと、メンバー全員と、一緒に叶えるもんなんです」
蓮は、スカウトマンが示した夢よりも、奨との約束を選んだ。
未来の自分が犯した過ち。それは、奨の愛に固執し、グループの夢を見失ってしまったこと。
今の自分は、違う。奨との愛を、グループの夢を、両方とも大切にする。それが、未来を変えるための、唯一の道だと信じた。
スカウトマンは、蓮の言葉に、呆然と立ち尽くしていた。
蓮は、迷いなく立ち上がり、その場を後にした。
その夜、奨は蓮から、スカウトマンの誘いを断ったことを聞いた。
奨は、驚きと、喜びと、そして深い安堵で、蓮を強く抱きしめた。
「蓮…ありがとう」
蓮は、奨の腕の中で、静かに微笑んだ。
未来では、奨の愛に固執してしまった自分。
だが、この世界では、奨の愛と、グループの夢と、両方を選んだ。
それは、蓮が、未来の自分を超えた瞬間だった。
蓮が下した決断は、未来を変える大きな一歩となった。
二人の間にあった溝は完全に消え、以前よりもさらに深い絆で結ばれた。
二人の愛は、もう誰にも言えない秘密ではない。
それは、他のメンバーの目に「特別な信頼」として映るようになった。
奨が悩みを抱えれば、蓮は一番に気づき、静かに隣に寄り添う。
蓮がパフォーマンスに行き詰まれば、奨は優しく声をかけ、二人だけで夜遅くまで練習に付き合った。
二人の関係は、グループのパフォーマンスにも良い影響をもたらした。
リーダーとして皆をまとめる奨と、パフォーマンスリーダーとして皆を引っ張っていく蓮。
二人のアイコンタクトは、以前よりも強く、深い意味を持つようになった。
それは、ファンにも伝わった。
「奨くんと蓮くん、最近一段と仲が良いよね!」
「二人の絆が、パフォーマンスの迫力を増してる気がする」
二人は、未来の悲劇を回避するために行動し続けた。
スカウトマンが仕掛けた不和の種は、二人の絆と、メンバーの信頼によって、摘み取られた。
蓮の才能は、奨とメンバー全員に支えられ、誰にも真似できない、JO1の最高の武器へと変わっていった。