テラーノベル
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珍しく、二人ともオフだった日の午後。目黒蓮の部屋は、静かだった。
俺、向井康二はローテーブルに昔の写真やら雑誌やらを広げて、一人で思い出話に花を咲かせている。
🧡うわ、見てやめめ! この頃の俺、髪型めっちゃ変やな! あはは!
ソファに座って本を読んでいた目黒が、ちらりと俺に視線を向ける。
🖤…ほんとだ
🧡ほんとだ、やないねん! もうちょっとなんかあるやろ!
🖤うるさい
🧡ひどっ!
口ではそう言いながら、目黒の口元がほんの少しだけ緩んでいるのを、俺は知っている。
俺がこうやって一人で騒いでいるのを、こいつはなんだかんだ、楽しそうに聞いてるんだ。
しばらくして、俺はアルバムをめくるのに夢中になって、喋るのも忘れて集中していた。
デビュー前の、まだがむしゃらだった頃の写真。
みんな若くて、必死で、キラキラしてる。
なんだか胸がきゅっとなった。
静かになった俺を不思議に思ったのか、目黒が本から顔を上げた。
そして、無言で立ち上がると、俺の隣に、どかっと腰を下ろした。
🖤…なに見てんの
🧡んー? 昔の写真
目黒は、俺が指差す写真を、黙って覗き込む。
その横顔がやけに優しくて、ドキッとした。
俺は、高鳴る心臓をごまかすように、わざと明るい声を出した。
🧡めめは…どの写真が好き?
俺がそう聞くと、目黒はしばらく黙ってアルバムを眺めていた。
そしてその長い指が、ある一枚の写真を、とん、と指した。
🖤んー?俺が好きなのは…これ
その写真に写っていたのは、駅のホームを歩く目黒の後ろ姿だった。
なんでやねん笑
🧡なんやー?自分が好きなんか?笑
俺が茶化すように言うと、目黒はふっと笑って、その写真を、どこか愛おしそうに見つめながら、言った。
🖤んーん?この写真は、康二が『貯めた貯金で、やっとカメラ買えたんや!』って、すごい興奮しながら俺に見せてきた時のやつ
🧡え…そんなことあったっけ…?
言われてみれば、そんな記憶が、うっすらと。
あの頃はもう、とにかく必死で。
🖤それで、俺が急に仕事に呼ばれて駅に向かった時、後ろからこれを盗撮された
🧡と、盗撮って言うなや!
🖤 『記念すべき一枚目は、めめにしようって決めててん』って、お前、顔真っ赤にして言ってたよ?
目黒が俺の目を、まっすぐに見て言った。
その瞳が、あまりにも優しくて。
🧡……………っ
忘れていたはずの記憶が、鮮明に蘇る。
あの時の胸の高鳴りも、恥ずかしさも、全部。
🧡…お、覚えとったん…?
🖤忘れるわけないよ
俺はもう、目黒の顔が見れなかった。
だって今、あの時と同じくらい顔が真っ赤になってるに決まってるから。
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