※まじで長いです。
佐藤怜奈 32歳 社長秘書
勤務歴9年
それが今日私に渡された人格。
部屋に戻り急いで指定された服に着替える。
白シャツにタイトな紺のミニスカート。
似せたメイクをして、メガネをかける。同じく紺のジャケットを羽織り偽造した従業員用の札を首にかけた。
全て地下室にあった物達だ。山のような偽造した服や小道具の中から引っ張り出してきたらしい。
札には”佐藤怜奈” 横に社長秘書と書かれていた。
下に降りると突入部隊は私以外全員揃っていた。
車に乗り込み、扉から1番近い位置にある席に腰を下ろす。
先に着替えを終えていた佐久間さんが後ろから身を乗り出してきた。
佐久間)〇〇ちゃんめっちゃ早かったね。もうちょっとかかると思ってたのに。
〇〇)結構簡単でしたよ?スカートはいてシャツ着るだけだったし。
佐久間)ていうか〇〇ちゃんのスカート短くない?
〇〇)ですよねー…
岩本)言い忘れてたけど社長、秘書と体の関係持ってたんだって。
運転席に座っていた岩本さんが口を開く。岩本さんはスーツにめがねをかけてカツラを被っていてどこからどう見てもただのサラリーマンだった。
〇〇)え…、お金目当てに付き合ってたって感じなんですかね。
岩本)だろうね。この2人親子ぐらい歳離れてるし。
それから30秒ほどして他の4人も着替えて車に乗り込んできた。
みんな化粧や特殊メイクをした人もいたらしく、めちゃくちゃ太った中年のおじさんと化した向井さんが乗り込んできた時は本当に誰かわからなくて驚いた。
他のみんなはそんな向井さんをみ見てめちゃくちゃ大笑いしていた。
岩本)今、ラウール達から新しい情報が入った。敵が社長を狙って行動を開始したそうだ。すぐに出発しよう。
車を飛ばしながら岩本さんが早口で話す。
岩本)今日の目標は社長を殺害すること、そして敵のチームを全滅させることだ。わかったな。
すの)はーい、
10分ほど経つと急ブレーキがかかり一際高く聳え立つビルの裏口に車が停められた。
岩本)車の中でこのビルの間取りは全部目に通したはずだ。
護衛部隊は表から回れ。突入部隊は裏口からだ。
すの)了解
岩本)では、幸運を祈る。
その合図でみんな車から一斉に飛び出し、各自の方向へ歩いていく。
私も岩本さんが作った偽装のカードキーで裏口の扉を開け慎重に建物内へ忍び込んだ。
その後に渡辺さんと岩本さんも続く。
階段を登るとすぐに扉が現れそっと開けるとエレベーターの前の扉だった。
どうやら清掃員用の扉だったようだ。
幸いなことに誰もいないようだ。
他の2人にアイコンタクトをし、さりげなく3人でエレベーターの前に並ぶ。
??)あ、佐藤さん!
不意に誰かに呼ばれ、心臓が跳ね上がる。
素早く振り向くと20代後半位の若い女性社員が大きめの紙袋を抱えてこちらへ走ってくる。
首にかけられた札を見ると”堀川”と書かれていた。
堀川)ちょうど良かった!社長に明日の会議14時からになったって知らせといて欲しいです。
あと、この紙袋営業の川井さんに持って行って欲しくて、
そう言われて大きめの紙袋をドサっと押し付けられた。
堀川)一個下のフロアなんで、すぐできると思います。中、プレゼン用の模型なので慎重に扱ってください。
ピンポーン
ちょうど良いところでエレベーターが来た。
〇〇)じゃあ、私もう行きますので。お疲れ様です。
口から自分の声とは似ても似つかない声が飛び出す。
さっきつけた声帯機のおかげだ。
堀川)はい、お疲れ様です!
堀川はニコリと笑って頭を下げた。どうやら気づかれていないようだ。
エレベーターが閉まった瞬間、私はふぅ、と息を吐き出した。
後ろを振り向き渡辺さんと岩本さんにアイコンタクトを取る。
手元には大きい紙袋。堀川によると営業の川井さんとやらに渡さなくてはいけないらしい。
まあしなくて良いだろう。すぐにここから出ていくのだし。
肝心なのは本物の佐藤怜奈を見つけてどこかへ隠さなくてはいけないということだ。
多分秘書室とやらにいるだろう。
エレベーターが28階で止まり、何人かの社員が乗り込んできた。
その中の背の低い青年が佐久間さんだと気づきアイコンタクトを取る。
どうやら後ろの2人も気づいたようだ。
佐久間さんが後ろ手に小さい紙を渡してきた。
そこには「阿部ちゃんたちが敵組織をちょっとずつやっていってる。敵組織は青いネクタイをつけて変装しているらしい。俺は今から一緒に最上階まで上がる」と書かれていた。
佐久間さんと一緒なら心強い。
社長室がある最上階の41階に着く頃にはエレベーターに乗っているのは4人だけになっていた。
ピンポーンと音がして扉が開く。
41階のフロアは他のフロアと打って変わって天井が高く壁も床も大理石でできている。
私たちは慎重にフロアに降り立つ。小声で岩本さんが話しかけてきた。
岩本)とりあえず〇〇は秘書室に入って本物の秘書を黙らせてくれ。その間に俺たちは社長室を探っておく。
佐久間)俺このフロアに来る奴らを防いどくー、
岩本)肝心なことはトランシーバーで連絡してくれ。
〇〇)了解。
渡辺さんは相変わらず黙って私を睨みつけている。
3人に背を向けて私は地図通り秘書室に向かった。
秘書室はすぐに見つかった。大きな扉の横に「秘書 佐藤玲奈」と記してある。
私は小型のスタンガンを握りしめて勢いよく扉を押した。
部屋の中には私とそっくりなメガネをかけ、紺のジャケットを羽織った女性が書類の整理をしているところだった。
彼女はサッと振り返ると大きく目を見開き悲鳴を上げた。
私は素早く彼女を部屋の端へ追い詰め彼女の腕にスタンガンを押し付けた。
短い悲鳴が上がり佐藤が崩れ落ちる。
私は彼女の手と口をガムテープで抑え、ひとまずロッカーの中へ隠した。
岩本)上手くいったか?
