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なぜ今彼女のことなんかをと思うと、
「そんな風にはって、どういうことなんですか? 彼女と、昨日は何を……」
つい、そう訊き返していた。
「……知りたいですか?」
と、唇の端が吊り上げられるのを目の当たりにして、
またしても、彼の術中に嵌ったことを悟ると、「知りたくなんて……」と、唇をギュッと引き結んだ。
「彼女と何があったのか、話してあげましょうか?」
罠に嵌めても尚、微かな笑いを浮かべる顔が、狡猾として憎たらしくも映る。
「……別に、聞きたくもないですから…そんな話なんて……」
もうこれ以上、この男の言葉になど惑わされたくはなかった。
「……本当に、聞きたくはないのですか? ……では例えば……夕べ、私が彼女を抱いたと言ったら……?」
わざと気持ちを煽るような言い方をされて、
「……抱いたって、どうして……?」
振り回されたくはないと思うそばから彼に問い返して、反応せずにいられなくなる私に、
「……どうしてとは?」
落ちた罠からは、みすみす逃がさないとばかりに、すかさず追い討ちがかけられた──。