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次の日の朝。
朝早くからお仕事だと言っていた吉田さんと、一緒に起きて自分も帰る準備をする。
「いつでも逃げてきていいよ。」
「俺たちは陽菜の味方だから。」
なんて返すのが正解か、私にはわからなくて、ただ頷くことしか出来なかった。
気付かれないように、バレないように、静かに自分の部屋を目指す。
「おい、飯。」
あぁ、やだ。聞きたくない。
急いで耳にイヤホンを突っ込んで、今日もやっぱりHOMEを聴き流す。
気付かぬうちに、自動再生になっていたのか、聴いたことのない曲が流れてきた。
逃げよう。家を出よう。
必要最低限の荷物と、学校の荷物を持って、家を出た。
「また雨降ってるし、…」
朝降ってなかったくせに、なんて心の中で毒づいて、さっき帰ってきた道をまた歩き進める。
吉田さんの部屋の前に着く頃にはもう既に全身びしょ濡れで、。それに、吉田さんはお仕事だって言っていたから、今は不在だし、。
流石に10月の雨は寒い。
「へっくし、!…寒いなぁ…。」
「ちょいちょい、何してんの?」
「ん、ぁ、…吉田さん、。」
気が付いたらいつの間にか眠ってしまっていたのか、吉田さんの声で目が覚めた。
吉田さん越しに見える空はもう真っ暗。
「へっ、くし、! 」
「もうほら、そんなところで寝ちゃうから。」
「…っ家族、…捨ててきました、…。」
「ん、そっか。じゃあ俺が拾ってあげる。」
「ふふ、ありがとうございます、。」
吉田さんはすぐにお風呂を入れてくれて、ご飯作っとくから、って先にお風呂をすすめてくれた。
あったかい湯船に浸かって母になんて言おうかと考える。
「っ、きもちわる、」
ぼーっとしすぎてついつい長湯してしまった。上がる頃にはもうすっかりのぼせていて、なんとか気合いだけで服を着て廊下に出れば、心配して様子を見に来ようとしてくれていた吉田さんと鉢合わせた。
「やっぱりのぼせた?長かったもんね。」
水分補給をさせてもらって、吐きそうならゴミ箱に吐いていいからって言って、吉田さんはお風呂に行ってしまった。
吐き気のせいか、のぼせたしんどさのせいか、ひとりにされたのが寂しくて、無性に吉田さんに甘えたくて、這うようにしてお風呂の前へ。
シャワーの音が心地よくて、早く出てこないかな、なんて待ってたら、いきなりインターホンが鳴って、心臓がどきん!と跳ねた。
びっくりと恐怖で、作業部屋の隅っこで小さくなっていれば、急いでお風呂から上がってくる音がした。
インターホン越しに少し話して、ドアの鍵を開ける音がして、余計に身構える。
「陽菜ー?陽菜ちゃーん?」
私を探す吉田さんの声にも怖くなって、静かに泣いていれば、作業部屋に人の気配を感じた。
「いた。ひーな、どうしたの?」
「…インターホン鳴ったの怖かった?」
「ん、そっかそっか。」
「俺の友だちが急に来ちゃって、。」
「舜太って言うんだけどさ、?」
「上げちゃったのね?」
「いい?会ってくれる?」
「一応陽菜のこと話してあるから。ね?」
吉田さんの背後に隠れて、そーっとそーっとついていく。