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「アスタさん自らが竜王の里に…… 兎に角それが必要なんですね! どうぞ、気を付けて行って来てくださいね」
『何を言っているのだレイブよ、我はお前等スリーマンセルに憑依しているのだぞ? お前達に連れて行って貰うしか他に手段があるまいが! 心配せずとも危険は無かろう、大丈夫大丈夫っ! ひとつ頼りにしているぞクハハハ!』
「……でしょうね、まあ途中から判ってはいたんだけどさっ、危なく無いなら別に良いけど」
『あー危なくない危なくない、それにお前だったら竜たちの肥大化した鱗を削ってやったり出来るだろうし、いざとなればゼムガレのナイフを使う事が出来るからな! オールオッケイ、ドントマインドだぞっ!』
「ふーん」
「ダーリンどこか行くの? だったらラマスも一緒に行くよ♪」
「おっそうするか? 思えば遠出とか無かったからな、良いかも知れないな♪」
『ば、馬鹿を言うなっ! そんな危険な場所にラマスを連れて行くなどレイブっ! お前正気なのかっ! 絶対にいかんぞっ! 全くっ!』
えー危なく無いんじゃないのかよ? レイブの横目の視線は多分に非難の色を浮かべている。
その視線を無視したままで、アスタロトはラマスの側に歩み寄ると、両肩に手を置いて顔を覗きこむ様にしながら静かな声音で言う。
『良いから今回に限ってお前は留守番をしているんだ、悪い事は言わん、レイブ達が帰って来るのを大人しく待っていなさい、良いな?』
こう言う時、ラマスが素直に他人の意見を聞くことは基本的に無い。
言い負かされてしまえば良い、ケラケラケラ! そんな風に思っていたレイブの期待は淡くも裏切られてしまったのである。
「…………判ったよダーリンの神様、アスタさん、ラマス大人しく待っている事にするよ、心配してくれてありがとね♪」
「なぬっ?」
『良い子だ』
「てへへ♪」
いつに無く素直なラマスは待機する事に決まり、レイブは否応無しにハタンガを越えて旅立つ事に決まってしまい、ペトラとギレスラに至っては意見を聞いてさえ貰えなかった。
無表情で固まり生ける屍の様になっているスリーマンセルを放置したままでアスタロトはメルルメノクに最終確認だ。
『んで、若い竜どものリーダー、ニューカマーの特徴は? 名は何と言うのだ?』
メルルメノクは苦々しい表情を浮かべて答える。
『はい彼奴の名はアペプ、漆黒の鱗にその身を包んだヘイロン、黒竜でございます』
黒竜。
古来よりアジアでは北方の守護霊獣、玄武と同一視される事もあり、日本の龍蛇信仰にも繋がる海を守る存在とされている。
一方、光を忌み嫌い深海に住み暮らす様子から、闇の竜、邪竜とされることも多い。
光と闇、ニンゲンが想起する最たるものが昼と夜、若しくは太陽と月では無いだろうか?
文字通り陽の気を象徴する太陽に、時に人の気を惑わし様々な異形が跋扈する舞台となる月夜。
世界中の神話でも対抗する価値観の代表となっている事は言うまでも無い。
ところがこのヘイロン、半端じゃあない。
陽光は勿論、穏やかな月光であっても忌み嫌ってしまうのである。
月? それって太陽光の反射じゃん、やだよ!
そう言わんばかりなのだ。
結果、前述の龍蛇様も月明かりを避けて新月の夜だけに姿を表す事になる。
更に件の黒竜、固有名詞をアペプと言うそうじゃないか。
有名な所でアペプは古代エジプトの悪神、闇の竜と同じ名前である。
こちらの伝説でもこいつは太陽の光をメチャクチャ嫌い捲っている。
太陽の化身ラー、まあクロシロチロが合体した大口の真神なんだが、事ある毎に難癖つけたり、ラーに頼まれてこっそり太陽を守っていたセト、こっちはカルラの事なのだが、死闘を繰り広げたりしている。
時代が下ってからも諦める事無く、太陽神アヴァドンと月の女神アルテミスの双子に喧嘩を売ったりなんかもする、筋金入りの光嫌い、格好つけて言えば、闇の盟主、的な属性持ちなのだ。
竜王の里の竜達を無謀な戦いへと誘引する黒竜、アペプとは一体どのような存在なのだろうか?
深海に暮らす玄武、なにやら思い当たる気もするがここは旅立つレイブと共に観察してみる事としよう。