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私はバルコニーに立ち、空を見上げていた。
空から、しんしんと雪が降ってくる。
と、リエルが後ろからショールを掛けてくれた。
「お嬢様。外におられてはお身体に悪いですよ。中に入りましょう」
「ええ。ありがとう」
私はリエルに微笑む。
いえいえ、と彼女はかぶりを振り、私の肩を抱え、中に連れて行ってくれた。
私は火がパチパチと燃える暖炉の前の椅子に座りながら、毛布を取りに行ってくれているリエルに問いかける。
「ねえリエル」
「はい、何でしょう?」
彼女はその細い腕に毛布を抱えながら小首を傾げた。
「男性へのプレゼントって何がいいのかしら」
そう、もうすぐ彼の誕生日なのである。
今年も思いつかず、リエルに聞いてしまった。
すると彼女は、少し微笑みながら言う。
「その方は冬生まれの方なのでしょう?それなら、マフラーや手袋はいかがですか?」
ああなるほど。確かに。
私は編み物ができるし、それはいい案だ。
「ありがとうリエル。ごめんなさい、今年も聞いてしまって」
すると彼女は、かぶりを振り、私に毛布を掛けてくれながら言う。
「いえいえ。恋というものは、素敵ですね」
その言葉に、私は赤面した。
そして、私は彼女に微笑む。
「そうね」
だって、こんなにも悩ませてくれるんだもの。
彼のことで悩めるなんて、こんなに幸せなことはない。
ああそういえば、と私は彼女に話しかけた。
「リエルはどうなの?」
「え……」
すると彼女は固まった。
と思えば、かあっと顔を赤らめる。
そのかんばせの、なんてかわいらしいことだろう。もともと美人なリエルは、より魅力的になる。
いつも私を支えてくれているリエルだが、こうして見ると、ひとりの女の子だと思い知らされる。
「いや、あの…、その……」
しどろもどろに言う彼女に、私は笑いながら言った。
「いるのね?」
想い人が、と私は付け足す。
「は……い」
彼女は顔を赤く染めたまま頷いた。
やっぱり。
私は彼女に微笑む。
「どなたなの?」
「え…と……、あの…それは……」
どこか気まずそうに言う彼女に、私は申し訳ない気持ちになった。
「ごめんなさい。配慮のない質問をしたわね」
「いえいえっ、大丈夫です」
首を振る彼女に、私は眉尻を下げて笑う。
それから数秒沈黙が流れたが、彼女が口を開いた。
「その…、どなたとは申しませんが、栗色の髪に、新緑の色の瞳をされた方です」
その言葉に、私は少し考える。
茶髪に翠眼の男性?
そんな人いたっけ……?
……ああ、そういうことか。なるほど、確かにいた。
すぐ近くに。
私はひとりでに頷く。
「そう、そういうことね」
彼女はこくこくと頷いた。
私は彼女の手を包み込む。
「ねえ、リエル」
「は、い」
私は彼女の琥珀色の瞳を覗き込んだ。
まるで紅茶を注ぎ込んだかのように澄んだ、大きな瞳。
私はにっこり笑う。
「これからも辛いことがあるでしょうけど、お互い頑張りましょうね」
すると彼女は、驚いたように目を見張った。
そしてその白い頬を薄桃に染め、微笑んで頷く。
「はい。ありがとうございます」
その声に、私は笑みを深めた。