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―――
一瞬耳を疑った。
あの日のことは酔っていたからと仁ちゃんは言った。
でも今の仁ちゃんは…
鏡越し、真っ直ぐに俺を見てポロポロと涙を流す彼に、どうしたらいいかわからなくなる。
🤍「…っごめん」
🟡「……ッ」
咄嗟に謝ったがすぐにパッと身体を離した彼の空気が変わっているのがわかった。
🟡「……柔太朗はわるくないからっ」
🤍「……でも」
🟡「…おれが、悪いの、だから気にしないでっ」
🤍「……っ」
🟡「おれ行くねっ」
サッと涙を手で拭い行こうとする彼の腕を掴んだ。
🤍「待って」
🟡「やだ…離してっ」
🤍「お願い待って」
🟡「やだやだ、」
ブンブンと掴まれた腕を振り逃がれようとする彼の事を俺は離せないでいた。
🤍「待てって…」
🟡「…うーっ」
もう一度、今度は正面から抱き締めた。
全部を説明なんてできない。
俺にはわからない。けど彼を傷付けたんだと、それだけは確信した。
🟡「うーっ…」
🤍「……」
どうしたら…どうしたら彼を泣き止ませられるのか。
謝ってもいけない、名前を呼んでもいけない。
だとしたら…。
🟡「…んっ」
焦りからか、彼の泣き声を止めるためか、ただそうしたかったのかはわからない。
気付いたら彼に口付けていた。
🤍「………君が好き」
🟡「……」
🤍「仁ちゃんじゃない…君が好きだ」
🟡「……柔太朗」
ぽーっとこちらを見上げて動きを止めた彼に少しホッとする。
🤍「…君はやっぱり仁ちゃんじゃないんだね」
🟡「…あ」
🤍「……わかってたよ」
多分わかってた。ずっと違和感があった。
🤍「あの夜のこと、覚えてる?」
🟡「…うん」
🤍「…あの日勇ちゃんが君を迎えに来て俺の前から居なくなる時、不安だったんだ」
🟡「…なにが?」
🤍「…もう君に会えないかもって、不安になった」
🟡「……」
🤍「でもまたすぐに会えた。仁ちゃんじゃない時の君に会えて俺、嬉しかった」
🟡「仁人じゃない、俺に…?」
🤍「そう…君は仁ちゃんじゃない。多分、よくわかんないけどそうなんだよね?」
🟡「……うん」
🤍「……好きになったんだ、君を」
🟡「…柔太朗が……俺をすき?」
🤍「うん…すき」
🟡「…ほんとに?」
🤍「ほんとに」
🟡「……嘘みたい」
🤍「嘘じゃないよ」
少し笑って答えるとポカンとしたように、唇が開いている。
🤍「…もう1回キスしてい?」
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りゅず
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🟡「……」
少しピンクに染まった頬に手をやりもう一度ゆっくりと口付けた。
🤍「……っ」
🟡「んっ…」
🤍「………今度こそ教えて欲しい」
🟡「……うん」
🤍「…君が知ってること、俺の知らない君のこと」
🟡「……わかった。」
―――
あの後彼は「ちょっとまっててねっ」と言って勇ちゃんになにかを伝えに行き、急いで戻ってきてくれた。
その顔はスッキリとしていて、なにかが動き出す気配を感じさせた。
🟡「柔太朗!今日終わったらうち来れる?てか来て!」
🤍「…うん、わかったよ」
🟡「見せたいものがあるんだ」
🤍「……?」
見せたいもの、ってなんだろう?
家になにかがあるのか?
🟡「勇斗も来るから。それともう一人…」
🤍「え?」
🟡「あっ、なんでもない!とにかく来てね!」
🤍「う、うん?」
また一段と距離感の近くなった彼の言動にすっかり振り回されていた。
でもそれも悪くない気分だった。
―――
💛視点
仁人の家
―「柔太朗にほんとの事伝えたい、だから家に連れて行ってもいい?」
さっき勇斗に吉田からかかってきた電話から聞こえる声は明らかに弾んでいて、俺たちは顔を見合せた。
あー…うまくいったんだなと、すぐにわかったのは勇斗も同じようで。
それでも勇斗は俺の目を確認するように見てきたので、黙って頷いた。
―――
💛「あっ、吉田だ、もうすぐ着くって」
🩷「おー、来たか」
それから5分もしないうちに玄関の開く音が聞こえた。
バタンッ…
ガチャッ…
―リビングの扉が開かれる。
💛「おかえり」
🤍「……」
🟡「ただいま!」
二人の間で繋がれた手を見て俺はやれやれという気持ちになる。
吉田がめっちゃ嬉しそうー…
勇斗は少し離れてこちらを見守っている。
🤍「……え?は?え?」
🟡「…ふふふ」
💛「さっきぶりー柔太朗。まー…こういうことなんだよね。」
🩷「驚いた?」
🤍「…え!?」
ガバッと咄嗟に吉田を抱き締めた柔太朗が信じられないといった顔で俺を見た。
あ、そこは抱き締めるんだね、、普通手ぇ放さん?超常現象だぜ?おまえの隣にいるの。
🤍「え…もしかして仁ちゃん…?」
💛「おー、そう」
🟡「俺も一応そう!でも違うんだよ?」
🤍「いや待って、ほんと…どういうこと…」
目を丸くしてこちらを見る柔太朗の姿が少し面白くて笑いそうになるのを堪えた。
いや、そっちな?どっちかというと今この空間に居る異物はお前の腕の中のソレなんだけど…
吉田が柔太朗を上目遣いで見上げながら説明をする。
🟡「えーっと、こっちが仁人で俺も仁人なんだけどそうじゃないの。俺は仁人から生まれた仁人のスペア。だから仁人と交代して仕事に行ったり柔太朗に会いに行ったりしてました」
🤍「……仁ちゃんから、うまれた…?」
🟡「うん。だから同じ身体で同じ記憶なんだ。けど、心はちがうんだ」
🤍「心……?」
🟡「そう、心。俺は仁人からマイナスな感情とかを抜いた存在…だったの。最初は。最近、というか柔太朗の前では全然泣いちゃったりするから俺も戸惑ってるんだけど…でも仁人とは一心同体なんだよ」
🤍「……」
🟡「仁人が生きてる限り俺も生きれる。でもそっちの仁人は勇斗ので、俺は…柔太朗のなの」
🤍「……」
💛「そうなったんだ。良かったね吉田」
🩷「うん、ほんと良かったねえ。柔太朗、これから吉田のことよろしくね?」
🤍「ちょっと、待って……。情報量が多すぎて…」
🟡「……俺が好きなんでしょ…?」
🤍「…好き、だよ。けどまだ頭着いていかなくて……」
🟡「ゆっくりわかってくれたらいいよ。俺は柔と居れて仁人の代わりにたまにお仕事とか頑張れたらそれで幸せだから」
🤍「……」
ニッコリ笑って健気にそう言う吉田を柔太朗はなんとも切ない目で見つめた。
―――