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心臓がうるさくて、顔が赤くなってる気がして、主炎の顔が見られない。顔を、上げられない。
そんな時、俺の手の上に大きな手が重なった。
驚きが隠せなくて、ビクッとしてしまって、より恥ずかしくなる。
「なぁ、津炎。最近俺の事を避けてないか?」
悲しそうな、寂しそうな主炎の声が上から聞こえてきた。
「え?!」
思いもよらない言葉が降りかかってきて、上ずった変な声が出た。
弾き出されるように主炎の顔を見れば、月光の瞳は悲哀と不安が奥の方に浮かんでいる。
「だってそうだろ?最近はまともに目も合わせちゃくれない。俺の事が嫌いか?」
その顔は、飼い主に捨てられんとする大型犬そのものだ。
「そんなわけ!……無いだろ……」
驚きと、主炎の言葉を否定しようと勢い余って、大きな声が出た。それから段々と声が小さくなってしまう。
今にも口から心臓が飛び出しそうで、羞恥心でどうにかなってしまいそうだ。
嫌い。
そんなものと真反対で、好きで、大好きで、俺の心臓がおかしくなりそうだからで。
そんな本音を全て口にできるわけも無く、俺は口を噤んでしまう。
「なら、津炎。こっちを、見てくれよ」
主炎は、悲しそうな声で、俺の手を上からギュッと掴んむ。
俺の手を包み込む、その大きな手に視線を落としたまま、俺は動けなかった。
羞恥心と、うるさすぎる鼓動が喉を塞いで、体の動きを止める。
「俺、津炎の事が好きなんだ。勿論、恋愛と言う意味で」
優しく、でもしっかりと俺の手を掴んだ主炎の手は、力強くて、頼れる。
「と言っても、自覚したのは最近なんだが…」
主炎は自嘲気味に軽く笑う。
——–両想い……?
そんな言葉が脳裏を過ぎった。
俺は、言葉を出せなかった。何を言えば良いか、よく分からなくなったから。
ただ、その代わりに俺は顔を上げて主炎の月光を閉じ込めた瞳を見つめた。