外に出ると岩本さんが息を切らしながら立っていた。
翔太が先に社長室へ行ってる。俺たちも行こう。佐久間によると敵がもうだいぶ上がってきてるらしい。
私達は早足で社長室へと向かう。
渡辺)おい、照!こっちだ、!
渡辺さんが大きな扉の前で私たちを呼んでいた。
渡辺)社長は今1人だ。お前は社長の部屋に入って書類の整理をするとでも言ってくれ。そこからは任せる。
〇〇)わかりました。
岩本)幸運を祈る。
社長室に入る前にふぅと息を吐く。さぁ行くぞ。
コンコンっとノックをすると「入れ」と応答があった。
ガチャッ
〇〇)失礼します、社長。
社長)あぁ、君か。
社長は目を通していた書類から顔を上げた。
社長の名前は平林良成。58歳。この大規模な平林グループの4代目である。
見た目はハゲでデブのおじさんといったところだろうか。
社長室はガラス張りで夜の街の煌めきが美しい。
〇〇)堀川さんが明日の会議14時からになったとのことです。
平林)あぁ、わかった。
平林は言葉少なに答えて再び資料に目を通し始めた。
〇〇)書類、整理いたしますね。
平林に背を向け棚の書類を整理するフリをする。
ポケットに入ったナイフも準備万端だ。
平林)佐藤くん、
コツ、コツ…と社長が近づいてくるのがわかった。
平林)この後一緒に食事でもどうかね?
そう言われ、手をぎゅっと握られる。
手はでっぷりしていて少し汗をかいていた。気持ち悪い。
〇〇)まぁ、ご冗談を。
私は振り向いてニコッと社長に笑いかける。
平林)冗談じゃない…、私は本当に君のことが…、
そう言って私のメガネを外そうとしてきた。
私はその手を思いっきり跳ね除ける。
ガシャンッ
メガネが床に落ちて砕ける音がした。
平林)さ、佐藤くんっ…!?
平林の首を掴み、私は頬を吊り上げた。
“ばーか”
グシャッ
あたりに飛び散った血を眺めながら、私は社長を床に放り投げた。
岩本)成功したか?
岩本さんが扉を開けて慌てたように入ってくる。
〇〇)えぇ、なんとか。
岩本)さあ、急いで引き上げよう。異変に気づいた敵組織と社員がこのフロアに押し寄せてる。目黒たちもこっちに向かってるみたい。
私は急いでナイフをしまい、手袋を外してその場を後にした。
死体はすぐに見つかるだろう。
そして、大企業の社長が殺されたとして大きなニュースになるのだ。
でも犯人はわからないだろう。
大抵の防犯カメラは宮舘さんたちが止めているし指紋もつかないようにしてある。
ラウール》もしもし、こちらラウール。〇〇ちゃん聞こえる?どうぞ、
不意にボールペン型の小型トランシーバーからラウールの声が聞こえ驚いて立ち止まる。
〇〇)こちら〇〇です。どうぞ、
ラウール》やばい、大分勘づかれちゃったみたいで車内がパニックになってる。警察も来てるみたい。どうぞ、
〇〇》OK。すぐにここから脱出する。どうぞ、
ラウール》気をつけて。以上です、
ツー、ツー、と通話が切れる。私は急いで岩本さんのあとを追った。
ラウールさんの言った通りエレベーター前は大パニックになっていた。
渡辺さん、佐久間さん、目黒さん、阿部さんが押し寄せてくる敵組織達をトランシーバーや麻酔銃で眠らせている。
よく見ると佐久間さんは右腕に怪我をしていた。服に血が滲んでいる。
カツラがとれピンク髪に戻ってしまっていた。
いつのまにか岩本さんも他の人に混じって参戦している。
私は自分がまだ紙袋を握りしねていたことに気がついた。
無我夢中になっているうちに持ってきてしまっていたようだ。
〇〇)(どうしよう、捨てて良いのかな…?でも大事なものらしいし…、)
紙袋をガサゴソ漁ると大きめの箱が出てきた。
〇〇)なんなんだろ、これ…
ところが箱を上げた瞬間、衝撃的なものが現れた。
爆弾ー
爆弾にはカメラがついている。まずい。敵に見られている。
ふと佐久間さんのメモが頭に浮かんだ。
『敵は青いネクタイをつけているー』
堀川は確かに青いネクタイをつけていた。
あいつまさか最初から全部わかってー
その瞬間爆弾がピカッと光った。
あぁ、もうだめだー
ドンッ
渡辺)逃げろ〇〇!
私の手から紙袋が奪い取られすごい威力で突き飛ばされていた。
声を出す間もなく渡辺さんが宙に吹き飛ばされていくにが見えた。
end.
やばい、前回の話から2ヶ月以上経ってしまいました…、
なかなか手が進まなかった…、ごめんなさい…、
今回4600文字ぐらいある!やばい!
阿部ちゃんにドラマかっこよかったー!
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