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私はこの数日どう過ごしたのか……。
あれは夢じゃなかった。
謙太が死んでしまったのは。
予知夢だったのか……。
私は事前に謙太が死ぬ、嘘で夢だと思っていたけどもそれをわかっていたからショックで倒れることはなかった。
それに夢のときは私の不摂生で倒れたわけだから……朝活で謙太と健康的になっていたおかげだったかもしれない。
しかしそれでもショックはショックで。
ショックだったのは私だけではない。もちろんのことだが。
謙太の家族……彼の友人、職場の人たちや関係のある人々。
私の職場の人、友達たちも。
特に謙太を可愛がっていた美濃里さん……大きく泣き叫んでいた。
次姉の清乃さんも久しぶりに見たが痩せ細っていて謙太の死を聞いてさらに青ざめ泣き腫らしていた。
しかし鏡を見ている私も真っ青だ。……絶望しかなかった。
彼の死以上にショックなことがあった。
……夫婦の共同貯金がほぼ底をついていた。葬式代をどこから出すか、自分から?
最初はまだ事故とも自殺ともわからなかったし事件性もなく自殺の線が強かったと言われて義父がひっそりと家族葬でと考えたのだが彼に関わるすべての人に会わせることが不可能だと私から家族葬じゃない方が良いと伝えると家族葬よりもかなり値段が跳ね上がった。
私の通帳から出すものだと思っていたが義父から私には残りの人生があるからと白沢家から出すと言ったので私は慌てて謙太の……と思ったら謙太の預金がそこそこしかなく、慌てて光熱費や家賃を互いの給与から出して貯めていた共同通帳の金もそこを尽きていた。
履歴を見せてもらうと一年前から急激に支出が多くなり毎月何かしら補填されては支出されるの繰り返し。
そしてもう今月の光熱費払ったら貯金は無くなる。私の給与が振り込まれるまで……。
どういうこと……?
結婚してすぐ一定額互いに多めに振り込んだ。冠婚葬祭だったり旅行だったり。
あ、じゃあなんの根拠を持って謙太は有給を取って旅行しようと言ったの? あの笑顔で……。自分の預金もなかったのに。
私はめまいで倒れるかと思ったが早々に謙太の家族たちが葬儀を手配してくれた。やはり家族葬にすると。共同貯金が無いことを誰に伝えればいいのだろう。
謙太は何に使ったの?カード履歴も調べなくては……。ついでに着信履歴も。
手に持っていたと思われるスマホも粉々だったらしい、と家族で唯一謙太の遺体と対面した義父。
遺品であるカバンもぐちゃぐちゃの血みどろで中の財布はなんとか取り出せた。
ああ、どうすればいいんだろう。ここから。彼の遺骨はリビングに置いてある。
死ぬ前夜に彼とセックスをした。ちょうど良いタイミングだった。
見知らぬ彼の親戚に妊娠していないか? と聞かれたが首を横に振るとため息をつかれた。
悪気はないと思う。私も周りも希望を持っている。
ああ、昨日の行為で彼の魂は生きているのだろうか。
とは願いたいのだが死人に口なし。
聞きたいことは山ほどある。
妊娠もして欲しいが彼が生き返ることなんてない。
遺骨入れの横にある彼の財布、クレジットカード、通帳……まだ今日は日曜だから問い合わせができない。これからいろんな手続きをしなくてはいけない。
本当にこれで目眩起こして気絶して頭を打たず生きているのがすごい。
……だって死ぬに死ねないから。
ピンポーン
エントランスから呼び出し。誰かしら。
画面を見ると違った。どこかで見た女性……私のオフィスにいた……えっと……。
「鷲見です」
そうそう、あの鷲見さんだわ。私の家をなぜ知っているの?
「はい……ご用件は……」
私は不思議に思いながらも返事をした。
「謙太さんにお焼香を」
謙太のことを知ってる? 鷲見さんが?