テラーノベル
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すぅっ と 風が通り抜けるけれど、
それでも暑さが抜けない夏の日
中学で最後の夏休み
俺ら二人は小学生じみた事をしていた
、
…蝉が鬱陶しいほどに鳴いている
そんな公園も好きだった
翠)ひまちゃん、アイス半分こしよ
赭)ん、ありがと
少しの休憩、
コンビニまで一走りしたアイス
溶けてない保証はできないけど、
とりあえず手に取った
赭)とりま…座んね?
翠)あそこのベンチ行こっか
、
公園のベンチは、大体一つに三人座れるくらいだ
今日は普通の休日でもあるので、ベンチは親子でほとんど埋まっていた
翠)ん~…ぁ、あそこ一人座ってるけど隣にお邪魔させてもらおっか
赭)そーだな
ベンチに近づくと
段々と、一人で座ってる人の顔が鮮明になってくる
あ、制服…中学俺らと同じだ
赭)なぁ、あいつに話しかけてみよーぜ
翠)えぇ?!、でも確かに同中だね
赭)よし、行くぞ
、
淡い水色の髪に、
夏の青空を閉じ込めたような瞳
雫型のピアスが風でふわりと揺れている
一目見たら覚えていそうだけど…
俺らの学年に居た記憶はない
赭)隣いい?、ってか同中の人間なんですけど…後輩ちゃん?
瑞)…
翠)…聞こえてる?
赭)、聞こえてないことあるか?
翠)あのー…ぁこんにちわ?、
瑞)ぇ…こ、こさぁ?
赭)こさって言うん?
瑞)ぇ、あ…名前は雨乃こさめっ!
最初は無視されたかと思ったけど、
気付いてなかっただけみたいで
透き通るような 少し高めの声が
空に響いた
瑞)あのー…お二人さんは、?
赭)俺、暇なつ~
翠)すちです、
瑞)なつくんと…すち、すっち?ぁ、すっちーよろしくぅ!
莉音
33
七星そら
67
もちもちうさぎ
152
赭)…元気なやつ 笑、よろしく
翠)、すっちー…?あ、よろしくね
赭)…ところで、なんでお前一人で公園なんか居んの?
瑞)んー…家に居るの飽きてさ、近くだから暇潰しに来た!
翠)そーゆーことぉ…
赭)んー、じゃ俺らと来る?
瑞)えっ!いいのっ?
翠)そーだねぇ、森でも行く?
瑞)…、森ッ、行きたいっ!
赭)んじゃ、行きますか
…
瑞)んー!やっぱり森は涼しいねっ!
赭)こッさめ…はやすぎっ、
森…といっても、ここはほぼ山みたいな感じで
頂上には大きな木が一本植えてある
確かに森は涼しくて居心地が良い…が
夏は暑さが少し和らぐ程度、
そのかわり…冬になると とても寒い
たまに川が凍ったりする事もあるくらいには、
…そんな暑さもお構い無しで
こさめは森に到着すると、一目散に頂上へと走って行ってしまい大変だった…
木々の間を するっと、いとも簡単に 通り抜けて
気付けば、頂上の木の上に登っていた
瑞)なつくんとすっちーも早く登ってきなよ!
翠)はぁっ、なんで疲れてないのぉ…
赭)お前は猿かっ!
そーいうとこさめは、猿のポーズと声真似をして
木の上から煽ってくる
翠)んふッ…、
赭)、ふはっ…
そのくだらなさが面白くて、
なんだか本当に小学生だった頃のような…
そんな楽しさが溢れてきた
…
それからは三人、ずっと木の上に座っていた
もう夕方になってきた頃、
こさめが声を上げる
瑞)ねぇ、見てっ!
翠)うわぁ…!
赭)めっちゃ綺麗、
頂上だからこそ見れた光景
森の木々の間からは港が見えて、
ちょうど夕日が海に沈んでいく
その光景は何故か見入ってしまって、
誰も 何も言わずに
ただ、空が暗くなるまで
太陽を見届けていた
…
瑞)…そろそろ帰るっ?
