「はぁ⋯」
静かなため息が病室内に響く。今頃みんなは元気に学校から帰ってきてるんだろうな⋯と、そう考えると今ベッドにいる自分が馬鹿らしくなってきた。
シーンと静かな空間。今日は風が強いようで力強い音が室内でも聞こえてくる。窓から見える外の景色。木や低木がよく動いている。
ずっと音がないのも苦手なため、私はテレビをつけた。ニュースの声がまた、静かな病室に響く。
「○○県××市内で刃物を持った男が銀行に入り、数千万の現金を脅しとり逃走。犯人の特徴は⋯」
物騒だな。そう思っていたら
ガラガラ
誰かが病室のドアを開けた。
「優明ー!!やっほ!お見舞いに来たよ!」
果物の入った袋を持った愛菜がそこにいた。相変わらず明るくて元気を貰えた。
「見てー!優明の好きなりんご!買ってきた!」
「えー!おいしそう、ありがとう!」
私がそう感謝を伝えると、ふふーんと自慢げに笑顔で返した。
「また包丁使えるようになったらりんごの皮切ってあげる!」
愛菜は料理ができない。それが出来なけりゃ包丁も使えない。小学校の頃、不格好な形をしたにんじんやじゃがいもが入っているカレーを提供されたことがある。野菜は硬かったし、ルーも薄い思い出があった。けど、頑張ったのはよく伝わるようなカレーだった。そんな出来事を思い出していたら愛菜が寂しげに
「じゃあ、私そろそろ帰るわ!」
まだ入ってきて30分も経ってない。
「え?早くない?もっと居てもいいんだけどな〜」
「この後用事あるんだよねーー。彼氏とデートするの。」
「はあ、いいよねーリア充は!私なんか非リアなんですけど?」
「あ、あはは。大丈夫だよ!非リアは非常にリアルが充実しているって意味だよ!きっと!!」
無理やり繋げてくる愛菜に思わず笑いそうになったが、彼氏との時間を潰す訳にも行かないし、私はルンルンな愛菜を見送った。
「バイバイキーン!」
「またね笑笑」
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