テラーノベル
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あらゆる「願い」が届く街に、2人の男女が車に乗ってやってきた。
白いスーツに身を包んだ2人は、いかにも怪しい。
「さてと……このあたりかな」
男が言うと、女が後部座席からケースを取り出した。 カチッ、と音がして、中から**真っ青な光を放つ一枚の「羽」**が現れる。
「一般的にお役目を果たすには銀の弾丸なんて聞くけれど、青い羽なんだな」
「ええ。古い伝承ではそうだけど、この街のモノを鎮めるには、こっちが都合いいのよ」
2人はその青い輝きを確認すると、ケースを閉じて外へ出た。
街ゆく人々が避けていく。 子供は指を差し、大人は近寄らないよう子供を隠した。
ついには通報され、警察官に呼び止められる。
「身分証を。……ふむ、偽造ではないようだが。そのケースの中身は?」
女は黙ってケースを差し出した。 警官が中を確認する。
……空っぽだった。
「空ですか。見た目以外に不審な点はないようだが、注意したまえ」
警官が立ち去ると、男はケースを開いた。 そこには、さっきと同じ青い羽が鎮座している。
「あの警官には見えなかったみたいだね」
「そりゃそうよ。あの人はもう、心に自分だけの重荷を持っているんだから。見えるはずないわ」
2人は街を練り歩き、公園のベンチでたこ焼きを食べ、お茶を飲んだ。
「……見つからないわねぇ」
女がぼやく。 男は周囲を見渡し、胸ポケットから細い巻物を取り出した。 2人はそれに火を灯す。
立ち上るは紫煙。探しもののための、特別な煙。
「ふーっ」と息を吐き出すと、煙は勢いよく右側へ飛んでいった。
「あっちだな」
煙を追った先は、街の中心街。大きな交差点だった。
「まさか、ここに来るとはな」 「あら、私は好きよ。2人の思い出の地って感じで」
男は鼻を鳴らし、煙が向かうビルの屋上へ急いだ。
「見た目が怪しいと、不便でいけない」
息を切らしてドアを開けると、そこには紫色の煙が立ち込めていた。 しかし、その中心にはもう何もなかった。
「一歩遅かったかぁ。人目を気にしてちゃ、この形(たばこ)は使いにくいな」
「そうでもないかもよ。ほら、白銀の羽」
女が床から羽を拾い、男はそれを太陽にかざした。
「……『彼女』も来ていたようね。ほら、黒い花びら」
「あいつか。……なんでこんなところに?」
「さあね? 彼女はたまに気が向くと、人助けをしたりするらしいから」
男が再び火を灯すと、煙は真っ白に変わっていた。
「もうこの街にはいないみたいだな。先を越されちまった」
「帰りましょうか」
2人は車に戻り、家路についた。
日が暮れ、夜が街を包み込む頃、羽の音が響き渡る。 その音を頼りに、街の人々は外に出ていく。 手元の明かりで夜を彷徨うが、羽の持ち主には会えない。
いつしかここが「願いの想い街」と言われるようになったのは。
見えない羽の音を、輝きを持って歩く人々の情景の様子。
今日もどこかで2人が集い、天の使いが、街を静かに見守っている。
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