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テンペストの奥座敷にある、貸切の露天風呂。
夜風が木々を揺らし、心地よい湯気が二人を包み込んでいた。
「……信じられないな。まさか死後に、異世界の魔王に命を拾われて、親友と風呂に入っているなんてね」
夏油が肩まで湯に浸かり、月を見上げながらポツリと呟く。
隣では、五条がいつになく穏やかな表情で、湯船に浮かべた盆に乗った酒を注いでいた。
「人生、何が起きるか分からないでしょ? ……まぁ、僕も最初は驚いたけどね。リムルは、理屈じゃないんだよ」
五条が差し出した盃を、夏油は黙って受け取る。
二人の間に流れる時間は、高専時代のあの頃のように、驚くほど自然だった。
「……悟。あの時、私を殺した君に、あんな顔をさせた。……済まなかったね」
「……謝るなよ。僕の方こそ、君を一人にした。最強(僕ら)は二人で最強だったのに、僕はいつの間にか、一人で最強になっちゃってたんだ」
五条が自嘲気味に笑う。
夏油はその横顔を静かに見つめ、ゆっくりと酒を口にした。
「……今の私は、以前のような憎しみを感じないんだ。リムル殿が魂を繋ぎ直してくれたせいか、あるいは、君がまだ私を『親友』と呼んでくれたせいか……」
「傑、もういいんだよ。呪術師だとか、非術師だとか、そんな重い荷物は一度ここに置いていけよ。……これからは、リムルと一緒に『楽しいこと』だけ考えようぜ」
五条が夏油の肩に腕を回す。
夏油は少し驚いたあと、呆れたように、でも愛おしそうに笑った。
「君は相変わらずだな、悟。……だが、悪くない。……いや、最高だ」
二人の笑い声が、夜のテンペストに響く。
少し離れた場所で、その様子を隠れて見ていたリムルが、スライム姿でプルプルと揺れていた。
(……よっしゃ、大成功だな。ラファエルさん、これ録画しといて。後で二人に高値で売りつけ……じゃなくて、記念にプレゼントするから!)
『了解。マスターの「お節介」は、非常に高い効果を発揮したようです』
「お節介」と言いつつも、リムルは親友たちが取り戻した「青い春」の続きを、温かく見守るのだった。