赭)そーだな、
瑞)…ぅん、
あからさまに、しゅん としてしまった
そんなこさめを見て、すちが声を掛ける
翠)こさめちゃん、あの公園から家近いんでしょ?
瑞)そーだよっ?
翠)俺らもだし、方向が逆でも近いと思うから家まで送ってくよ
瑞)…いいのっ!?
目を きらきら とさせているこさめちゃん
すちは俺に、ありがとう と小さく言った
、
帰り道、
改めて思った
この一日で、こんなにも仲良くなるなんて…思ってもいなかった
赭)んなー…こさ?
瑞)なにっ?
赭)その制服同中じゃん?お前さ、何年何組?
瑞)んぇーー、
翠)なんで 「えー」 なの、笑
瑞)んー…じゃ、こーしようっ!
赭)お?
瑞)こさの事、見つけてくださいっ!
赭)…はぁ?なんだそれ、
瑞)だってー、普通に教えるだけじゃつまんないんだもーん…
翠)普通でいいよぉ、
瑞)まぁまぁ!…って、あ!
赭)ん?
瑞)家着いた!
翠)お~結構はやかったね、
普通の一軒家、
青色の屋根がポイント
公園から徒歩五分ってとこか?
赭)…ん、?
なんだ、あの…玄関横の庭にある山積みの花束
瑞)んじゃー…ばいばいっ!
赭)ん、またな
翠)またねぇ~
、
その後、俺とすちもそれぞれ家へ帰り
その日は終わった
あれから…
俺らは、こさめと一度も会えていなかった
赭)…なぁ、すち?
翠)うん…雨乃なんて、居ないって…
赭)でも…こさめは制服着てたよな、
翠)…うん、
赭)…放課後行くか?、こさめの家
翠)そーだね…行こ
…
放課後帰り道、
いつもの公園からこさめの家へと向かう
…足音が一つ足りない
そんな喪失感が、そこにはあった
翠)あ…着いたよ
ぼーっとしていた俺にそう言ったすち
また…玄関横の庭に積まれている花束が目に入った
…花が、前より萎れている
翠)んじゃ…押すね?
ぴんぽーんと、
高いチャイムが空に響いた
?)今…出ますね、
そう聞こえてから数秒後、
すぐに玄関の扉が開いた
?)こんにちは…、?ぇッ、
…出てきたのは、こさめの母親らしき人
俺たちの事を見た後、驚いたように目が見開かれた
赭)…こさめ、居ますか?
母)…ぇっとッ、
翠)ひまちゃん…ここのお家じゃないのかも、
こさめの母親らしき人が慌てている様子を見て、すちが不安を溢した
…青い屋根、絶対ここのはず
翠)ぁの…ちょっと前に公園で会って、森で遊んだりして…
赭)その時に家教えて貰ったんで、こさめに会いに来たんですけど…今、居ますか?
母)…そうだったのね、こさめと遊んでくれてありがとう
赭)同中なんで…
母)そうね、こさめもその中学校だったわ、
翠)…だった?、今は違うんですか?
母)あのね、信じられないかも知れないけど…聞いてね、
こさめは去年の冬に、
…
ゆっくりと流れる入道雲を見つめていた
時間は流れ続け、止まってくれない
…横に居るすちも、何も言わない
いや、言えない
…ただ、そこに残っていたのは
俺らの頭の中に残る記憶だけ
コメント
2件
記載はあえてしませんでしたが、今回のお話は微ホラーです。苦手だった方は本当にすみません、 色々な伏線を貼ったので読解してみて下さい 解説は見てみたい人が居たり、時間があれば載せます
ああ、もう…これは読後感がすごいですね。最初の何気ない夏の一日の楽しさが、最後の母親の言葉で全部反転する。花束が萎れていた描写、あれが伏線だったんだなって気づきました。あの夏の日が「最後」だったんだと気づかされると、公園の蝉の声や森の木漏れ日が全部切なく甦ってくる。この構成、本当に巧いです。最後の「記憶だけ」という一文が重くて、しばらく動けませんでした。