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ーザシュッー
栞「!!!」
あの時の光景が目に焼き付いて離れない。
返り血を浴びる総悟さんの姿と遠くまで飛んでいく首、全てが頭から離れてくれない。
(もう上がろう)
これ以上考えたくなかったので上がる事にした。
佳代「あれ?早かったね」
栞「そ、そうかな…」
佳代「大丈夫?」
栞「平気!」
これ以上佳代達に心配を掛けてはいけないと思いつつも頭の中はぐちゃぐちゃだった。
それから私達は佳代の家で夕飯をご馳走してもらい家に帰った。
銀次「あ、言い忘れていたが明日二人は蒋済家に呼ばれている。何やら珍しい代物がどうとか」
(すっかり忘れてた!!!)
栞「わかりました…」
自室に戻り考えた。
(珍しい代物って言われてもなぁ………あ!!!)
押し入れの奥に隠しておいた通学カバンを取り出した。
中にはスマホ・財布・ノート等が入っている。
私はその中から1つを取り出した。
栞「これにしよう!」
翌朝、総悟さんと蒋済家に訪れた。
秀信様の所へと案内してもらい、中へ通された。
秀信「待っておったぞ。
それで、例の物は用意出来ておろうな」
栞「はい」
秀信「では早速見せてくれ」
栞「こちらで御座います」
そう言い渡したのは腕時計だった。
秀信「これは何だ」
栞「腕時計で御座います」
秀信「腕時計?というのはどのように使うのだ」
栞「これは腕に着ける物で現在の時刻が分かるのです 」
秀信「時刻なら城の鐘で分かる」
栞「それでは一刻に1回誰かが鳴らさないといけません。しかし、この腕時計さえあれば鳴らさなくてもすぐ近くで現在の時刻が知れます」
秀信「ほぅ、そりゃ便利だ。しかし、ここに書かれてある文字は何だ?何て読むのだ」
栞「これは数を表しています 」
この時代にはまだ漢数字しか無いのだ。 今の数字が日本に入ってきたのは明治時代。
秀信様が分からないのも当然だ。
それから暫く時間の仕組みを教えた。
栞「・・・となるのです」
秀信「ほほぅ、誠に素晴らしいではないか」
(納得してくれて良かった)
秀信「よし、それを貰おう」
栞「有難う御座います!」
秀信「それと総悟、明日からこちらに勤めるように。
よろしくな」
総悟「はい。よろしくお願いします」
(明日から?!それは急過ぎるっていうか総悟さんもあっさりしてるし、もしかして誰にも伝えて無かったとか?)
城の門まで補佐が送ってくれた。
補佐「なぁ、アンタあんな珍しい代物何処で見つけて来たんだ?」
栞「へっ?!えっと…し、知り合いが外国の特産品物を扱う仕事をしてて貰ったんです!」
補佐「ふーん、そうか気を付けて帰れよ 」
(咄嗟の嘘だけど何とか誤魔化せて良かった〜)
朝から呼ばれて気付けば昼過ぎになっていた。
お腹も空いたし総悟さんと近くのお店に入った。
総悟「城から出る時に話してたアレ嘘だろ」
(?!?! )
栞「何でそう思うんですか」
総悟「思いっ切り焦ってたし、目が泳いでいた。
それに、家族いないんじゃ無かったのか」
(何処までも勘が鋭い、というかメンタリスト?!)
総悟「何か隠してんだろ」
栞「な、何も隠してませんよそれに総悟さんだって何で言ってくれなかったんですか?!」
総悟「あの日言おうと思ったがあんな悲惨な状態では言えんだろう」
栞「あ……すいません気を遣わせてしまって」
総悟「いや、むしろすまなかった。お前の目の前で斬ってしまって。
それに、言いたくないなら無理に聞かないし聞かれたくないことだって人それぞれだしな」
栞「いえ、あれは私でも斬っていたと思います」
(『聞かれたくない事』…違う。本当は話したい…けど話せない。気持ち悪がられたら、それでみんなが離れてしまったら )
家着くとに銀次さんが待っていた。
銀次「遅かったな。代物は渡せたか?」
栞「はい喜んで貰いました」
銀次「それは良かった。俺はこれから仕事に行くけど栞と総悟は家で休むように。俺から佳代に話しておく。 じゃあ 、行ってくる」
栞「行ってらっしゃい……」
(やっぱり話した方が良いのかな……)
ブンッブンッ
(素振りの音?)
外に出ると総悟さんが木刀で素振りしていた。
こちらに気付く様子はなくただひたすら振っている。
そこまで武道に詳しい訳では無いが誰がどう見ても綺麗な素振りだった。
暫く近くの木陰に座って眺めていると北風が吹いてきた。
栞「へくしょん!!」
総悟「栞?ここで何してんだ。
風邪引くぞ」
栞「あまりに綺麗な素振りだったので(笑)
そろそろ中に入りましょうか」
家の中に入り、温かいお茶で体を暖める。
栞「ところでなんで素振りを?」
総悟「勿論稽古だが何か悩んだりしても刀を振っている時は忘れる事ができるんだ」
栞「忘れる事が……」
総悟「それでも忘れる事ができなかったら吐き出すんだ」
栞「吐き出す?」
総悟「周りの頼れる奴に相談するって事だ。一気に吐けば楽になる、いつまでも溜めておく必要はねぇだろ?」
(確かに、今は信頼出来る人達がいる。今の私に必要な事を言ってくれている気がする
『話したいな』…)
栞「あの、実は話さないといけない事があります。聞いて…くれますか」
総悟「うん」
ずっと待ってくれていたかのように優しく返事をしてくれた。